【第2章 中国工場の実状を知る】
【日本人駐在員について】
前回のその15に続いて解説します。
(3)部長・科長として駐在
中国工場のこれらの役職には、日本ではまだ管理職ではない係長や主任の人、場合によっては、まだそうした肩書のない人が就くことが少なくありません。当然のことながら日本ではマネジメント経験はありません。しかし、中国工場では、数十人、時には数百人の部下をいきなり持ち、マネジメントすることになります。これは言う程簡単なことではありません。
また、これらの人たちは自身の専門分野の業務・部門を担当する訳ですが、海外工場においては、場合により日本では経験したことのない業務・部門も任されることがあります。それぞれの分野ごとに駐在員を送り込める企業はよいですが、そうでない企業においては、海外工場に行ったら何でもやらなくてはならない傾向があります。
◆ 中国工場で日本人育成の是非
筆者が中国駐在中に日系の取引先で、日本人駐在員が1年で帰任したことがありました。
どうも本社と工場とで駐在員に対するスタンスが異なることが、原因だったようです。工場側は即戦力となる人材の駐在を求めていたが、本社側はその意向をあまり理解しておらず、工場で勉強して力が付けばよいと考えていたのでした。ですからその人に即戦力としての力はなく、結局、工場に育成するだけの余裕がなかったこともあり、総経理の判断で日本に返すことになったのです。
駐在員を選ぶ本社は、どのような人材を送り込むのかをよく検討すべきです。以前と違い中国工場で日本人駐在を育成できる余裕のある工場は少ないのではないでしょうか。力のない日本人社員を中国に送り込んで力を付けさせるのではなく、力のある社員に中国で経験を積ませ更に力を付けてもらうように考えるべきだと思います。
中国駐在には技術的な力量も当然必要ですが、管理職としての研修も行ってから送り込むべきです。なぜなら、日本では平社員でも中国工場に行けば課長など...
次回は、(4)日本人駐在員は常に見られている、から解説を続けます。
【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行 筆者のご承諾により、抜粋を連載