◆ 売上分析やマーケティングのデータ分析で成果を出したいなら、OUTPUTよりもOUTCOMEにこだわれ
データを集めたけど…… 見える化したけど…… データ分析したけど…… 成果が出ない!
営業やマーケティング系の売上分析に限らず、IoT系でもヘルスケアデバイス系でも同様の問題を抱えているようです。この手の相談が多いのです。成果が出ない! どのように活用すればよいのか分からない! 何が変わったのか見えない!現場と乖離しているデータ分析者が分析する結果は、気を付けないと往々にして使えません。現場の実態を知らないからです。しかし、ある一つのことにこだわることで、データ分析者の分析結果が、使える分析結果に代わることがあります。そのある一つのことについて、今回はお話しします。
1、ガベージイン・ガベージアウト
データ分析には、高度な分析知識とスキルが必要だ! そうだ、大学院出のスゴイ人財を採用しよう! といって分析できそうな人財を採用すると痛い目にあいます。
特に、社会人経験のあまりない人財は要注意です。すでに、分析組織があり、それなりの先輩がいるならば良いかもしれませんが、そうでない場合は、社内人財に最低限の分析スキルを身につけさせてデータ分析した方が、かなりましです。
大学や大学院などで扱うデータは、現場のデータとかけ離れているぐらい綺麗なデータです。演習のためのデータだからです。実際のデータは非常に汚く、データを綺麗にするデータクレンジングがかなり必要になります。
データ分析の現場経験者であれば分かると思いますが、データクレンジングで手を抜くと、とんでもないデータ分析結果が出てきます。
ガベージイン・ガベージアウトという言葉が、データ分析の世界にあります。ゴミからは、ゴミしか生まれない。データクレンジングで手を抜くと、ゴミ度が高いです。そのようなデータでいくら分析しても、ろくな結果がでてきません。
社会人成り立てのデータ分析者には、データクレンジングの洗礼が待ち構えています。多くの人は、中途半端にデータクレンジングし、痛い目にあいます。痛い目にあうとは、分析を一からやり直すということです。
しかし、分析組織があり、それなりの先輩がいないと、その分析を一からやり直すという機会が失われ、可笑しな分析結果を量産することになります。可笑しな分析結果からビジネス成果が出るはずもなく、逆にビジネスの足を引っ張るかもしれません。恐ろしいことです。
現場感のある人がいれば、その可笑しな分析結果を、使えない分析結果だと見抜ける可能性があります。そういう意味で、社内人財に最低限の分析スキルを身につけさせてデータ分析した方が、かなりましなのです。
これからデータ分析の組織を立ち上げようとお考えの方は、それなりのデータ分析経験者を中途で採用することをお勧めします。できれば、10年以上のキャリアのある方がお勧めです。多くの失敗経験を持っているからです。経験年数10年以上のキャリアのある方を探すのは大変だと思いますので、最低でも5年~7年程度は必要だと思います。ちなみに、1年~3年ぐらいが要注意です。出来ているつもりの人財が多いからです。中途半端な成功体験が一番怖いです。私は、そういう人財を、昔の自分への自戒の意を込めて「分析バカ」と呼んでいます。
2、分析バカ
データ分析従事者の中には、「分析バカ」が結構な人数存在します。分析バカとは、分析手法にやたらとこだわる人間です。大学・大学院を卒業してすぐの人間の多くが、この分析バカになります。私もそうでした。分析バカの特徴として、先ほど述べたようなデータクレンジングが不十分とか、分かる人しかわからない分析結果(OUTPUT)を出すという、間違いを起こしてしまいます。
なぜ間違いなのかというと、ビジネス成果(OUTCOME)が生まれないからです。
何のために、売上分析をしているのか? 何のために、データ分析しているのか? 何のために、 ビッグデータ活用しているのか? 何のために、予測モデルを構築したのか? 何のために、AI(人工知能)・自動化したのか?答えは明白です。ビジネスであれば、ビジネス成果(OUTCOME)を出すためです。
データクレンジングが不十分だと、データが汚すぎて分析結果(OUTPUT)が可笑しなことになってしまい、データ活用できる状態ではありません。
データクレンジングが十分でも、分かる人しかわからない分析結果(OUTPUT)では、データ活用する現場で活かしようが分からず、活かされません。
データ分析は、データ(INPUT)から分析結果(OUTPUT)を出すためにするのではありません。
データ分析は、データ(INPUT)から分析結果(OUTPUT)を通して、ビジネス成果(OUTCOME)を出すためにします。
3、OUTPUTよりもOUTCOMEにこだわれ!
ある一つのことにこだわることで、データ分析者の分析結果が、使える分析結果に代わることがあります。もちろん人によりますが…… 非常にシンプルです。
OUTPUTよりもOUTCOMEにこだわる!
ただこれだけです。
データ分析に慣れてくると、決まって「分析バカ」になる人が多いです。昔の私がそうでしたし、周囲を見渡してもそうです。「分析バカ」の状態のときの行動パターンは非常に似ており、色々な分析手法を勉強し知った気になり、色々な分析ツールに飛びつき最先端を走っている気になります。その気になっているだけです。そうして、一番重要なビジネス成果(OUTCOME)が疎かになります。
ある一部の人は、会社に貢献していないことに後ろめたさを感じ、例えば社内勉強会を開いたりします。社内勉強会では、分析手法の説明とツールの使い方の演習がメインで、一番重要なビジネス成果(OUTCOME)への結び付け方の講義ができません。
ビジネス成果(OUTCOME)への結び付け方を共有できないことには、いくら分析手法やツールを学んだところで、当然ですがビジネス成果(OUTCOME)は出しにくいです。しかし、一旦OUTPUTよりもOUTCOMEにこだわりだすようになると、見違えるようになる分析人財も少なくありません。「分析バカ」からの脱皮です。もしかしたら、「分析バカ」という過程は、思春期なようなもので、分析人財が成長する上で必要な過程なのかもしれません。
4、OUTCOMEにこだわりだすと、分析がシンプルになる
OUTPUTよりもOUTCOMEにこだわりだすようになると、面白い傾向が見られます。データ分析がシンプルになるのです。
実際にあった例です。
ある需要予測でディープラーニングで頑張ってモデル化し予測していたのが、よりシンプルなモデルである重回帰モデルでモデル化するようになり、そこそこのビジネス成果(OUTCOME)を出す。そもそも、予測精度的には目くじらを立てるほどの違いがないのに、ものすごい分析手法を使っている感を出したいがために、慣れない最新の手法を無理して使っている。
さらに、面白い傾向が見られます。データ分析の結果の見せ方が分かりやすくなります。ディープラーニングで頑張って予測していたときの分析結果資料には、「ディープラーニングとは何か?」みたいな補足説明などがあり、ごちゃごちゃしていた。重回帰モデルで予測していたときの分析結果資料には、余計な情報が削除されシンプルになる。
「分析バカ」の特徴として、分析結果資料に、自分の頑張ったことを事細かに記載したり、最新の分析技術事情を記載したりと、データ活用側から見たらどうでもよいことが、結構なページを割いていたりします。そのような余計な情報の量が、OUTCOMEにこだわりだすようになると劇的に減ります。分析がシンプルになり、分析結果資料もわかりやすくなると、当然ながらデータ活用する現場で活用されやすくなります。
5、意識転換の壁を超えたかどうかを見極めるポイント
今回は、...
データ分析で慣れたころ、多くに人は「分析バカ」になります。私も。もれなく「分析バカ」だった期間がありました。多くの失敗を通し、だんだんと「分析バカ」の時期を卒業しました。私の経験と、私の周辺を見る限り、少なくとも5年~7年、できれば10年以上のデータ分析経験がないと、「分析バカ」からの脱皮は難しいようです。失敗経験を十分できないからです。
一番ヤバいのが、データ分析1年~3年ぐらいです。データ分析ができた気になっているからです。
「分析バカ」は一様に、データ(INPUT)から分析結果(OUTPUT)を出すためにデータ分析をします。一番強烈に意識しなければならない、ビジネス成果(OUTCOME)を疎かにして……「OUTPUTよりもOUTCOMEにこだわる!」という意識転換の壁は非常に高く、多くの失敗を経験しないと難しいという現状があります。
意識転換の壁を超えたかどうかを見極めるポイントがあります。
話題の分析手法や小難しい分析手法を選ぶ。分析結果資料の中に、自分が分析で苦労した内容や分析手法の補足説明のページ数がそこそこある。「OUTPUTよりもOUTCOMEにこだわる!」という意識転換の壁は非常に高いですが、全く意識しないよりはした方が、大分ましです。データを集めたけど…… 見える化したけど…… データ分析したけど…… 成果が出ない! と感じましたら、ぜひ「OUTPUTよりもOUTCOMEにこだわる!」という意識を強烈に意識してみてください。好転する可能性があります。