最終回 スクリーン印刷とは(その12)

 

【関連解説:印刷技術】

 前回のその11に続いて解説します
 

1. 「版離れ」のメカニズムの理解

 
 スクリーン印刷のメカニズムの理解において、他の印刷工法と最も異なるのは、インキの転移です。オフセット印刷や凸版印刷など一般印刷は、版の画線部のインキが基材に接触して、一瞬で離れることでインキの塗膜が切断され転移します。
 
 スクリーン印刷では、一定の厚みのあるスクリーン版の開口部に充てんされたインキの下面が基材に接触し、版が自らの反発力で上方に離れるに従い、徐々に開口部から引きはがされ、基材に転移します。インキ自体に凝集力と流動性があるため、転移率は、他の印刷よりも格段に大きい90%以上になります。このスクリーン印刷のインキ転移メカニズムは、特に「版離れ」と呼ばれ、「版離れ」を適正化することがスクリーン印刷プロセス構築の最も重要となります。
 
 長年、スクリーン印刷を経験した方でも「版離れ」とインキ挙動の把握の重要性の理解が不足し、版離れを単なる機械的な分離現象ととらえているケースが多く、非常に残念です。
 
 図5のように「版離れ」は、スキージ移動による「インキ充てん」と「インキ掻きとり」に同期し、連続して行われるものです。スクリー...
ン印刷の理解のためには、これらのメカニズムとインキの流動・変形を正しく理解することが必要になります。
 
図5.インキの「充てん・掻きとり」と「版離れ」のメカニズム 
   

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