前回のその47に続いて解説します。
【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方
【3.13 顧客工場監査を利用する】
(2)自分たちが進めたい改善指摘を依頼する
監査を受ける側が顧客に指摘を依頼するのも一つの手です。
品管部や現場は改善を進めたくて色々な方案を検討して上層部に打診しますが、トップによっては費用や工数の問題などを理由に改善の実施に腰が重い人もいます。そんなトップでも顧客からの指摘や要求となるとむげには断れず対応せざるを得ません。もちろん無茶苦茶な要求の場合は別です。
このようにトップの腰が重く中々改善案にゴーサインを出してくれない場合、監査の際、顧客にその内容の指摘を依頼するのです。自分たちが進めたい改善を顧客の要求という形にして、トップの重い腰を上げるようにする訳です。
筆者も同じ日系中国工場に勤務する旧知の品管責任者の日本人から、工場監査の前に「こういう改善を進めたいが、トップが中々うんと言わないので、監査の時にこの改善が出来ていないことを指摘してくれませんか]と言われたことがあります。内容を確認して、その改善が出来れば品質的に良くなることが想定できたので、工場監査でこちらからの要求という形で指摘をしました。
改善を進める時に、顧客に指摘してもらうという方法もあるので、頭の隅に入れておいていただければと思います。
(3)中国人スタッフの成長に活用する
顧客の工場監査は、顧客と直に接することの少ない生産部門のスタッフにとっては、ものすごく勉強となり成長する機会となります。
① 事前準備が勉強になる
監査の時に自社工程の状況を現場で説明することになるので、事前に現状がどうなっているかを確認することが、自身の認識の再確認となり勉強になります。
② 生産現場スタッフが顧客と直に接する機会
生産現場の人たちが顧客と接する機会は少ないため、とても刺激になります。
③ 顧客の要求を肌で感じることができる
顧客が求めている品質や工程管理レベルを直接聞くことで、実感として捉えることが出来ます。同じ内容の要求を営業部門から言われると、できる訳がないなどと反発するところかもしれませんが...
このようなことから失敗の許されない監査の場合は別として、通常の監査であれば、受け答えを日本人が全部やってしまうのではなく、可能な限り中国人スタッフにやらせるとよいでしょう。
次回は、3.14 中国工場での従業員教育の進め方。から解説を続けます。
【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載