コスト削減案は柔らかい段階(煮詰まっていない、思いつきレベル)から実施可能レベルまで段階を踏んで育てることで、実現に結び付く可能性が高まると考えています。一般的に柔らかい改善案を強引に実行まで持って行こうとするからモノにならない、つまり落ちる確率が高くなるのです。
柔らかい改善案を叩いて生き残りを実行するより、計画的に育てていく方が生き残る可能性が高まります。そこで、組織全体で改善案を育ていく風土が大切であり、それには改善案のレベルを組織の中で定義して、共有化しなければなりません。
今回は、私のコスト削減案レベルの定義を紹介します。
(1)気づき
第一は、日常業務の中で感じる疑問点や要調査事項を、気づきとして一覧表にすることから始めます。より多くの気づきを得るには、プラントの現状を正しく理解する、本質を追及する現状実態分析をすることです。 省エネルギーの視点からも気づきが得られます。
(2)テーマ素材
気づきから、その損失を無くしたり、減らしたり、他に変えることが可能と予想される手段を考えます。つまり、テーマ素材とは「こんな損失があるから、こう対処しよう」という手段があることです。
この段階では、思いつきレベル(ジャストアイデア)を文章化する程度でかまいません。効果金額、投資額はまだ計算しません。あわてないことです。
(3)テーマ
テーマは「本当にロスあって、削減のための論理的裏付けができ、改善手段が明確にされた案」です。テーマ内容の精度は粗いものの、テーマ素材よりは具体化します。効果金額は概算で、投資見積はエンジニアの感覚程度で良いでしょう。
(4)構想案
構想案とは「基本的な問題点が解決され、具体的な仕様が設定された案」です。内容は基本設計で、見積を取れるレベルまで具体化します。
効果金額の精度は予算申請レベル、投資額はメーカー見積、実績額から導き出され、採算性を満足する案です。
(5)実施可能案
実施可能案は「関係部門、所属長の...
定義はここまでです。1つの気づきに対して、1つずつ順番に進めていく方法もありますが(1本釣り)、組織的にまず気づきを多く抽出して、一斉にレベルを上げていくこと(底引き網的)をお勧めします。それをマネジメントできるのは工場長、製造部長のはずです。