機能のモデル化 製品機能(その2)

【製品機能 連載目次】

 設計上の機能を精査するためには、機能を可視化することが求められます。発想法のTRIZでは、アイデア出しを行う前の事前準備として、機能モデルを描きます。ここでは一般的に、「システムのどの部分を改良したらよいか?」や「システムをどのようにコストダウンしたら良いか?」がメインテーマとなっているようです。しかし、機能だけでなく、属性も含めて掘り下げると本質によりたどり着きやすくなります。つまり、機能モデル作成の目的は、システム内のサブ(下位)システムやオブジェクト(構成要素)の機能を連関的に関連付けることで、真の目的や根本原因を明確化することなのです。その結果、不要なオブジェクトが存在する場合には、トリミングすることになります。図1に、基本的な機能・属性モデルを示します。オブジェクト(構成要素)は、各々に属性を有し、それらを機能でつなげることができます。
 
図1. 基本的な機能と属性のモデル
 

1. 機能と属性の意味

 
 ここで、機能は、対象物の属性(パラメータ)を変更する、あるいは、属性の変更を妨げる何かのことを意味します。属性は、形状、味、重さ、大きさ、密度、弾性、色、内部エネルギーなどの性質を表す言葉を意味します。赤色、20 kg、5℃、12.4 インチなど、具体的な表現は属性の値であり、属性そのものではありません。オブジェクトは、それ自体で存在し、他のオブジェクトと接触を持つことができ、それによって機能をもつことができるものと定義されます。例えば、飛行機、釘、鉛筆、電子、エンジン、空気、光子、情報などを言います。
 

2. 簡単なシステムの機能のモデル化

 
 例えば、エンジンの機能モデル図を描くためには、まず、機能モデル作成ツールの各要素を図2のように定義します。そして、外気、シリンダ、ピストン、添加物、オイル、クランクを各要素に割り当てて、図のように記述します。例えば「ピストンの温度がオイルを害する」や「硫黄がオイルの潤滑性を改善する」という表現に置き換え、問題の根本原因を探求することになっていきます。TRIZの一般的な活用法としては、通常、属性を記述せず、機能モデルとして、属性を省略して、簡易的に記述されます。
 
図2. 機能のモデル化
 

3. 複雑なシステムの機能のモデル化

 
 多数の構成要素からなるシステムの場合には、どうなるのでしょうか。簡単に答えると、「簡単な構成要素と同じ手順でよい」となります。一般的には、存在する構成要素を特定し、有用な機能的関係を定義し、有用な機能、有害な機能、不十分な機能、そして過剰な機能的関係を定義します。図3の事例は、プリンター部品のVEにおいて、機能のモデル化を実施した後、不要な部品のトリミングを検討し、部品点数削減まで結びつけている。部品単品ではわずかだが、量産部品のため効果金額としては大きな額となっています。
 
 まず、機能モデル図を描き、「システム中または周りにある他の何かでこの機...
能を果たせないか」「この部分は、組合せわさっているものと一体化できないか。」などと思考してみましょう。その結果、「STUD」の機能を「CHARGE」に持たせることで削減できました。右図が削減後の機能モデル図です。実務では、通常この程度の図を描くことになります。なお、明らかに重要オブジェクト(構成要素)でない部品は検討対象から外して検討を重ねます。
 
図3. プリンター部品の機能モデルとトリミング事例
 
参考文献
 粕谷茂:図解これで使えるTRIZ/USIT(日本能率協会)
 
  

◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』

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