【目次】
第1章 混沌解明とN7(新QC七つ道具)←掲載済第2章 挑戦管理とN7の選択←今回第3章 連関図法の使い方
第4章 親和図法の使い方
第5章 マトリックス・データ(MD)解析法の使い方
第6章 マトリックス図法の使い方
第7章 系統図法の使い方
第8章 アロー・ダイヤグラム法の使い方
第9章 PDPC法の使い方
第10章 PDCA-TC法の使い方
第2章 挑戦管理とN7の選択
2.3.3 挑戦計画の管理に役立つN7
挑戦計画の管理は、「基本計画の管理」と「不測事態への対応状況管理」の二本柱からなり、それぞれのポイントと、それに役立つN7の選択、並びに、選択理由は下記の通りです。
ⅰ) 基本計画の管理に役立つN7
【選択手法】アロー・ダイヤグラム法(補助手法。CPM:Critical Path Method)
【選択理由】
基本計画は、不測事態を含む挑戦的実施事項を一つのイベントとして、全体の計画をアロー・ダイヤグラムに表現していますが、不測事態への対応状況によっては、クリティカルパスが移動することがあります。この“クリティカルパスの移動の把握”は、挑戦計画管理の最重要課題であり、その点を的確に把握できるアロー・ダイヤグラム法は“余法をもって代え難い”ところです。
ただ、計画管理の上で、発生費用との関連での判断が必要な場合は、アロー・ダイヤグラム法の一環とされる“CPM法”(注2-8) が有用です。
(注2-8) CPM(Critical Path Method) は、プロジェクト費用の最適化を図る手法としてPERTより早く開発され、独立した手法として扱われていたこともあるが、まったく同じ系統の手法であり、PERT/CPMとして扱われることが多い。
ⅱ) 不測事態への対応状況管理に役立つN7
【選択手法】PDCA-TC法(PDCA Tracing Chart 法)
【選択理由】
当初、事態の進行に従って、PDPCを書き直すことによりフォローと不測事態への対応を両立させていましたが、手間がかかる上事態が進行してくるとPDPCが複雑となりフォローがやりにくかったようです。そこで、筆者の現役時代(1971年ごろ)、PDCAのサイクルを何度も回したテーマの説明用に開発した、筆者オリジナルのPDCA-TC法を活用したところ、
① 試行錯誤の経過が一目瞭然に分かるため、経験が将来に生きる
② ルール通りに経過を記入する段階で、的確な反省ができる
③ 記入時、PDPCの判断ミスやステップ漏れの摘出・修正ができる
といった効果があり、PDPC法のフォロー用として紹介したところ市民権を得て活用されています。(注2-9)手法の内容は、実施したPDCAの経歴を時系列に従って所定のシートに、チャート式にトレースして記入するもので、第10章で詳説する。(注2-9)「TQC推進のための方針管理」納谷嘉信著(日科技連出版)P.61
2.4 まとめ
以上、挑戦管理の実施ステップについて説明してきましたが、「挑戦管理」に対しても、活動の核心をサポートしてくれるN7が網羅されており、改めて手法の組み合わせの妙を再認識できます。なお、「第1章 混沌解明」において話題にした、“ステップ思考”“ウエブ思考”の件であるが、混沌解明で取り上げたN7、3つは、紛れもなく“ウエブ思考”そのものであったが、挑戦管理にふさわしいとした5つは、手法を使ってみると、ステップ思考が優位の手法のように感じられます。
これは、序論の2-4)にあげたウエブ思考の説明を読めば分かる通り、手法が目指すところは“ウエブ思考”の範疇なのですが、これら5つの手法の場合、ウエブ思考の弱点と思われる“集中的、区画的、積み上げ的な面”を、アウトプットのフォーマットで補う形になっているためそう感じるのでしょう。
ただ、事態がより終盤に近づく“挑戦管理”の段階では発生費用の金額も大きく、時には死命を制する“タイミング”が切羽詰まったものとなってくるので、ちょっとしたミスが目に見える形で大きな損失につながることを考えると、緻密な“ステップ思考”が非常に重要であり、N7の中でこのような役割分担が成立するのは、見事といわざるを得ないのです。
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最後に、本章の説明内容を整理して簡潔にまとめたのが表2-1です。
表2-1. 挑戦管理のステップとそれぞれに役立つN7
次回は、第3章 連関図法の使い方の解説です。