1.顧客はニーズを認識していない
製品開発テーマを設定する時に、顧客ニーズに基づく製品開発が重要です。しかし実際の顧客は、自社のニーズを認識していないことが多いものです。もし認識しているならば、それは競合にも伝わっている可能性が高く、市場で競合製品と同じ顧客の奪い合いとなり厳しい競争が起こります。
そこで、顧客の顕在化する前の潜在的なニーズを探ろうとするわけですが、そこで創出したアイデアが本当に顧客満足をもたらすものなのか、は不確定なものです。また仮に顧客満足が得られたにしても、さらに大きな顧客満足を実現する余地は残されているはずです。
2.顧客の共鳴具合を見る
ステージゲート法で重視する活動の中で、早い時期から顧客にアイデアをぶつけて反応を取り、それに基づいて製品のアイデアを進化させる、もしくはテーマを中止するというものがあります。顧客に何もないところで、問題、課題を聞いても、あくまで既存製品の延長線上で、既存機能の不具合や価格に関する要望に留まることが多いものです。このような質問では、既存製品の改良程度の開発テーマしか出てきません。
そこで既存製品の思い込みを超えて、顧客の頭に刺激を与える仕組みが必要になります。この活動によって、「こんな製品アイデアを考えているのか!」や「ここは良いけど、こんな機能はいらない。もっとココをこうしたら?」といった反応が得られます。さらにこのような顧客の反応を見て、自社の開発者も「顧客はこんなことを考えているのか!」といったインスピレーションが得られます。私は、このように顧客がそのアイデアに共振して、また自社の開発者もそのような発見に共振する活動を「自社・市場レゾナンス」と呼んでいます。
もちろん顧客からの前向きな反応はありがたいのですが、それ以上にそのアイデアに刺激を受け、なんらかの新しい発想もしくはそれに結びつくものを引出すことが重要です。従って、初期においてはそのアイデアが完璧である必要性はありません。技術者はどうしても完璧を求め、相当製品開発が進んだ段階で顧客に見せたいと考えます。しかし、その段階では、すでに仕様が決まり、相当の開発が進み、投資も行い、市場投入時期がかなり固定されてきます。その段階で、新に得た顧客の意見を反映して、いまさら変更ということは困難なものです。
あくまで、初期において顧客にアイデアをぶつけるのは、アイデアをより進化させる、またはそこから全く別の発想をしてもらうためのものであり、顧客の受容性を確認するものとは別です。この点を十分理解しなければなりません。
2.顧客にぶつける
初期の段階から顧客にアイデアをぶつける時には、革新的なアイデアほど理解が難しいので、そのぶつける媒体が顧客にとって分かりやすいほど、顧客から正しく価値ある反応を引出すことができます。
最初の段階でも、技術よりむしろその技術が製品になった場合にどのようなものになるのかを、具体的に示すことが有効です。従って単なる技術スペックだけでなく、その技術を使った製品ができるだけありありとイメージできるものを用意するのが良いでしょう。
モノがないので、2次元の情報になることが多いのですが、その場合仮想カタログを作ることも有効です。すでに製品が存在するがごとく、その製品の顧客にとってのメリットや、概観、仮仕様、その他訴求ポイントなどを、実際に本物の製品のごとくカタログとして示します。通常の営業活動であっても、最初はカタログで営業活動を開始することが多いわけで、初期段階ではこれだけでかなり有効です。
加えて、商品の形状、大きさ、重さなどが重要な製品は、それを示すだけで、具体性が相当高まります。最近は3Dプリンターを使って、このような初期のモックアップを低コストで作ることが可能になりました。
更に一歩進めて、特にB2C製品などの場合には、利用シーンなどをビデオで作成するなどをして示すことも大変有効です。この時のビデオ作成は、製品のPR用ではなく、その利用シーンが顧客に伝われば良いわけですから、専門のビデオ製作者ではなく、素人である製品開発の担当者が作ったものでまったくかまいません。
また、この顧客にぶつける媒体は、ゲートキーパーの...
3.ぶつけるものは進化する
このような活動を市場投入の直前まで継続していくと、毎回顧客にぶつけるものは、当然より進化しつつ完成品に近いものになっていき、実際に市場に投入する製品は、かなり市場のニーズが反映されたものとなり、成功の確率は高くなります。またプロセスの後半ではその製品に対する顧客の受容性を確認する目的となってきます。そこで、相当の投資をした後に製品の仕様を変更するという危険性も低くなります。
以上のやり方は、顧客のアイデアを効果的に収集する、ゲートキーパーに正しい評価を促す、製品開発に伴うリスクを低減するといった、複数の効果が期待できますので、是非他の潜在ニーズを探る活動と併用してください。