リスクアセスメントの進め方 リスクアセスメント(その4)

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 前回はリスクアセスメントの進め方のうち「②危険源の特定」について解説しました。今回は最後のステップである「リスクの見積り/評価(1)」について解説します。
  
 「①使われ方の想定」「②危険源の特定」のステップにより、製品の危険源(ハザード)とそれにより引き起こされる可能性のある危害を想定しました。今回のステップでは、その時のリスクを定量的に見積り、許容可能(=安全)かどうかを判断します。リスクアセスメントの核心のステップです。 リスクの見積り/評価を行う前に、もう一度リスクについておさらいしておきましょう。リスクは危害の程度と発生頻度の組み合わせです。下記の右上に行くほどリスクが大きくなります。
 
                  リスクアセスメント 
   
 危害の程度が大きくても(死亡などの重大な結果)、発生頻度が極端に小さければ、社会的に許容される可能性があります。一方、危害の程度が小さくても、発生頻度が高ければ、安全だとはみなされません。したがって、製品のリスクが許容可能かどうかを判断するためには、想定した危害の程度と発生頻度を、それぞれ明確にする必要があります。上記の図で言うと、製品のリスクが何色の部分に該当するかを明確にし、そのリスクが許容可能かどうかを判断します。危害の程度と発生頻度を明確化するためには、それぞれを定量的に表す必要があります。下記でそれぞれの定量的表現方法について解説します。 
 

1.危害の程度の表現方法

 下表は危害の程度の表現例の一つです。国内では行政を含め、多くの企業が利用しています。
 
      リスクアセスメント 
 
 「①使われ方の想定」「②危険源の特定」のステップで想定される危害の大きさが、この表のどこに該当するのかを判断します。下記は前回で想定した危害発生のシナリオから、危害の程度を推定したものです。
 
      リスクアセスメント 
 
 当然、それぞれの危険源(ハザード)に対してどのような設計対応をしたかにより、危害の程度は異なってきます。同じ扇風機でも業務用と家庭用では、ファンの大きさも製品の重量も違います。自社の製品の設計内容をよく見極め、危害の程度を判断します。
 

2.発生頻度の表現方法

 下表は発生頻度の表現方法の一つです。国内では行政を含め、多くの企業が利用しています。法律や規格で決まっているわけではありませんが、行政や日科技連の研究などにより、下記表の考え方が広く使われるようになっています。 
 
   リスクアセスメント
 
 「①使われ方の想定」「②危険源の特定」のステップで想定される危害が、どの程度の頻度で発生するかを想定します。
 

◆発生頻度を検討する上で注意しなければならないこと

(1)同じ「5:頻発する」でも、製品によって発生頻度が異なることです。長い歴史があり危険性が広
   く社会に共有され、かつ有用性が高い製品などは、発生頻度が高くても社会的に許容される傾向に
   あります。一方、家電や日用品などの一般的な製品の多くは、高い発生頻度は許容されません。し
   たがって、自社の製品がこの表のどの列に該当するかは、同業他社品のリコール事例、自社の不具
   合情報などを元に決めておく必要があります。
 
(2)発生件数が「件/台(稼働台数)」ではなく「件/台・年(累積稼働台数)」であることです。市
   場で稼働している時間が長いほど、事故が発生する可能性が高くなります。稼働時間に関わらず正
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 前回はリスクアセスメントの進め方のうち「②危険源の特定」について解説しました。今回は最後のステップである「リスクの見積り/評価(1)」について解説します。
  
 「①使われ方の想定」「②危険源の特定」のステップにより、製品の危険源(ハザード)とそれにより引き起こされる可能性のある危害を想定しました。今回のステップでは、その時のリスクを定量的に見積り、許容可能(=安全)かどうかを判断します。リスクアセスメントの核心のステップです。 リスクの見積り/評価を行う前に、もう一度リスクについておさらいしておきましょう。リスクは危害の程度と発生頻度の組み合わせです。下記の右上に行くほどリスクが大きくなります。
 
                  リスクアセスメント 
   
 危害の程度が大きくても(死亡などの重大な結果)、発生頻度が極端に小さければ、社会的に許容される可能性があります。一方、危害の程度が小さくても、発生頻度が高ければ、安全だとはみなされません。したがって、製品のリスクが許容可能かどうかを判断するためには、想定した危害の程度と発生頻度を、それぞれ明確にする必要があります。上記の図で言うと、製品のリスクが何色の部分に該当するかを明確にし、そのリスクが許容可能かどうかを判断します。危害の程度と発生頻度を明確化するためには、それぞれを定量的に表す必要があります。下記でそれぞれの定量的表現方法について解説します。 
 

1.危害の程度の表現方法

 下表は危害の程度の表現例の一つです。国内では行政を含め、多くの企業が利用しています。
 
      リスクアセスメント 
 
 「①使われ方の想定」「②危険源の特定」のステップで想定される危害の大きさが、この表のどこに該当するのかを判断します。下記は前回で想定した危害発生のシナリオから、危害の程度を推定したものです。
 
      リスクアセスメント 
 
 当然、それぞれの危険源(ハザード)に対してどのような設計対応をしたかにより、危害の程度は異なってきます。同じ扇風機でも業務用と家庭用では、ファンの大きさも製品の重量も違います。自社の製品の設計内容をよく見極め、危害の程度を判断します。
 

2.発生頻度の表現方法

 下表は発生頻度の表現方法の一つです。国内では行政を含め、多くの企業が利用しています。法律や規格で決まっているわけではありませんが、行政や日科技連の研究などにより、下記表の考え方が広く使われるようになっています。 
 
   リスクアセスメント
 
 「①使われ方の想定」「②危険源の特定」のステップで想定される危害が、どの程度の頻度で発生するかを想定します。
 

◆発生頻度を検討する上で注意しなければならないこと

(1)同じ「5:頻発する」でも、製品によって発生頻度が異なることです。長い歴史があり危険性が広
   く社会に共有され、かつ有用性が高い製品などは、発生頻度が高くても社会的に許容される傾向に
   あります。一方、家電や日用品などの一般的な製品の多くは、高い発生頻度は許容されません。し
   たがって、自社の製品がこの表のどの列に該当するかは、同業他社品のリコール事例、自社の不具
   合情報などを元に決めておく必要があります。
 
(2)発生件数が「件/台(稼働台数)」ではなく「件/台・年(累積稼働台数)」であることです。市
   場で稼働している時間が長いほど、事故が発生する可能性が高くなります。稼働時間に関わらず正
   しく評価するために、1年当たりの稼働台数に換算して計算します。
 

◆下記表の製品A、Bを例に考えてみます。

          リスクアセスメント 
 
 製品A、B共に事故が1件発生したとすると、稼働台数ベースで見た場合、発生頻度は2つの製品で同じです。しかし、累積稼働台数ベースで見た場合、発生頻度は10倍違うことになります。リスクアセスメントの発生頻度は、累積稼働台数で計算します。計算は少し分かりにくいですが、製品Bよりも製品Aの方が安全性が高いということは、感覚的に理解できるのではないでしょうか。ちなみに、累積稼働台数の計算で1/2を掛けているは、累積稼働台数の計算が三角形の面積になるからです。
 
             リスクアセスメント
 
 次回は最後のステップである「リスクの見積り/評価(2)」について解説します。 
 

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この記事の著者

田口 宏之

中小製造業の製品設計の仕組み作りをお手伝いします!これからの時代、製品設計力強化が中小製造業の勝ち残る数少ない選択肢の一つです。

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