連載その16で『クリーン化4原則+監視の重要性』について述べました。ここでは、下図のクリーン化4原則について個別に解説しております。今回は、クリーン化4原則-8 「堆積(たいせき)させない」について解説します。
図1. クリーン化4原則
◆ クリーン化:床面に直置きしない~塵埃などが汚染原因に
ある工業系の会社で、事業の説明を受けたあと現場診断に行った時のことです。夕方現場に入ったところ、作業者が「今日、この製品はもう着手しないのでロッカーにしまいます」と言って、ロッカーの前の床に置いてから、扉を開けてしまっていました。
その時、立ち会っている技術系の管理職の方に「床に置くとゴミだらけになるので、床への直置きは避けたいです」と言いましたが、どうもあまりピンときていないようでした。そこで「試しに床から30㎝くらいずつの間隔で、天井までパーティクルを測ってみませんか」と提案し帰ってきました。
すると翌朝、その管理職の方から電話があり「昨日言われた通り、パーティクルを測定してみたところ、大変なことになっていました。作業している高さでは、まったく問題がなかったのが、床付近、天井付近は異常な数値でした」というのです。実際に自分たちでやってみて、その凄(すご)さを実感したことに価値があるのです。言われただけ、聞いただけでは、そのまま忘れ去られてしまうことが多いでしょう。
この異常な数値は、次の原因によります。
- 床付近は、パーティクルが浮遊、滞留していることに加え、粒径が大きな、あるいは重いものが床に落下している。それが乱流式クリーンルーム内では、気流、人の動作、行動や台車などの移動により、乱気流が起きる。そして床に堆積していたものが巻き上がり、粒径が大きいものの数値も多くなる。
- 天井付近でパーティクルが多いのは、室温、体温、照明、設備などの熱源により、上昇気流が発生し、軽いものは天井付近まで押し上げられ滞留する。
その会社では、床に製品を置いたので①の内容によって、比較的大きな粒径のゴミが巻き上がり付着しました。“ゴミだらけ”という表現はそのことを言いたかったのです。このようなデータから製品を置く高さを決めて、ルール化しておきましょう。もちろん容器内に保管しての話です。
◆ クリーン化:天井に滞留した浮遊塵の対策
「天井に滞留した浮遊塵(じん)はどのように除去すればよいでしょうか」という質問をよくいただきますが、これについての特効薬はありません。日ごろから清掃を繰り返す、継続することが重要です。地味ですが、地道にコツコツ継続することです。
長期連休で工場が停止した場合、休日明けに工場に入ると、設備や作業台、床の上に埃(ほこり)がたくさん堆積しています。見たことがある方もいると思います。こうなるとまず、一斉清掃から始めないと工場の稼働ができません。
これは、上昇気流によって強制的に持ち上げられたものが、工場が冷えることによって降ってきたものです。日ごろからきちんと清掃するということは、クリーンルーム内のゴミをいかに減らすかということです。パーティクルカウンターで定期的に測定している高さは、基本的には製品加工の高さです。その管理も重要ですが、クリーンルーム内の状態も知っておくことは大切です。
一方、層流式のクリーンルームは、天井から清浄度の高い空気が供給され、穴あきの床から気流が抜けていきます。本来浮遊するレベルのパーティクルであっても、その多くは床下に押し付...
層流式のクリーンルームの床下は、数メートルの空間があります。浮遊塵は数メートルは上がってくるようです。したがって清浄度を維持する必要のあるところ(工程)は、完全には止められないようです。もし止めたとか、空気の喚気回数を落とすなどする場合は、その期間のパーティクル推移を把握するなど慎重な対応が必要です。
今回は、クリーン化4原則の“堆積させない”について、床に物を置かないことを例に、クリーンルームの構造も含め説明しました。
次回に続きます。