手段と目的 現場改善:発想の転換 (その3)

 

 工場の経営者から現場の従業員の方を対象として「現場改善:発想の転換」をテーマに解説します。固定観念を打ち崩しながら現場改善に留(とど)まらず、経営革新まで範囲を広げ、改善とは何か、革新とは何かを、目からウロコ的に連載しておりますが、今回はその第3回目となります。

◆ 会社の目的は何か

1. あなたは何の目的で会社に来ていますか

 いきなり簡単なようで難しい質問ですが「何の目的で、会社に来ていますか?」と質問されて、皆さんはすぐに答えることができますか?

 初めてコンサルティングする会社に訪問した時にも、よくこの質問をします。参加者は講義を聞くだけだと思ったら、質問をされてしかも抽象的な質問なので、困ったように目を白黒させながら答えようとしていますが、なかなか正解は出てきません。

 ある登山家がエベレストに初登頂したときに「何故(なぜ)山に登るのか?」というインタビューに「そこの山があるからだ」と答えた有名な台詞(せりふ)がありましたが「そこに会社があるからだ」では答えにはなりません。

 大抵の答えは「お金を儲けるため」ですが、本当でしょうか?お金を儲けることは、あくまでも手段で目的はお金を儲けてより良い豊かな生活を過ごすためだと思います。手段と目的は違うものですが、このような質問をしますと、分かっていても混同してしまう人がほとんどです。

 さて、会社の目的は何でしょうか?これまた禅問答のような質問ですが、普段は仕事が忙しくて、とてもこんなことを考える暇もないかと思いますが、少し考えてみてください。色々な解釈があり、どれが正しい答えというものではありませんが、私は「会社の目的は、生き残ることですよ」と説明します。

 日本における最も古いというか、寿命の長い企業は某旅館で、もう1300年という驚異的な長生き?をされています。屋久島の千年杉もビックリですね。ここまで継続されているのは、並大抵の努力ではなかったと思います。

 会社には、少なくとも複数以上の人が働いていて、そこで従業員は収入を得て生活をしていくわけで、会社はその働く場所を提供して、働きの対価を給料として支払います。従業員も社長も、会社が存続することを前提に毎日働きに来ているわけで「今日会社は潰れましたので、それでは皆さんさようなら」では非常に困ったことになります。そんなことになれば、本人も家族もその日から路頭に迷うことになってしまいます。そのためにも、会社は生き残り、存続していかなければなりません。

 人間にも寿命がありますが、こと会社に関しては、上手く経営をやりさえすれば寿命は人間以上に延ばすことが可能です。社長というのはそういう意味でも、大変な社会的貢献という責任のある職業です。

 

2. 会社は生き続けるもの

 会社はまた例えるならば、生き物とも呼ばれています。毎日毎日生産活動をしているので、当たり前といえば当たり前です。生きていくためには、利益を出すことだけでよいですが、生き続けるためにはさらに、利益を出し続ける体質に変わることが不可欠です。それは、市場環境が変化していくためです。

 一時利益を上げただけでは、短期的な寿命に終わります。特に米国企業では、短期利益の目的のために従業員を簡単にリストラしてしまう傾向があります。それでは再び景気が良くなった時、雇用しようとしても人は非常に不安に駆られ、心底からこの会社に尽くしてよいか疑問を感じてしまいます。

 生き続けるには、ライバルに打ち勝つだけの競争力を、身につけることが重要です。ここ約20年の間に市場環境は、情報公開もあり世界中が激変してきましたが、恐らくこの傾向は続くと考えられます。つまり、さらに厳しい生存競争となり、ますます多品種小ロット化していき、合わせて製品の寿命も短命化していきます。このような環境下で、ライバルに勝る競争力を身につけるには、どうすればよいのでしょうか?そのヒントになるものが、多品種小ロット生産方式です。

 

3. 多品種小ロット生産方式とは

 多品種少ロット生産にするということは、(1) 段取り替え時間を短縮する。(2) リードタイムを短縮する。(3) 高い品質レベルを確保する。ことであり、従来の生産システムとは全く異なるものです。

自分で守るようにし、リードタイムも日単位から時間単位に短縮していきます。また、工程間結合してU字ライン化したりする流れ改善や、バッチ生産から1個流しに変えて、流れを速くしていきます。

  • (3) 高い品質レベルの確保とは、作った後に検査を行い不良をはねるのではなく、1個1個各工程内で検査するもので、オペレーター自体が検査員も兼ねて(自主検査)、それを標準作業に組み込んでいきます。不良率は、%レベルからPPMレベルに削減していきます。オペレーターの多能工化が必要になってきますが、それには個人個人のアドリブ作業ではなく、標準作業にしなければなりません。標準作業においてもまだ不良が出るようだと、ポカヨケで徹底的に不良が出ないようにしていきます。
  •  このように今までの生産システムを変えることは大変な労力が必要ですが、会社が生き残るためには不可欠なことです。ライバルも同じことをやるかもしれませんが、いち早く先行して彼らよりもやりあげることです。


     次回は、現場改善:「発想の転換(その4) やらなくてよいことを見つけ出す」から解説を続けます。

    ◆関連解説『生産マネジメントとは』

     

     【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

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