1. 物流作業の標準化とモチベーション
物流品質にしても物流効率化にしても、物流作業者に頼る部分が多いのではないでしょうか。本来であれば標準作業がきっちりと決められており、誰が行っても大きな差が出ないことが理想ですが、物流作業者のモチベーションが下がってしまうと品質不良を招くことがあります。場合によっては事故などの安全上の問題を引き起こすこともあります。ですから、物流作業者のモチベーション向上につながる活動を継続的に実施し、意欲を高めるように努めていきたいものです。
念のために前提として、物流作業について標準化をしっかりと行っておきましょう。標準化ができていないとどういうことになるかについて、認識をしておく必要があります。まず、物流品質にばらつきが出ることを知っておきましょう。標準化がされていないということは仕事の仕方は作業者に委ねられているということです。ということは品質に関する基準についても作業者個々に異なることになります。Aさんはここまで気を配らなければならないと考えても、Bさんはそれよりずっと低いレベルでよいと思っていく可能性があります。
効率化についても同様です。Aさんの仕事の手順とBさんの仕事の手順は異なります。どちらがよいかはわかりませんが、これが作業速度の差となって表れることは間違いありません。これに対してAさんはBさんより要領がよいので、Aさんを褒めるということは間違っています。作業者に作業を委ねている以上、どちらも正しいと考えるべきです。
結果的に、いつまでたっても物流生産性が向上しない可能性があります。出来高に差が出たり、品質にばらつきが出たりすると、それが一部の作業者にとっては不満となる可能性があります。自分だけどうしてこんなに働かなければならないのか、と思うこともあるでしょう。出来高に差があるのに給与が同じことに対する不満も出てくるかもしれません。これらの不満が職場のモチベーション低下につながります。品質も荒れてくるかもしれません。これらは物流作業が標準化されていなことに起因することを認識しなければなりません。
2.「褒める機会」を意識的に作る
物流標準作業を定め、それを部下の作業者に教える。そしてその通りにやらせてみて作業観察を行う。もし標準外の動きをしていたらその場で修正させる。これが定められた物流品質を生み出すための基本です。物流現場の監督者は最低限この仕事を実行する必要があります。そしてもし標準作業を100%遵守し、物流品質不良を発生させなかったとしたら、その作業者に対して「物流品質パーフェクト賞」を与えることを考えてみてはいかがでしょうか。
人は何歳になっても、どんな小さなことでも褒められればうれしいものです。褒められれば気持ちがよくなってさらに意欲が向上することでしょう。「褒める機会」を意識的に作っていくことはお勧めです。品質にこだわらず「提案」が出てくれば褒めるとよいでしょう。この提案はどのような内容でも、規模でもこだわることはありません。安全関係でも効率化関係でも。
意外と気づいていなかったちょっとした問題に気づかされることもあります。それは部下たちが「提案」というかたちで教えてくれるのです。筆者が昔勤務していた会社では「改善王」という称号が存在しました。一定の水準の改善提案を継続的に出し続けた人に与えられる称号で、これを受けると同時にバッジがもらえます。このバッジを帽子につけることで、誰が見てもその人が「改善王」であることがわかります。その人のプライドをくすぐる上手なしかけだと思いました。
海外にいたときは「今月のチャンピオン」という制度があり、その職場ですぐれた改善を行った方を褒めることを実行している物流会社がありました。これを知ったのは倉庫を見学した時に倉庫内に写真と共にチャンピオンの名前が掲示されていたからです。顧客にもわかるように掲示するという、なかなか優れたやり方をしているものだと感心した次第です。その会社の人でない筆者の印象に残ったくらいですから。次に物流作業者が成長する意欲を生み出すためのしかけについて考えてみましょう。その典型は社内資格制度です。
3. 社内資格制度を設ける
社内に教育の機会を設けることはとても重要なことです。物流の仕事は人に頼る部分がほとんどです。そのため人に対する投資を惜しむことは会社の衰退につながると考えるべきでしょう。物流系の業務にはこれといった国家検定がありません。物流の仕事でもものづくりと同様に一定のスキルが求められます。でも国家検定には至っていません。これは物流に携わる私たちのPR不足かもしれません。国家検定になればそれを取得することで一目置かれることは間違いありません。
個々の従業員の意欲向上にもつながります。しかし物流系業務で国家検定が無い以上、自分たちで考えるしかありません。そこで考えるべきは「社内資格制度」です。できれば級で評価できる形にするとよいのではないでしょうか。それは成長がわかるからで...