前回のその1に続いて解説します。
4. 実際の活用事例
スナップフィットを例に考えてみましょう。スナップフィットはプラスチック部品同士の締結用に様々な製品で使われています(図6)。
スナップフィットをよく見ると、片持ちはりに見えてこないでしょうか。図6のスナップフィットを図7のような片持ちはりだと考えてみましょう。
図7のスナップフィットは、先端の段差部分(1.25mm)を変形させることによって、相手側にはめ込まれます。したがって、1.25mm変形させた時に不具合が起きないように設計する必要があります。1.25mm変形させたときに発生する応力は、表1のはりの計算式から簡単に導くことができます。ひずみはフックの法則から計算します。
表3. スナップフィットに発生する応力
すなわち、1.41Nの荷重を与えれば、スナップフィットの先端部分が1.25mm変形することが分かります。この時に発生する応力やひずみを確認し、問題が発生しないかどうかを検討すればよいのです。
※4実際にはR部分に応力集中が生じるため、Rの大きさよっては計算式よりもかなり大きな応力が発生する。( )内は応力集中係数を1.35(理論値よりも1.35倍大きくなる)として計算した値。構造解析ソフトでシミュレーションすると図8のようになります。
1.41Nを加えると、1.36mm変形し、上側は応力集中が起きるので34.41MPa、下側は25.33MPaが発生しています。多少の誤差はあるものの、当たり付けとしては十分使えるレベルでしょう。
5. 強度設計のスピードアップと品質向上
はりの強度計算について概要を解説しました。スナップフィット以外にも、リブの形状の検討や筐体の厚みの比較など、様々な場面で活用する...
ことができます。プラスチック製品の強度設計のスピードアップと品質向上にぜひ役立て下さい。
【参考文献】
日本機械学会(編) 『機械工学便覧 基礎編 材料力学』
村上敬宜 『材料力学』 森北出版
西田正孝(著) 森北出版 『応力集中 増補版』