前々回から「知識・経験を物理量で整理する」議論を始めていますが、今回も前回に引き続き「整理の為に考える要素」の解説をします。
1. 「知識・経験を物理量で整理する」ための4つの要素
- 要素1:分析の対象の領域を定義する
- 要素2:物理量の大小で対象をセグメントに分割
- 要素3:選択する物理量は高収益を生み出す「3つの視点」(大きな顧客価値、競争の回避、大きなコスト低減)への貢献
- 要素4:同じ水準の物理量でも、物理量をドライブする要因が異なればセグメントを分割する
今回は市場についての情報・経験の整理を例に、もう少し具体的な解説をしたいと思います。
前回上の「要素2:物理量の大小で対象をセグメントに分割」という解説をしましたが、まさにマーケティングの基本のSTP(Segmentation、Targeting、Positioning)の最初のセグメンテーションは、様々な市場の情報や知識を集めて、それを整理するために市場を各グループ、すなわちセグメントに分割する活動です。
2. クレイトン・クリステンセンのジョブ理論と市場セグメンテーション
「イノベーションのジレンマ」で有名なハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセンは、市場セグメンテーションに関して、ジョブの視点を持ってセグメンテーションをしなければならないと言っています。
2016年同教授は「ジョブ理論」を上梓し、本書は日本でも注目を浴びました。クリステンセンは、ミルクシェークを例に、ミルクシェークを買う顧客は、ジョブでセグメンテーションをすべきと主張しています。
ジョブというとすぐにはピンと来ないかもしれませんが、彼は「全ての顧客は用事(ジョブ)を片付けるために製品を雇っている」という発想からこのような言葉を使っています。
ミルクシェークの場合は、退屈しのぎという「ジョブ」を片付けるためにミルクシェークを「雇っている」(すなわち買っている)市場セグメントが存在するという説明がなされています。
もちろんその他の、例えば喉の癒すジョブ、甘いものを摂取するジョブを雇うなど、他の市場セグメントも存在します。
3. 「ジョブ」と顧客価値
クリステンセンの言うジョブは、私が言う顧客価値に相当します(私自身は「ジョブ」という言葉より、顧客価値の方がストレートに理解できると思うのですが。)そのために、「要素3:選択する物理量は高収益を生み出す「3つの視点」への貢献」の中で、「大きな顧客価値」をあげています。
つまり、顧客が雇っているジョブ(自社が提供している顧客価値)によって市場をセグメンテーションするということです。
ここで「大きな(顧客価値)」と言っている理由は、実はその製品で提供している顧客価値は大小複数あるため...
4. 物理量をドライブする要因が異なればセグメントを分割
それから「要素4:同じ水準の物理量でも、物理量をドライブする要因が異なればセグメントを分割する」という議論をしましたが、「退屈しのぎにミルクシェーク」を買う顧客の中には、長距離のドライブから生まれる退屈をしのぐために買う顧客もいれば、スマホを見るという退屈しのぎとの組み合わせで買う顧客もいるかもしれません。
この場合は、これらの原因別に市場セグメントを更に分割して整理することは意味のあることです。
次回に続きます。