腐食とは、金属の破損・不具合の原因の1つです。腐食は大気中の酸素や水分、また各種化学物質などによって電気化学的に発生し、金属の薄肉化や割れなどの問題を引き起こします。
腐食反応は材料や環境によって様々に変化し、腐食の様子が見た目で分かる時と分かりにくい時があります。腐食は少しずつ進行していき、やがて大きな損傷が発生するので、腐食を防ぐめっきや塗装などの防食技術が大きな役割を果たしています。
金属腐食は身近な問題ですが、材料と環境、設計などの要因が複雑に関連しているため、腐食原因を調べ、適切な対策をとることは容易ではありません。
金属製品が時間の経過とともに腐食して元の安定な化合物に戻るのは全く自然な現象です。しかし、突発的な損傷を避けて高い信頼性を発揮させるためには、設計、製造およびメンテナンスにおいて、腐食予防策を確立しなければなりません。
今回は、このような背景を踏まえて、腐食の概要と、身の回りにある錆との関係について解説します。
1. 腐食とは
腐食とは金属材料の主要な不具合の一つで、腐食反応は金属材料の性質のなかでも電位差やイオン化傾向など、電気化学的性質が大きく影響する現象です。これには様々な種類があり、腐食生成物を生成すること、材料の一部または全体が溶出して板厚が薄くなることなどがあります。
この反応では電源はないので、素の金属板と周囲の環境により、電位差が発生、電子やイオンが移動しますが、電位差にはペアとなる物質が存在し、それは金属と別の金属、金属と水や酸素などの環境という場合があります。
2. 腐食と錆の関係
錆とは金属が腐食することで発生する金属酸化物のことを指しますが、錆は身の回りで様々なかたちで目にします。自転車などを外に放置しておくと金属の表面に錆がついたりします。金属の腐食現象は絵具の色にも関係しています。
錆びることは金属が大気にさらされていれば起こる現象ですが、交通機関や工業設備の腐食対策などには多大なコストがかかっています。ものづくりにおいても錆への対策は避けて通れません。
鉄の酸化物が錆です。鉄の酸化は表面に酸素と水があると起きます。表面が水で覆われることで鉄分子が一部イオン化し、酸素と水と反応することで錆になります。その成分は水和酸化鉄です。
もともと鉄は鉄鉱石を製鉄の工程で還元して作るため、水分と酸素が豊富にある大気中では鉄は酸化されていきますが、これが真空中なら錆は発生しません。
電子を放出しにくい金属は錆びにくいのですが、ほとんどの金属は電子を放出しやすいため錆びやすのです。電子の放出のしやすさの指標として標準酸化還元電位があります。イオン化傾向と似ていますが、水中に限らずに電子放出のしやすさを規定したものが標準酸化還元電位です。
3. 腐食を防ぐには
防錆は防食と同じ意味でも使われます。錆は腐食による生成物なので、防錆対策として防食処理を進めることにもなるわけです。防錆技術は、錆の発生メカニズムの解明や新しい耐食材料や耐候性材料の開発と共に進歩してきています。主要な考え方は環境制御、電気防食、耐食材料、被覆防食です。いずれも広範な技術分野で、幅広い技術が関わってきます。
4. 腐食の科学
腐食分野では、酸化反応をアノード反応、還元反応をカソード反応といいます。和訳すると陽極反応、陰極反応ですが、電池反応と混同する恐れがあるので、腐食反応ではそのままアノード反応、カソード反応と表記します。
実際の腐食反応におけるカソード反応は金属の還元反応ではなく、金属表面で水分や酸素が反応して水酸化物イオンを生成するような反応が行われます。
Fe(OH)2が腐食生成物となります。腐食反応ではこのように電子やイオンが反応するので電流が流れます。この腐食...
金属がアノード溶解する腐食では、酸素などが酸化剤、金属が還元剤となります。そして酸化剤は酸素以外にも水素などがあります。酸素は水中に溶存酸素として含まれています。水素は塩酸などの酸性溶液に含まれます。腐食反応の酸化剤が酸素の時は酸素消費型の腐食、水素の時は水素発生型の腐食といいます。
腐食環境下で電位が大きく離れている金属同士が接触し電子電導した時に起きる異種金属接触腐食は、条件によってはその速度が通常の腐食の数十倍以上にも及ぶことがあり、最も注意を要する腐食形態です。異種金属接触腐食は、水溶液環境だけでなく、自動車、航空機、電子機器など大気中で使用される機器でも大きな問題となっていて、その防止対策が必要とされています。