半導体露光装置支える光学技術

 

【目次】

     

    ♦ 露光技術50年の変遷たどる

    1.半導体露光装置:フォトリソグラフィ工程の要

     CPUやメモリなどの半導体はフォトリソグラフィ工程を用いて製造されています(図1)。この工程で要となるのが半導体露光装置です。この50年でCPU内トランジスタ数は100万倍程度に増加しましたが (図2)、これは露光装置の解像力の進化なくしては成しえませんでした。ここでその進化を支えた光学技術について述べてみたいと思います。

     

    2.解像力の定義

     解像力はレーリーの式で定義されます。

      λ:露光波長 NA:レンズの開口数(図3)
      k1、k2:レジスト条件等で変わる係数

     1970年代、限界解像力は線(λ=436nm)を用いて2µm程度といわれていました。しかしその後の光学技術の進化で、解像力は大幅に向上していきました。

     

    3.高解像力に向けた技術革新

    3.1 露光方式の変遷

     露光方式の変遷を図4に示します。高解力化の求めに応え1970年代後半に登場したのが結像光学系を組込んだ2種類の露光装置、Mirror ProjectionとStepper(図5)です。これらの違いは、前者はミラーによる等倍光学系、後者はレンズによる1/5倍縮小光学系という点です。...

    マスク(パターン原版)を1/5倍に縮小してウェハに露光する方が解像力に有利でした。半導体の微細化に向けて後者に軍配が上がり、1980年代初頭からはStepperが主流となりました。

    3.2 露光光の短波長化

     2.の式(1)から解像力を上げるためには以下の2つの方法があります。

    1. 光の波長λを短くする
    2. NAの大きなレンズを使用する

     これらは並行して改良が進められました。1980年~1990年代にかけ水銀ランプを光源とする線、続いてより短波長のi線が用いられました。NAも光学設計の改良により拡大されましたが、レンズの収差増加や焦点深度の減少(式(2))から限界がありました。一方で光源の短波長化が進められ、Krfエキシマレーザ(248nm)が開発されました。従来の光学ガラスでは透過率低下および材質の劣化が生じるため、新たな材質として石英ガラスが採用されました。その後さらに波長の短いArfレーザ( 193nm)に移行する際は蛍石が採用されました(図6)。いずれも製造が困難でしたが、製法開発に力が注がれ短波長レーザー用レンズが実用化されました。

     

    3.3 新たな露光技術の登場

     3.3.1 ステップ&スキャン方式(Scanner

      1990年代、光源にKrfが採用された時期は以下の大きな課題が生じていました。

    • 半導体チップサイズの大型化に対し、露光領域が小さすぎる(20角程度)
    • NA増に対し収差補正が困難(特に周辺部)

     ここで発案されたのがScannerです。レンズ直径部に透過スリットを設け、マスクとウェハを同時スキャンして露光を行います。これにより露光面積が拡大されました(図7)。またレンズ中央部を使用すること、およびスキャン動作に伴う収差平均化効果もあり、露光時の収差の影響が大幅に低減され、レンズ設計上もNA拡大が可能になりました。Krf以降は主役はStepperからScannerに移行していきました。

     

     3.3.2 液浸露光技術

     Arfの次に想定されたF2(157nm)は光学材料開発が進まず、またさらなる短波長EUV(13.5nm)は光源自体の開発に相当な困難が見込まれました。ここで登場したのが液浸露光技術です。レンズとウェハ間に純水を満たすことでNAを増大化する効果を生みます(図8)。2006年液浸露光により初めてNAが1を超える露光装置が登場し、高解像力に寄与しました。

     

     3.3.3 EUV露光装置

     究極の露光装置といわれるEUV露光装置が量産に使用され始めました。極短波長の為全て反射光学系で構成し、光学系は真空で覆うという大規模改造が施されました。今後NAの拡大が計画されています。

    4. おわりに:光学技術とともに新技術の誕生に期待

     50年に渡る露光技術の変遷を辿(たど)りました。図9に露光装置のおおよその変遷を示します。ここまで触れませんでしたが、他に変形照明や位相シフトマスク等の光学技術も解像力向上に寄与してきました。今後も新たな技術が生まれて来ることを期待したいと思います。

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