前回の設備投資に活用したい事業再構築補助金 (その2)に続いて解説します。
1. 市場ニーズの証明と売上計画の根拠の示し方
1次募集の採択発表前に、令和3年度行政レビューの中で中小企業庁の担当者が「1次の申請書を数百読んだが、なぜそれだけの顧客が取れるのかという点が甘く、厳しく見ると8割落第しそう」とコメントしていました。結果的に1次募集の通常枠は7割落ちましたので、この点は、通常枠で採択を目指すための重要なポイントと言えます。「なぜそれだけの顧客が取れるのか」、すなわち「市場ニーズの証明と売上計画の根拠の示し方」について解説します。
【市場ニーズの証明と売上計画の根拠の示し方の手順】
- ① ターゲット顧客を具体的に示す
- ② 対象商品・サービスの市場ニーズを証明する
- ③ 自社の商圏でもそのニーズがあることを示す
- ④ ターゲット顧客にどのようにリーチするかを示す
- ➄ 売上計画の根拠を示す
① ターゲット顧客を具体的に示す
取引相手を選ぶ権利は100%顧客側にあります。よって、自社は「どのような顧客に選ばれたいか」を明確にして、自社を選んで欲しい顧客(ターゲット)向けにサービスを作り込む必要があります。
万人向けで特徴のないサービスを展開していると、顧客は自分の好みのサービスを展開している競合の方を選びます。図4参照。
図4.コンペチターとの差別化概念図
例えばリフォームであれば、当社の特徴である「高額だが〇〇」というリフォームを望む顧客は、どのような属性(家族構成、趣味など)を持つ人で、世帯収入はいくら程度なのか、どのようなライフスタイルを志向して、どのような住まいを欲しているのか、など自社がターゲットとする顧客を具体的に書きます。
② 対象商品・サービスの市場ニーズを証明する
新たに取り組む商品・サービスが、漠然としたニーズではなく、確かに市場ニーズがあるという証拠が求められます。リフォームであれば「コロナで増えた自宅時間を充実させるために、リフォームを考えている人の予算が増えている」というような、記事、統計、ニュースなど、何らかの客観的な資料を探して載せましょう。私が支援したリフォーム会社の採択事例では、住宅新聞の記事と、テレビでそのようなニュースを目にしたので、テレビ画面を写真に撮って載せました。
③ 自社の商圏でもそのニーズがあることを示す
そのニーズは自社の商圏でも同様に存在することを示します。私のリフォーム会社の支援事例では、地図情報システム(GIS)で自社商圏をマッピングし、例えば、ワンランク上のリフォームができる余裕がある世帯所得800万円以上の層がこの地域に、この程度あると載せました。
④ ターゲット顧客にどのようにリーチするかを示す
単にホームページに新商品・サービスを載せたり、看板を出すだけでは集客できません。既存顧客の紹介、SNS活用、他社とのアライアンス、広告、HP集客など、集客は合わせ技です。どのように集客するかを具体的に書きます。
➄ 売上計画の根拠を示す
売上計画の根拠の示し方として、国の中小企業政策の「経営革新計画」の例を挙げます。基本的に売上は単価×数量なので、それぞれの根拠と、チャネル別(直販、代理店、ネットなど)の売上計画を載せます。シンプルですが、これで充分です。
2. 売上計画の根拠を示す具体例
以下、東京都産業労働局「経営革新計画申請について~記載要領と支援策 ~」から引用します。