動作経済の四原則: 距離 儲かるメーカー改善の急所101項 (その3)

更新日

投稿日

  生産マネジメント

1. モノづくり〈基本の基本〉

 

◆ 動作経済の四原則その1: 距離

 これから4回にわたって「動作経済の四原則」という動作に関する便利な原則の話をいたします。

 製造業で仕事をするということは、材料に何らかの作用を加えて付加価値を付けていくことといえるでしょう。そしてその付加価値を付ける方法として、人の手でモノを組み立てたり、あるいは設備を使ってモノを加工したり変化を起こさせたりということがあると思います。そしてこれからお話しする4回の内容は、基本的に人の手の動きでモノを組み立てたり作ったりする動作についてのお話しです。

 良い動作とはどういうことだと思いますか? ムダな動きがないので、生産性が高く、良いモノが作れて、疲れない。こんな感じではないでしょうか。そしてこの動作に関しては既にかなり多くの研究がされています。そしてその創始者ともいえる人がフランク・ギルブレス(Frank Gilbreth 1868-1924)というアメリカ人です。

 ギルブレスは人のすべての動作を「掴むG」、「放すRL」、「位置決めするP」、「探すSH」、「(次に行うことを)考えるPN」などの17の要素に分け、それをサーブリッグ(therblig 自分の名前のGilbrethを逆に書いた)という記号に置き換えてよい作業を作る方法を確立しました。

 動作経済の4原則はそれらの研究をベースにして、かなり簡略化された使いやすく効果的な原則といえるもので、私は常にこの4つで動作をチェックしています。

 【動作経済の4原則】

   1. 距離を短くする
   2. 両手を同時に使う
   3. 動作の数を減らす
   4. 楽にする

 動作経済の4原則の1番目は「距離を短くする」です。「今使うモノを近くに置く」ということです。「当たり前過ぎ!」と思う方も多いことでしょう。

 しかし、実際に現場に行ってそこで働いている人の動きを見てみましょう。モノが近くどころかナゼ!というくらい遠くに置かれていることが多いのです。入れ物が大きいので手を伸ばして取っている。置き場所が無いので床上に置かれている。いつか使うだろうモノがいつも置いてあるので、今使うモノが遠くに置かれている。共通工具なので2人の作業者の中間に置かれている。などなどちっとも近くない置き方がたくさんありませんか?

 当たり前だから、まずガッチリや...

  生産マネジメント

1. モノづくり〈基本の基本〉

 

◆ 動作経済の四原則その1: 距離

 これから4回にわたって「動作経済の四原則」という動作に関する便利な原則の話をいたします。

 製造業で仕事をするということは、材料に何らかの作用を加えて付加価値を付けていくことといえるでしょう。そしてその付加価値を付ける方法として、人の手でモノを組み立てたり、あるいは設備を使ってモノを加工したり変化を起こさせたりということがあると思います。そしてこれからお話しする4回の内容は、基本的に人の手の動きでモノを組み立てたり作ったりする動作についてのお話しです。

 良い動作とはどういうことだと思いますか? ムダな動きがないので、生産性が高く、良いモノが作れて、疲れない。こんな感じではないでしょうか。そしてこの動作に関しては既にかなり多くの研究がされています。そしてその創始者ともいえる人がフランク・ギルブレス(Frank Gilbreth 1868-1924)というアメリカ人です。

 ギルブレスは人のすべての動作を「掴むG」、「放すRL」、「位置決めするP」、「探すSH」、「(次に行うことを)考えるPN」などの17の要素に分け、それをサーブリッグ(therblig 自分の名前のGilbrethを逆に書いた)という記号に置き換えてよい作業を作る方法を確立しました。

 動作経済の4原則はそれらの研究をベースにして、かなり簡略化された使いやすく効果的な原則といえるもので、私は常にこの4つで動作をチェックしています。

 【動作経済の4原則】

   1. 距離を短くする
   2. 両手を同時に使う
   3. 動作の数を減らす
   4. 楽にする

 動作経済の4原則の1番目は「距離を短くする」です。「今使うモノを近くに置く」ということです。「当たり前過ぎ!」と思う方も多いことでしょう。

 しかし、実際に現場に行ってそこで働いている人の動きを見てみましょう。モノが近くどころかナゼ!というくらい遠くに置かれていることが多いのです。入れ物が大きいので手を伸ばして取っている。置き場所が無いので床上に置かれている。いつか使うだろうモノがいつも置いてあるので、今使うモノが遠くに置かれている。共通工具なので2人の作業者の中間に置かれている。などなどちっとも近くない置き方がたくさんありませんか?

 当たり前だから、まずガッチリやりましょう。運搬では付加価値は付きません。

 『儲かるメーカー改善の急所<101項>』として下記のように出版しました。本連載はこれらの概要を紹介していきます。次回に続きます。

 
 
 
 

 今回の言葉

*********
  距離を短くする。
*********

「儲かるメーカー改善の急所<101項> 」
日本経営合理化協会出版局 柿内 幸夫

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

柿内 幸夫

現場で全員で『知のすり合わせ』を実行して経営改革

現場で全員で『知のすり合わせ』を実行して経営改革


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
賢い在庫の持ち方 儲かるメーカー改善の急所101項(その73)

  6、強いモノづくり ◆ お寿司屋さんに学ぶ改善のヒント  お寿司(すし)屋さんでは、板前さんが注文通りに握り寿司やお造りを出してく...

  6、強いモノづくり ◆ お寿司屋さんに学ぶ改善のヒント  お寿司(すし)屋さんでは、板前さんが注文通りに握り寿司やお造りを出してく...


請負費用の工場間比較

 同じような製品を作り、同じような作業を請負させている工場が複数 ある場合(セメント、紙業、建設資材などの複数工場持つ専業メーカー が該当すると思いま...

 同じような製品を作り、同じような作業を請負させている工場が複数 ある場合(セメント、紙業、建設資材などの複数工場持つ専業メーカー が該当すると思いま...


改善は全員で:改善のヒント(その9)

【改善のヒント連載目次】 1. 儲かる現場づくりとは 2. チームとして改善を進める 3. 現場から人を抜く 4. からくり改善とは 5...

【改善のヒント連載目次】 1. 儲かる現場づくりとは 2. チームとして改善を進める 3. 現場から人を抜く 4. からくり改善とは 5...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
システムトラブル、誰に相談したら良いか

 最近は、以下のように情報システム開発にかかわるトラブルに悩まされる企業が急増しています。ところが、トラブルが起きた時に誰に相談したらいいかわからなくて困...

 最近は、以下のように情報システム開発にかかわるトラブルに悩まされる企業が急増しています。ところが、トラブルが起きた時に誰に相談したらいいかわからなくて困...


赴任者のために 中国工場管理の基本事例(その9)

  1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その7)  前回の赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その6)に続いて解...

  1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その7)  前回の赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その6)に続いて解...


金型設計、3次元CADの種類と選択

  1. 金型設計で使われている3次元CADの種類  今回は、金型の意匠面モデリングだけでなく構造部の設計に用いる3次元CADを対象として、その種類と...

  1. 金型設計で使われている3次元CADの種類  今回は、金型の意匠面モデリングだけでなく構造部の設計に用いる3次元CADを対象として、その種類と...