◆なぜ、あの企業の「顧客満足」はすごいのか
7.フラット立ち寄れる何でも相談所:エース会計事務所
(4)「人づくり」のベストプラクティス
日頃からチームプレイができる「人づくり」を目指し、「人づくり」により資産を残すことが事業継続の基本です。「人づくり」こそ企業の「実力づくり」なのです。しかし、多くの企業では「目先の金を儲ける」「金を貯める」「小銭稼ぎ」に右往左往しています。だから、「中・長期といった将来の人づくり、金づくり」には注力しない傾向にあります。人を資産として育てていないのです。
人づくりが、企業・組織・製品・サービスの付加価値を生みます。付加価値がなければ、企業の利益は発生しないのです。その点、エース会計事務所は「人づくり」企業のベストプラクティスといえるのです。普段から、人づくりをしているから、「困ったときにはエース会計事務所のあの人に」と顧客は考えるのです。
人づくりは、結果として、関係者、ステークホルダー全員を幸せにします。今風の言い方をすれば、Win‐Winの関係をもたらすことができます。たとえば、「専門外の課題」に直面した場合、「人づくり」はより効果を発揮します。エース会計事務所が抱える専門家集団は、単なる専門家ではなく、人格も仕事ぶりも顧客が安心できるレベルの専門家グループです。そして、顧客の社長、従業員について、顧客以上に知っている山田さんがいる。この最強の布陣は、短期的で小手先の戦略では構築できないものです。
さらに、グローバル時代、顧客には諸外国と関係の深い企業も多いため、それぞれの国に詳しい人物との交流、日頃からの情報交換にも力を注いでいます。これぞまさにサービスの極意であり、顧客が望む以上の結果を出す組織といえるでしょう。
8. 「おもてなしの神髄」-株式会社加賀屋
(1) 数年に一度でも、貯金をしてでも訪れたい場所
「気ばたらき」を中核として、人々に「幸せ感」をもたらす旅館、加賀屋。私は、加賀屋のことを「満足提供業」「幸せプレゼント業」と呼んでいます。あまりにも有名でご存じの方も多いと思いますが、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で35年間連続総合I位という驚嘆すべき評価を受けているのです。
「サービス」「おもてなし」「ホスピタリティ」「エチケット」「マナー」「CS」「コモンセンス」「気づき・気くばり・気づかい」「臨機応変・機転を利かす」―私の研究分野は多岐にわたっており、かなりの広範囲の知識、体験を有していると自負していますが、目に見えない、数値化しにくい心の充足のために「気ばたらき」で貢献する加賀屋の活動は、私の想像をはるかに超え、目を見張るものがあります。金額だけ見れば、決して安いとはいえないのですが、それをはるかに凌駕するほどの「価値...
」を顧客が感じているからこそ、一度訪れた人が何度も何度も足を運ぶのです。
顧客は富裕層だけではないのです。数年間、一生懸命に貯金して家族で訪問する例も多いようです。国は違えど、アメリカーオーランドにある「ウォルドーディズニー・ワールドーリゾート」にも、たとえば、3年間、家族みなで、一生懸命、貯金して、やっとの思いで訪れる人がいると聞きますが、それにも似た魅力が加賀屋にはあるのです。
次回は、(2) 「機械化」と「人的要素」との絶妙なハーモニーから解説を続けます。
【出典】 武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載