ISOは組織に改善の機会を与える(その2)
2016-08-04
パフォーマンス即ちプロセス運用の結果重視により、文書化の軽減(手順書の要求削減等)が図られました。文書化の程度は、規格が求める計画、運用、実施、及びパフォーマンス評価に必要な文書化が求められ、これらは、組織の規模、複雑さ、力量などにより決められれば良いでしょう。
適切な文書管理は、無駄な文書類の削減につながります。管理責任者の任命がなくなり、トップマネジメントへの報告する役割、責任及び権限を明確にした運用になりました。従って、管理責任者を任命し、管理責任者に責任が集中し、運用・維持及び管理までもが管理責任者によって実施されているような錯覚を及ぼす状態は避けられることが重要です。
ISOの運用は、全ての人々の参画が重要です。規格の改訂の意図は、システムの構築や文書化に捉われず、システムの運用の結果を重視する点、即ち、パフォーマンス重視が明確となった、但し、パフォーマンス重視といっても、結果良しではなく、組織の状況の理解やリスク及び機会への取り組みなど、達成すべき目標を明確にするなど、プロセスアプローチの採用により達成させることが重要と言えます。
今回の改訂規格は、組織の事業プロセスとの統合が明確に要求事項に記述されるなど、組織の事業に整合した活用が非常に重要なポイントと言えます。
組織の状況の理解により、外部及び内部の課題、並びに利害関係者のニーズ及び期待への理解などは、事業活動の原点であり、それらから望ましくない影響(リスク)の把握と望ましい影響(機会)を得る活動から、目標設定、達成活動、運用、監視・測定、分析・評価によりパフォーマンスを評価することから改善につなげて行くシステムの運用は、非常にPDCAのサイクルと合致すると共に、組織の事業プロセスにも合致して運用できるシステムとなっています。
ISOシステムを構築するに当たり、一般的には、ISO規格要求事項について、どのように対応し実施すればよいかと考えておられる企業も多いようです。この考え方でシステムを構築されますと、ISOのためのシステム即ち、事業プロセスとISOプロセスのダブルスタンダードになる可能性を持っています。では、規格をどのように読むのか、又、捉えるのかは、次のように考えて下さい。
8-1 ISO規格は事業活動を行う“ツール”である。
ツール即ち、道具ですから使わないと勿体ないですし、使わないと錆びつきます。ISOは作るのでもやるものでもなく、“ツール”として使うものです。
8-2 ISOをどうやって使うか
規格の読み方ですが、規格の要求事項をどのようにしようと考えず、まずは、我が社は、私たちはどのようにやっているのかを確認してください。この確認が重要です、規格が要求している事項に合致しているかどうかを十分に確認し、合致しておれば、それがISOの求めるプロセスであり、手順です。しかし、合致していないと気付かれれば、何が不足なのか、不備なのかを考えることになり、この気づくことがISOを“ツール”として使えることになります。そして、考えた結果に対して、どうすればよいかを決めていくことがシステムの構築になりますし、これがリスク...
又は機会であり、改善の機会になります。
既に2015年への移行を済まされた企業、これから2015年改訂への移行を考えている企業、あるいは新規にISO品質又は環境あるいは統合システムの構築や取得を考えている企業には、この2015年版のISO規格は、事業を整合し、事業に役立ち、組織の活性化、組織力の強化など、事業活動によい機会を与えるシステムです。
ISOは使い方、構築の仕方、規格の捉え方などにより、役にも立ち、時には事業や業務の足かせにもなりうるという両面の要素をもっています。皆様方のISOが本当に事業(業務)と整合し、役に立つ運用、維持、更に継続的改善につながる運用になることを期待します。ISOを、組織に改善の機会を与えるツールとして活用して下さい。