市場シェアの目標値 成熟市場における競争戦略:ランチェスター戦略(その4)
2019-02-13
1960年代に、ランチェスター戦略を提唱した田岡氏は、社会統計学者の斧田氏と一緒に、市場シェアの3大目標値(73.9%、41.7%、26.1%)を導き出しました。その後、田岡氏は3大目標値に至るまでの4つの目標値(19.3%、10.9%、6.8%、2.8%)を設定し、市場シェアの7つの目標数値として整理しました。
7つの目標数値は、市場シェアに基づく現在の競争上の位置づけの把握と、今後の中長期のシェアアップの目標を策定する際の基準値として活用できます。
73.9%のシェアを確保すれば、他の全ての競合を足しても26.1%にしかならず、約3倍差をつけて逆転が困難となるため、市場シェアの最終目標として位置づけられます。
国内全体など大きな市場においてシェア70%を超える例はさほど多くはありません。しかし、ランチェスター戦略は市場を細分化して、個別市場でNO1を目指すことを原則にしていますので、地域・商品・顧客層など細分化された市場で、70%超のシェアを獲得することは不可能なことではありません。
どうせなら市場独占の100%を目指せばいいという意見もあるでしょう。しかし、市場には自社にとって優良顧客のみが存在しているとは限りません。例えば、移動効率が悪いとか、需要額の割に制約事項が多いなど、取引コストが高い顧客もいます。そのような顧客は他社に対応してもらう方がいいでしょう。また、1社独占では市場が活性化しないという面もあります。競争があるからこそ、需要が活性化され市場が拡大します。競合はいるが、地位が脅かされるリスクがない3倍のシェア差がある73.9%こそが、成長性や収益性が最も高まる上限の目標値なのです。
次は41.7%の安定目標値です。
安定というからには過半数の50%ではないかという意見もあるかと思いますが、どのような市場であっても、通常は5社以上の競合が存在するケースがほとんどなので、40%あればまずNO1になれます。あれだけ圧倒的に強いイメージがあるセブンイレブンもシェアは約4割です。安定目標値に達すれば、2位以下は1位に消耗戦を仕掛けても逆転が難しいので棲み分けを意識するため、1位の収益性と安全性が高まります。
26.1%のシェアがあれば多くの場合、1位になります。
競合が多数乱立の市場では26.1%以下でも1位になるケースもありますが、2位とは僅差の1位の場合が多く、その場合、強者の戦略が取れません。よって、シェア1位になれば、まずは26.1%を目指します。26.1%を下限目標値と呼ぶのは、強者の最低条件だからです。 26.1%以上を確保しておけば、仮に競合他社が全て合併しても73.9%を下回ります。その差は3倍未満であり、まだ生き残りは可能です。26.1%は生き残るための、下限の数値を指します。
目標値(19.3%、10.9%、6.8%、2.8%)
以上の73.9%、41.7%、26.1%が「田岡・斧田シェア理論」と呼ぶシェアの3大目標値です。3大目標値の策定後、市場に参入してから、26.1%に到達するまでの指標となる目標数値の必要性を認識して、故田岡氏が4つの目標値を付け加えました。下図は、この連載での連番で図5になります。
図5. 市場シェアの目標値
次回に続きます。