1. 研究/技術者キャリアの選択肢
近年、グローバル化の進展、デフレ不況などにより、企業業績が悪化しているところが多いようです。実績の高かった技術者さえもリストラの対象者となっていることも報告されています。従来のキャリアデザインの考え方は、右図に示したように、したいこと、自己の強み、価値観からキャリアビジョンを描くというものでした。今回は、今後の研究/技術者のキャリアデザインについて、どうあるべきかを考えてみたいと思います。まず、キャリアの考え方を整理しておきます。キャリアには、大きく分けて3つの考え方があります。1つ目は、1つのテーマを長期的に一貫して追求する、基礎研究、教師、職人などの専門職型キャリアです。2つ目は、予め自分でキャリアプランを練ってそれを一歩一歩クリアしていくというものです。 3つ目は、企業や社会環境に身を任せて、その場その場でよりベストなキャリアを選択するものです。
今、この3つ目の考え方が脚光を浴びています。クルンボルツ博士の「計画された偶発理論(Planned Happenstance Theory)」というものです。
2. 心に残るメッセージ
先日参加したキャリアカウンセラーの発表やパネルディスカッションなどの大会で、クルンボルツ博士のビデオメッセージが上映されました。特に、ロールプレイを実演して見せたメッセージのインパクトは強く、鮮明な印象となって残るものでした。例えば、次のようなメッセージです。「キャリアについては、計画はあまり重要ではない。なぜなら、それに囚われすぎてしまうからである。行動することが重要である。」「偶然を待つのではなく、まず、やってみること。最悪なのは、何もしないこと。」また、パネラーからも良いメッセージがありました。「役に立たない仕事はない。」「人には生まれてきた意味がある。」「自分が、個性や才能に気づいていないケースが多い。」などです。
3. プランド・ハプンスタンス理論とは
この重要な考え方であるPlanned Happenstance 理論は、次のように定義されています。「環境変化が激しい時代においては、想定外の出来事で計画を変更せざるを得ないことが多い。従来の固定的なキャリアデザインでは対応できない。この予期せぬ出来事や偶然の出来事が人のキャリアに大きな影響を及ぼすことに着目して、想定外の出来事を否定的に捉えず望ましいものであるとし、キャリア形成のチャンスと捉えること。」
そして、偶然の出来事をPlanned Happenstanceに変換するスキルは次のようなものとしています。①好奇心、②持続性(失敗にめげず努力し続ける)、③柔軟性(姿勢や状況を変える)、④楽観性(新しい機会は必ずやってきて、自分のものにできる)、⑤冒険心(結果がどうなるか見えない場合でも、行動を起こす)
4. 時代に合わせたキャリアデザイン
サッカー日本代表のオシム元監督は、いつも「走りながら考えろ!」と言っていまし...