侵害予防調査の基本的な考え方とポイント
2016-07-21
(1)侵害予防調査を行うメリット
他社が特許権を持っていることを知らずに製品を製造販売し、事前にトラブルを防ぐことができます。技術や製品の開発の段階で侵害予防調査を行うことで、万一他社の特許権を侵害する可能性がある場合は設計変更や仕様変更を行い、他社の特許権を回避して、ものづくりができるケースもあります。
(2)侵害予防調査のデメリット
侵害予防調査は、自社で実施する技術を洩れのないように調べるため、特許出願前の先行例調査に比べ、確認する公報の量がかなり多くなります。そのため、調査の労力、時間、コストも大きくなる傾向があります。また、十分な特許調査のスキルがない場合、確認が必要な特許権を見落としてしまうことがあります。
(1)どのような技術について調査をするか?
侵害予防調査を行う際には、原則として自社製品に特徴的な機能や構成を全てピックアップし、それぞれの特徴的な機能を持つ物の発明の特許を調べます。生産を行う場合は、製造方法についても特許を調べます。自社製品の特徴的な機能や構成、製造方法を確認したら、その特徴、構成、製造方法をもとに検索式を作成し、特許検索を行います。
(2)侵害予防調査の対象で確認する他社の公報は?
・調査対象の期間
原則として、過去20年間に特許出願された発明について調査を行います。特許権の権利の存続期間が、出願から20年だからです。ただし医薬品などの場合は、特許の存続期間が最長で5年延長される場合があります。
・調査対象の公報
特許公報(登録公報)と、今後特許として登録される可能性のある発明が記載された公開公報を調査します。発明を出願すると、出願から一年半後に発明が公開され、審査請求があった場合に審査が行われ、特許として登録された後に特許公報が発行されます。特許出願後に審査請求が行われなかった場合(みなし取下)や審査で拒絶が確定した発明などは、特許として登録されません。そのため、侵害予防調査では拒絶や出願の取下が確定していない公開公報を確認します。
・公報に書かれているどのような技術を確認するか
特許の権利範囲は、「請求の範囲」(請求項)に記載されています。そのため、自社の技術と請求の範囲に記載されている技術を比較し、自社の技術が特許請求の範囲に含まれるかを検討します。
(3)もしも自社製品が他社の特許侵害をするおそれがあったら
侵害予防調査で他社の特許を侵害するおそれが確認された場合は、次の方法が考えられます。
・自社が研究開発や製品開発の段階の場合は、仕様変更などで特許の侵害を回避する方法を検討する。
・製品の製造販売が既に確定している、技術的な理由で仕様変更等による侵害の回避が困難で、製造販売
の中止や撤退をしたくない場合、問題となる特許の無効化を検討する。
...・権利者からライセンスを受けて製造販売する。
・製造販売の中止。
侵害予防調査を面倒だと感じる方もいらっしゃると思いますが、他社の特許を侵害してしまうリスクを事前に回避できれば、特許侵害をした際の対応や費用を心配せずに、安心して事業を行うことができます。侵害予防調査と特許出願前の先行例調査を組み合わせて行った場合、先行例が確認されない場合は特許出願をする、先行例があって侵害する可能性がない場合(例えば、権利が消滅した特許が確認された場合など)は特許を出願せずに製品の製造・販売を行う、などの対応ができます。
侵害予防調査は、調査の時間、コスト、労力を使って自社が他社の特許侵害を予防するための保険のようなものですので、安全な経営を目指している事業者さんにはおすすめしています。