中小企業連携を考える

 
 経営資源に乏しいものづくり中小企業・小規模事業者は、厳しい競争環境に置かれており、受注活動も思うようにいきません。こうした現状を打開するためには、ものづくり中小企業同士が互いに連携し、不足している経営資源を相互補完することで、大きな効果が期待できます。実際に企業連携を行っている企業では、既存事業の取引先の拡大、新たな製品・サービスの開発・販売などに効果があったようです。
◆関連解説『事業戦略とは』
 

1. 中小企業連携の目的

 
 いままで中小企業の連携組織は、共同受注を目的に設立されていました。ただし、共同受注を目的としただけでは、受注状況の悪化などにより連携組織の存続が難しくなってしまいます。そこでメンバー間での情報共有や人材確保新規市場の開拓などの「自己成長」を目的とすることが不可欠なのです。最終目標として、完成品開発に打って出ることによって「下請けからの脱却」を目指すことが求められます。
 

2. ものづくり中小企業の現状・課題

 
 ものづくり系の中小企業は、ユニークな加工技術を活かして面白い製品を考案している企業も多いと思います。しかしながら、それをマーケティングして売るところまでのノウハウに欠けています。また、完成品となると、様々な加工・組立技術、製品の梱包デザインなどの自社にはない工程を経て出荷しなければなりません。また、安い部品を海外から調達しなければならないこともあります。そして、最も困難なことは、販路開拓です。良い製品を作っても、売れなければ利益も得られません。国内外の展示会への出展や、ホームページの充実、国や県の支援を得るなど、一社では困難な様々なマーケティングへの取り組みを、共同で企画し実施することが必要になります。
 

3. 企業連携の方法

 
 それらの活動を行うために不足しているものを補うのが企業連携です。様々な加工業者やデザイナーなどが集まって情報を共有し、助け合い、一つの目的に向かって、最終商品の開発・販売を行って行きます。企業が連携する上で重要になるのが、企業同士がコミュニケーションをとれるネットワーク作りです。これまでものづくり系の中小企業は特定の地域に集積し、地縁や血縁をベースとした企業間ネットワークを形成してきました。しかし近年、アジア・中国への生産シフトや後継者問題から倒産が相次ぐといった状況の中で、これまでの濃密なネットワークが崩れつつあります。
 
 これまでの古いネットワークが消える一方で、新しいネットワークを形成する動きを促進することも大切であり、インターネットの活用は不可欠です。地域を基盤にしたウェットな連携だけでなく、インターネットが普及した現在、遠く離れた地域同士が連携できる環境を整えていくことが重要です。
 

4. コーディネーターの必要性

 
 企業連携を成功させるための秘訣は、プロジェクトを牽引する「コーディネーター」または「プロジェクト・マネジャー」が絶対に必要だということです。コーディネーターはどのような働きをするのかというと、例えば、製品の売り方や見せ方を知らないメーカーにデザイナーやマーケティング・プランナーを紹介してつなぐことなどです。
 
 そのために必要とされる能力は「コミュニケーシ...
ョン能力」です。上から見下ろすような感じではなく、相談者と同じ目線で話を聞き、課題を抽出することが大切なのです。そうしたコミュニケーション能力を持つ、若くて優秀な人材を育て輩出して行くことも、企業連携には必要なことです。
 
 若者が目標とするような生き方や見本といったものを、連携の中で模索し育て上げていくこと。日本のものづくり業界では、コーディネーターといった職種はあまり認知されていませんでした。そのような仕事に憧れを持つ若者が増えればものづくり企業連携の可能性は大きく膨らみ、バラ色の将来が開けてくるのではないでしょうか。
 
  

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