カリフォルニア州独自の環境政策 自動車の環境問題(その2)

 

♦ 燃費規制対応は目標理解と技術開発が重要

 大気汚染の酷かったカリフォルニア州では、大気汚染抑止に対する規制要求が強く、伝統的に合衆国政府と異なる独自の規制策定が容認されていました。当然、同政府規制よりも厳しいものなので、自動車メーカー各社は、まずはCARB規制対応を検討せざるを得ず、常にその規制をウオッチングすることとなります。

 この規制当局が、カリフォルニア州大気資源局(CARB=California air resources board)です。なお、彼ら自身はCARBとはいわずに、ARBというらしいです。日本国内で、日本環境省とはいわずに環境省というのと同じ感覚です。

 CARBの規制は排ガスに限らず、大気汚染にかかわる内容も広範囲に規制しています。このため規制対象は自動車に限らず、重油中の硫黄成分量規制の対象となる船舶燃料なども含まれます。

 私からみると、CARB独自の規制があります。すでに他州や他国にも展開されてますので、今現在は独自ではなくなっています。

 独自規制で特に特徴的なものはZEV規制[1]です。自動車販売台数のうちのある割合をZEV車にするというものです。2018年から引き上げられた基準では、16%以上をZEV規制対応車とする必要があります。達成できない分は、台当たりいくらといったペナルティ支払いが必要となります。

 さて、ZEV以外にPZEV(Partial ZEV)として、PHVやFCV(燃料電池自動車)も認められています。2018年からはHVがPZEVとして認めなくなりました。このため、トヨタはテスラから排出枠を購入しており、その額は100億円を上回るといわれています。

 

 他に、揮発性有機化合物(VOC=Volatile organic compound)規制も特徴的と感じたものです。

 自動車に給油する際のVOC規制は、主に気化したガソリンの放出を抑止するための規制です。給油の際、給油口のキャップを開いた瞬間に、気化ガスが漏れ出る音がしますが、カリフォルニアでは許されません。自動車搭載型蒸気回収システム(ORVR=Onboard Refueling Vapor Recovery )を付ける必要があります。

 欧州でも同様な規制がありますが、車載義務は設けておらず、ガソリンスタンドの給油装置側で気化ガスを回収するシステムとなってます。このほうが対策案としては合理的だと思います。それにしても、ORVR、懐かしい言葉です。20年以上も前になりますが、関連技術開発支援をしていました。

 

 VOC規制に関しては、駐車中の自動車からの放出を対象として規制があります。車そのものを計測装置に入れて測りますので、燃料由来のVOCだけでなく、あらゆるものからのVOC放出が対象となります。塗料の残存有機溶媒やシートのウレタン成分、そして結構な割合を占めているのがタイヤからのVOCです。

 なお、トランプ政権はCARB独自の規制を認めず、全米統一基準SAFE規制を展開しようとしています。ZEV規制も求めないとしており、ZEV規制導入済みのカリフォルニア州等13州が訴訟を起こしてます。トランプさんは、オバマ大統領時代の政策は端からひっくり返したいようです。

 オバマ時代に制定された...

2025年からの50mile/gallon(1ガロンで50マイル走行、21.1km/l相当キロ)を2020年目標値である37 mile/gallon(15.6 km/l相当キロ)に据え置くというものです(JETROビジネス短信)。

 GMやトヨタはトランプ政権規制案を支持しており、カリフォルニア州はそれらメーカーからのクルマ調達はしないと宣言してます(同)。

 自動車の環境問題の中でも、燃費規制対応には目標の理解と技術開発が重要です。

[1]ZEV(Zero Emission Vehicle)排出ガスを一切出さない電気自動車や燃料電池車

 

 【出典】技術オフィスTech-T HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

◆関連解説『環境マネジメント』

↓ 続きを読むには・・・

新規会員登録


この記事の著者