政治の統治機構 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その38)

 
  
 
 この連載では、将来の市場環境に大きく影響を与えるPESTEL(Political:政治、Economical:経済、Societal:社会、Technological:技術、Environmental:環境、Legal:法律)を解説していますが、その内のP(政治)の中の、前回解説したイーストンの定義する政治システムもう一つの部分、「入力の出力への変換システム」、つまり政治の統治機構の部分について今回は解説します。
◆関連解説『技術マネジメントとは』
 

1. 政治の統治機構

 
 日本を含め、近代国家の政治の統治機構は、基本的には、行政府、立法府、司法府の3つの要素があり、それらに加え、実際に行政サービスを国レベルで提供する中央省庁と地方レベルで地方自治体があります。
 

(1) 行政府

 
 日本の場合、内閣が行政の司令塔の役割を果たし、政治の大きな方向性の意思決定をする極めて重要な組織です。内閣は内閣総理大臣と国務大臣から構成されます。ご存知の通り、内閣総理大臣は政権を担う政党の党首がなり、国務大臣は内閣総理大臣により選ばれます。したがって、その意思決定は、当該政党や連立政党の政治的な基盤となっている様々な団体からの、大きな影響を受けます。
 
 米国の場合は、行政府の長は大統領で、トランプ大統領が示す通り、大統領は個人としても極めて大きな権力も持つものとなっています。今回の日中の貿易戦争や世界の貿易の枠組みを変えるような戦略など、米国の大統領の考え方は、将来のマクロ環境に大きな影響を与えます。また、中国の場合は、習近平が共産党総書記(最高指導者)として、大きな権力を保持しています。習近平の指導の下、一路一帯など世界の地政学に大きく影響を与えるような国家戦略が策定され、実行に移されています。
 
 この様なことから、マクロ環境分析を行う場合には、米国、中国といった世界の主要国の政治統治機構、特に行政府の活動やものの考え方が、将来のマクロ環境に大きな影響を与えますので、自国のみならずこれらの国にも目を向けなければなりません。
 

(2) 立法府

 
 立法府は議会を意味します。日本では、法律は全て、国会での審議の上、可決され成立します。日本では議案は、内閣が提出するものと、国会議員が提出するものがあります。いずれにしても、多くの場合、国会で最大の議席を確保している政党(連立政党含め)が決定権を持つことになります。
 

(3) 司法府

 
 司法府は裁判所を意味します。
 

2. 中央省庁

 
 現在日本の中央省庁は、12省、1庁あります。12省、1庁とは、内閣府、総務省、法務省、外務省、財務相、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省、復興庁です。
 
 その他、中央省庁ではありませんが、政府から独立した公的な機関として、日本銀行などがあります。
 
 現実には、多くの法律はそれぞれの専門知識、情報、そして経験を持つ各省で作られ、法律作成においては中核的な役割を担っています。またその法律の施行のための様々な施策作り、そしてその実行の活動を担うため、中央省庁の作る政策はマクロ環境を想定する上では、極めて重要な組織ということができます。
 
 したがって、マクロ環境分析を行う場合には、各省庁の作成する白書や政策については、十分読みこなし、自社にとっての機会・脅威の視点から分析を行う必要があります。また各省のウェブサイトは、過去の統計が充実している...
ので、今後のマクロ環境の動向を考える上で、大変参考になります。
 

3. 地方自治体

 
 地方自治体は、法律・政令や中央省庁の指示受け、また各管轄地域での環境・状況に応じ、それらの地域の住民、その他法人を対象として政策を策定し、また行政サービスを提供する役割を担っています。また、条例により地域毎に規則を定めることもできます。
 
 したがって、対象事業に関係のある地方自治体や東京都といった主要自治体の政策や活動についても、マクロ環境分析においては調査することが必要です。
 
 次回に続きます。
 

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