MTシステム超入門(その20)

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1.品質の数値化は裏から見る

 「品質」の価値はどうやって数値化したらよいのでしょう?

 期待した品質分が上乗せされていても購入を決断する金額、その上乗せ額は購入者が品質に与えた金額と言えます。例えばダイソンの掃除機や、ソニーのスマートフォン、あるいは雪印のバターは、店頭では他の製品より高い値段が付いています。メーカは品質を維持するためにコストをかけているかもしれませんが、実際にはたくさん売れるなどの理由で、原価はかえって安い場合もあります。

 「品質とは何ですか?」と尋ねられて、多くの人は「長持ちすること」「使い易いこと」「安心感」などと答えますが、これをうまく数値化できるでしょうか?電気製品を購入する際には何気なくやっている数値化ですが、改まって言われると、かなり難しいことです。なぜ難しいかと言うと、品質の“良さ”とは何かを考えてしまうからです。

 そこで品質を裏から考えると、すなわち「品質の悪さ」として考えると、うまく説明しやすくなります。「長持ちしないこと」「使いにくさ」「不安感」という面から考えるのです。長持ちせず壊れてしまうと、新たに購入するとか修理するなどの費用、すなわち損失が発生します。使いにくいと、間違いをしたり余分な時間がかかったりします。つまり、あなたは品質の悪いモノを購入すると損失を被るのです。

 ダイソンの掃除機購入を決断したとき、あなたは他の掃除機を購入した場合の損失差分を2~5万円と踏んだことになります。 その製品を購入する際に支払い、使用し続ける際に発生する損失の和が損失です。ですから、品質が良いということは「損失が少ない」と言い換えることができます。ダイソンの掃除機を購入した場合、購入時の負担は8万円です。しかし、他社製品を購入した場合、吸い込みがすぐに劣化してあなたの掃除時間が余計にかかったり、頻繁に集塵袋の交換をするなどの負担がかかることになります。

 掃除機を5年間使うとして、ダイソンでは合計12万円の損失であり、他社製品では時間のロスや修理負担などの合計も含めて15万円だとすると、ダイソンのほうが3万円品質が良いことになります。もちろん、二つの掃除機を同時に購入するわけにはいきませんので、購入時にその予測をしていることになるわけです。

 

2.耐久性から考える品質損失

 以上のように品質は損失で置き換えると考えやすくなりますが、ここでは、耐久性が悪い製品の金額換算方法について考えてみます。

 ここに二つの掃除機AとBとがあり、新品時の吸引力が同等だとします。1年後に、Aの吸引力は変わらず、Bは70%に低下したとします。70%まで低下した掃除機は、掃除に1.5倍の時間がかかるでしょう。1ヶ月間では、例えば5時間の損失になります。掃除する人の時給が1,000円だったとすると、1ヶ月5,000円、1年間では6万円の損失になります。それが掃除機BのAに対する品質損失レベルになります。

 吸引力が低下すると絨毯のゴミが残るなど、時間以外の損失もあるでしょうが、いずれにしても金額で換算可能な損失が生じます。その金額を品質の評価尺度とすることに、100%とは言えないまでも相当の納得感はあるでしょう。

 

3.場所と扱い方と品質損失

 製品はいろいろな場所で、いろいろな扱い方をしても、安定した性能を発揮してほしいですね。自動車は、夏の沖縄でも冬の北海道でも使われます。 どんな場所や季節でも、同じレスポンスで走ってくれる自動車は良い自動車です。しかも少ない燃費が望まれます。 同じ大きさ、同じ馬力の自動車が2台あったとして、沖縄と北海道で走り比べることができるなら、金額換算での品質損失を求めることができるでしょう。

 前項の耐久性の話も含めて、「そううまくは行かない」と感じる方も多いでしょう。確かに現実は他のノイズも多いのですが、「品...

1.品質の数値化は裏から見る

 「品質」の価値はどうやって数値化したらよいのでしょう?

 期待した品質分が上乗せされていても購入を決断する金額、その上乗せ額は購入者が品質に与えた金額と言えます。例えばダイソンの掃除機や、ソニーのスマートフォン、あるいは雪印のバターは、店頭では他の製品より高い値段が付いています。メーカは品質を維持するためにコストをかけているかもしれませんが、実際にはたくさん売れるなどの理由で、原価はかえって安い場合もあります。

 「品質とは何ですか?」と尋ねられて、多くの人は「長持ちすること」「使い易いこと」「安心感」などと答えますが、これをうまく数値化できるでしょうか?電気製品を購入する際には何気なくやっている数値化ですが、改まって言われると、かなり難しいことです。なぜ難しいかと言うと、品質の“良さ”とは何かを考えてしまうからです。

 そこで品質を裏から考えると、すなわち「品質の悪さ」として考えると、うまく説明しやすくなります。「長持ちしないこと」「使いにくさ」「不安感」という面から考えるのです。長持ちせず壊れてしまうと、新たに購入するとか修理するなどの費用、すなわち損失が発生します。使いにくいと、間違いをしたり余分な時間がかかったりします。つまり、あなたは品質の悪いモノを購入すると損失を被るのです。

 ダイソンの掃除機購入を決断したとき、あなたは他の掃除機を購入した場合の損失差分を2~5万円と踏んだことになります。 その製品を購入する際に支払い、使用し続ける際に発生する損失の和が損失です。ですから、品質が良いということは「損失が少ない」と言い換えることができます。ダイソンの掃除機を購入した場合、購入時の負担は8万円です。しかし、他社製品を購入した場合、吸い込みがすぐに劣化してあなたの掃除時間が余計にかかったり、頻繁に集塵袋の交換をするなどの負担がかかることになります。

 掃除機を5年間使うとして、ダイソンでは合計12万円の損失であり、他社製品では時間のロスや修理負担などの合計も含めて15万円だとすると、ダイソンのほうが3万円品質が良いことになります。もちろん、二つの掃除機を同時に購入するわけにはいきませんので、購入時にその予測をしていることになるわけです。

 

2.耐久性から考える品質損失

 以上のように品質は損失で置き換えると考えやすくなりますが、ここでは、耐久性が悪い製品の金額換算方法について考えてみます。

 ここに二つの掃除機AとBとがあり、新品時の吸引力が同等だとします。1年後に、Aの吸引力は変わらず、Bは70%に低下したとします。70%まで低下した掃除機は、掃除に1.5倍の時間がかかるでしょう。1ヶ月間では、例えば5時間の損失になります。掃除する人の時給が1,000円だったとすると、1ヶ月5,000円、1年間では6万円の損失になります。それが掃除機BのAに対する品質損失レベルになります。

 吸引力が低下すると絨毯のゴミが残るなど、時間以外の損失もあるでしょうが、いずれにしても金額で換算可能な損失が生じます。その金額を品質の評価尺度とすることに、100%とは言えないまでも相当の納得感はあるでしょう。

 

3.場所と扱い方と品質損失

 製品はいろいろな場所で、いろいろな扱い方をしても、安定した性能を発揮してほしいですね。自動車は、夏の沖縄でも冬の北海道でも使われます。 どんな場所や季節でも、同じレスポンスで走ってくれる自動車は良い自動車です。しかも少ない燃費が望まれます。 同じ大きさ、同じ馬力の自動車が2台あったとして、沖縄と北海道で走り比べることができるなら、金額換算での品質損失を求めることができるでしょう。

 前項の耐久性の話も含めて、「そううまくは行かない」と感じる方も多いでしょう。確かに現実は他のノイズも多いのですが、「品質の背骨」を数量化する必要性は感じていただけると思います。数量化できれば、消費者も助かり、生産者も技術開発の目的がはっきりします。

 

4.品質損失の数値化

 品質を“損失金額”として定義することが妥当、あるいは次善の策ということをご説明しましたが、タグチメソッドでは損失に直結する、別の指標を利用します。 数理を使わずに説明するなら、以下のようになります。

 掃除機でも自動車でもよいのですが、無茶苦茶暑い環境、逆に寒い環境で長時間、振動や加減速を繰り返して製品をいじめます。 もちろん、これは実験です。 いじめられた掃除機の“弱・中・強”設定のときの吸い込みレベル、あるいは自動車であれば、アクセルペダル踏込に対するレスポンスを測ります。測るときも、温度を変化させます。 温度によらず、吸い込みや加速のレスポンスが素直に伸びれば、それは良い品質=品質損失が小さい、という考えに「なるほど~」とは思いませんか?

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この記事の著者

手島 昌一

データ解析やパターン認識をしてみたいけれど難しそう、と考えていませんか? MTシステムは“分かった”,“使える”への最適解です。

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