◆ 社内育成で立ちはだかるいくつかの壁
社内でデータ活用を推進しようということで、データサイエンス人財を社内に抱えようという動きがあります。しかし、社内でデータ活用を行おうとなった時、実業務の壁に当たることがあります。それは「実業務に時間を取られ、データ活用に時間をかけられない」というものです。今回は「実業務とデータサイエンス人財育成の狭間で」というお話しをします。
【目次】
1. データサイエンティストが足りない
(1)社内育成し増やすのが一番現実的
(2)片手間だと「時間がない問題」が起こる
(3)理想はデータサイエンス実践に100%投入
2. 専門部署を作る
(1)データサイエンス人財の育成
1.データサイエンティストが足りない
「社内にデータサイエンティストが足りない」ということで、当のデータサイエンティストを増やすための活動がなされます。データ分析者でも、分析官でも呼び方は何でも構いません。要は、実務でデータ分析・活用をする人、もしくは推進する人です。データサイエンティスト人財の増やし方は次のように幾つかあります。
- 新卒採用で増やす
- 中途採用で増やす
- 社内育成し増やす
(1)社内育成し増やすのが一番現実的
新卒採用で増やす方法は時間がかかるほか、中途採用は人財の奪い合いで難しいため、社内育成が一番手っ取り早いと思います。しかも、ある程度の社歴がある人であれば、社内事情や自社ビジネスの理解もあるため、データサイエンスの社内実践に向いています。そこで、多くの企業が考えるのが「データサイエンティストを社内育成し増やす」という道で一番現実的です。しかし、そこには意外な壁が待ち受けています。
(2)片手間だと「時間がない問題」が起こる
社内育成でデータサイエンティストを増やすとなった時、幾つか育成方法があります。一番簡単なのが、書籍を読んだり外部セミナーに参加したり、Kaggle(カグル)[1]のようなデータ分析のコンペに参加することです。ただ、それだけだと実務の力が付きませんので、実務経験を積む必要が出てきます。
しかし実業務に時間を取られ、データ活用に時間をかけられないという問題が起こることがあります。なぜそのようなことが起こるのかというと、実業務を残しつつ片手間で社内のデータサイエンスの実務を経験させよう、経験しようとするからです。
(3)理想はデータサイエンス実践に100%投入
今抱えている実業務が軽いのであれば、社内のデータサイエンスの実務が片手間であっても、問題ないのかもしれません。しかし私の見る限り、社内人財を育成しデータサイエンティストに育てようとする場合、その対象となる社内人財はエース級の人財が多いようです。エース級の人財は、今抱えている実業務の中核を担っているため、今抱えている実業務が軽いという状況になっていないのです。
そのような場合、確実に「データ活用に時間をかけられない」という状況に陥り、中途半端なデータサイエンス実践になります。理想は「データサイエンス実践に100%投入」することですが、現実は難しいようです。この問題に関しては、データサイエンス人財を「新卒採用で増やす」、「中途採用で増やす」やり方の方が軽いのです。理由は言うまでもなく、今抱えている実業務がないからです。
2. 専門部署を作る
このような問題の解決策の一つが、データ分析やデータサイエンスなどの専門部署を作るというものがあります。人事異動という強制力で、今抱えている実業務から強制的に切り離すことで、実践に100%投入できる状況が作りやすくなります。しかし別の壁が発生します。それは部署の壁です。データ分析・活用の現場と、それを支援する部署が異なるため、どうしても距離が生じてしまいます。
(1)データサイエンス人財の育成
データサイエンティストを増やすための活動がなされる場合、何かしら壁が立ちはだかります。結局のところ、どの壁が簡単に乗り越えられるかによって、やり方が企業や組織によって異なってくるでしょう。
例えば、新卒採用で増やすのか、中途採用で増やすのか、社内育成...
し増やすのか、育成するにも、データ分析・活用の現場で育成するのか、専門の部署を作り育成し全社推進するのか……などなど。
競合他社のやり方や、他社の成功事例をもとにしても上手くいきません。どのやり方が一番いいのか、その答えは、企業や組織の内部事情によります。データサイエンス人財育成の課題に対して、その答えは自社の中にあるということです。
次回に続きます。
【用語解説】
[1]Kaggle:Kaggleは企業や研究者がデータを投稿し、世界中の統計家やデータ分析家がその最適モデルを競い合う、予測モデリング及び分析手法関連プラットフォーム及びその運営会社。 モデル作成にクラウドソーシング手法が採用される理由としては、いかなる予測モデリング課題にも無数の戦略が適用可能であり、どの分析手法が最も効果的であるかを事前に把握することは不可能であることに拠る (引用:Wikipediaから)。