1. サプライチェーンにおける在庫管理
物流コスト改善アイテムの筆頭に挙げられる在庫改善。どこの会社でも例外なく在庫管理に注力しているようです。ほっておくと、いつの間にか増えてしまうのが在庫ではないでしょうか。この在庫を適正に管理していく必要がありますが、その仕事をきちんとできる「在庫マネジャー」を育てたいものです。在庫マネジャーはサプライチェーンマネジメントの高度化に欠かせない存在と言えるでしょう。
サプライチェーンではリードタイム短縮が叫ばれます。在庫を減らし、変化に柔軟に対応できるレベルのリードタイムを目指す必要があるのです。在庫マネジャーに最もふさわしいのは物流現場を管理している人ではないでしょうか。よく財務的に在庫を金額で表現することが多いようです。在庫金額で何パーセント減らすといった目標値が設定され、その達成に向けて活動します。たしかに在庫金額での目標設定は重要です。その場合、特に高額品を減らす活動にシフトすることが多いようです。
ただし、物流現場管理の側面からは高額品だけに偏ったマネジメントはふさわしくありません。物流現場の効率を左右するのは物量だからです。高額品であろうと、価格が安いものであろうと嵩が張れば物流効率を低下させます。さらにリードタイム短縮の観点から価格は直接的に関係無いことがわかります。だからこそ、現場を常に目にしている物流現場の管理者が在庫マネジメントには適していると考えられるわけです。
在庫マネジメントの基本として定量管理が挙げられます。在庫置場を決めて、そこに置ける分だけしか在庫を保有してはならないというルールを定めます。一定量を超えたら購入を止める、一定量を切ったら発注をかけるなど、アクションポイントを明確にしておくことも基本です。このアクションポイントの基本は購入だけではなく、生産でも同様に応用されることになります。つまり在庫量を無視した勝手な生産マネジメントはご法度だということになるのです。こういったルール作りや日々のマネジメントができる在庫マネジャーは意識して育てる必要がありそうです。
2. 権限とタスク
在庫マネジャーには一定の権限を与える必要があります。そうしないと各部署が勝手な行動を取ることで在庫マネジメントができなくなる可能性があるのです。できれば在庫マネジャーは物流現場に置くとしますが、出身部署は問わないこととします。生粋の物流担当者であっても構いませんし、購買部署から異動させてもよいのです。
在庫は何かしらの活動の結果として発生します。つくりすぎれば完成品在庫が発生します。販売予測が外れれば売れ残り在庫が発生します。買いすぎれば調達品在庫が発生します。つまりできるだけ在庫の発生要因がわかる人を在庫マネジャーに充てた方がよいことがわかります。できれば要因を生じさせる部署から何人か異動させて育てるのがよいのではないでしょうか。
在庫マネジャーのタスクとして、日々の在庫コントロールを行わせます。在庫を見ながら生産指示をかけたり発注指示をかけたりします。それぞれの行為が特定の部署で行っているとすれば、その部署に対する情報提示でも構いません。たとえば生産管理部署に対して在庫過多による生産停止提案をするということが考えられます。その場合、生産管理部署は在庫マネジャーの提案を尊重しなければなりません。各部署が提案に耳を傾けずに勝手気ままな活動を行えば、在庫マネジメントができなくなるからです。在庫マネジャーを育成する狙いはあくまでも適正在庫を保つことで、サプライチェーンのリードタイムの適正化と高度化を図ることです。
そのための「特使」が在庫マネジャーなのです。一定の権限を与えないと機能しないことは目に見えています。まず第一歩として会社としての在庫のルールをつくること、そして在庫マネジャーの機能を定めて徹底することでしょう。経営層には在庫を金額だけで評価しないことを認識してもらう必要があります。あくまでも現物主義で考え、量が多い少ないで判断することが重要だからです。
3. 在庫に関する啓蒙活動
在庫マネジャーは社内で在庫に関する啓蒙活動を行っていくタスクを持ちます。できるだけ小さい在庫でサプライチェーンを運営していけるように社内の皆さんの意識を向上させていくことが求められるのです。そこで当然のことですが、在庫マネジャーは自ら在庫に関する知識を身につけなければなりません。モノの買い方や生産の仕方まで、幅広く在庫発生のメカニズムを習得します。その上で、社内の関係者に在庫についてレクチャーを行い、理解度を深めてもらうことになります。この活動は繰り返し実施していくことが求められます。
一般的に会議室の中で座学形式による在庫の勉強会を行うことが多いと思われます。これはこれで必要でしょう。レクチャーのプログラムを組み立て、それに基づいて実行していくのです。それ以外に、できれば「在庫通...