【見えてきた、2030年の技術社会 連載目次】
◆ 自動車業界のパラダイムシフト(後編)
~社会が変わる~
3. シェアリングエコノミーとの融合
ここまでは、自動運転単独での話でしたが、これにUberを代表とする経済トレンドであるシェアリングエコノミーが融合することで、自動車業界も我々の生活も大きく変わることが予想されます。
Uberは自ら自動運転の開発を手掛けると同時に、メルセデスに数千台の自動運転車を先行発注していると言われています。今はUberを呼ぶと目の前に車が来てくれて、個人のドライバーが運転しています。手配した時点で行先もルートも料金も決まっていて、料金はUber経由でクレジットカード決済です。つまり、Ubeのドライバーとは一切口をきかなくても、お金を渡さなくても、目的地に連れて行ってくれます。つまり、今の時点ですでに自動運転に置き換わっても運用できるシステムになっているのです。
一般のユーザーも自動運転車を持つようになれば、自分は家にいながら、車だけがUberをやりに行って小銭を稼いでくる、というケースも現れるでしょう。
さらに、自分で車を持たない人も増えます。自家用車を持つよりもUberのようなサービスを利用するほうがコストが安くなるという試算をWall Street Journal[1]が掲載しています。今の世の中、交通手段として自宅に馬を飼っている人はいません。しかし、つい100年前までは馬が主要な交通手段であり、その後自動車に置き換わりました。今度は自動車が自動運転車に置き換わります。
4. 変化する社会
自動運転、AI、5Gなどの技術と、Uberのようなシェアリングエコノミーが融合すると、世の中はどう変わるのでしょう。
自動車メーカーは淘汰されて、多くの自動車工場は委託生産専用の工場になるでしょう。例えば、AppleがiPhoneの生産をFoxconnに委託しているのと同様に、GoogleやApple、 Uberが既存の自動車メーカーの工場を使ってファブレスの自動車メーカーになります。(タイトルの2030年というのは、“10年後”を象徴的に表したもので、2030年に実際に委託生産がおこなわれているかは不確実ですが、議論や交渉は進められているでしょう。)
個人の自家用車が減ることで、道路を走る車の絶対数が減る可能性もあります。また、自動運転によって交通事故が減少し、より安全な交通が実現されるでしょう...
とはいっても課題もまだ残っています。上にも述べたように、自動運転のための交通法規を各国で整備する必要があります。さらに、自動車保険が現状ではまったく対応できていません。自動運転になったときに、事故の責任がだれに帰属するかは重大な問題です。
【参考文献】
[1] By Tim Higgins, The Wall Street Journal, June 20, 2017