別稿にて、短繊維と長繊維の話をしました。今回は、防塵紙から出る繊維ゴミについてお話しします。防塵紙の他、無塵紙、クリーンペーパーなどと呼ばれています。
一般の紙(普通紙)からはゴミが出ますが、そのゴミが多く出る部分は端面(周囲)です。紙はパルプが主成分であり、その繊維は短く、相互の絡まりが少ないのでゴミとなるのです。
例えば、紺や黒の背広を着用し、新聞を読んだりすると、新聞から出る白いゴミが背広に付着して嫌な思いをしたことがありますね。吹いてみたり、手で払ってみたり、紙から出るゴミと日常的に付き合っています。
防塵紙は可能な限りごみが出ないように、様々な工夫がされています。普通紙からの発塵のように端面からの発生に対しては、長繊維を多く混ぜ込んだり、あるいは溶断と言う方法で周囲を固めるなど、メーカーにより様々な対策を施します。
ただし、破いてしまうと端面処理の機能が失われるので繊維が飛び出します。これを確認したい場合は、破いて50倍程度の倍率で顕微鏡観察をしてみてください。繊維だらけです。防塵紙を製品の上で破く行為をすると、繊維が脱落し製品に付着します。特に、半導体、水晶、表示体など厳しいゴミの管理を要求されるところでは品質問題になります。
付着した繊維ゴミを単純に肉眼や一般の顕微鏡で観察しても、紙の繊維なのか、防塵衣(クリーンスーツ)から出たものか、ワイパー(拭き掃除等に使用)から出たものか、人が着用している下着等から出たものか、容易には判別がつかなくなります。従って、内容によっては、分析が必要になります。
防塵紙でも、破らない、切らない、丸めないと言うことが大切です。丸めた場合は、表面の繊維が起きてしまい、脱落の原因になります。
また防塵紙は高価だとの認識から、少し使ったものでも、切ってメモ用紙に活用するという場合も見かけます。しかし切ってしまうと端面が剥き出しになるので、破るのと同じことになります。発塵を少なくするために様々な工夫がされ、それを目的に高いお金を出して購入しているのですから、使い方を間違えて発塵させないようにしましょう。
前述の、ゴミの管理が厳しい製品を扱っているところでは、こういうことを避けるため、オペレータに対してクリーン化教育をするなど、意識、知識面での対応に加え、持ち込み品や扱い方をルール化したり、ハサミ、カッター、穴あけ器の現場への持ち込みを禁止するなど、仕組み面の対応もしています。
この他、防塵紙と言えども発塵はゼロではないので、製品流動用の伝票(流動表-製品の機種や...
余談ですが、電子化する目的は、もちろん発塵の観点だけでなく、様々なデータが瞬時に把握できるので、生産管理や品質管理面でもメリットがあります。
品質問題が起きた場合は、遡っての調査がし易い(原因遡及容易性-トレーサビリティ)ことがあります。防塵紙はゴミが出ない紙。防塵衣はゴミの出ない服と言う思い込みではなく、その機能を生かした使い方をしたいものです。