発電に関して、空想的な話、理論上の話であったとしても、いずれ活用可能な発電ユニットとなる可能性は十分あるものもあります。また、すでに実用化されている環境発電にも関わらず、注目を浴びることなく運用されているような発電装置も存在しています。
東京ビッグサイトに2タイプの床発電が導入されました。一つは歩行振動によって、無線送信をして、LINEにて色々な情報を取得できる機能です。もう一つは歩行の振動によりLEDフットライトを光らせるというものです。
いずれもその場で発電、その場で消費する機能となっていることが分かります。このように微小な振動で小さな電気を生み出すというのも振動発電の一つです。
今回は、このような背景を踏まえて振動発電の概要を解説します。
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1.振動発電とは
振動発電は、電気信号で音を発生させるスピーカーの原理を逆に活用した発電方式です。通行に伴う縦揺れ、モーターの定期的振動をエネルギーに変換する技術です。振動に加えて人間が押したり踏んだりする力を利用することも可能です。
振動発電とは圧電素子によって発電する仕組みですので、圧電素子の形状と性能が飛躍的に進化すれば水力・風力のエネルギーを振動発電へと変換することが可能です。1つの発電量としてはものすごく微量ですが、大量の圧電素子を配置できるので可能性を感じる仕組みです。高出力ではありませんが、これが実現できると降雨で発電するシステムも夢ではありません。
2.振動発電の実用例
振動発電の機能を使った技術開発が進んでいます。例えば、発電床は、歩くと矢印が点灯して進行方向を示す廊下などで実用化されています。発電床は、軽車両が移動する振動を拾う道路など屋内屋外問わずどこでも使うことができる振動発電です。
振動発電の振力電池を使用した電池レスリモコンの実用化も進んでいます。ボタンを押した力で、発電させるもので半永久的に使えます。乾電池は有害金属を含み、適切な処理をしなければ環境汚染につながるなど環境への負荷も大きいので、振動発電の振力電池には期待できます。発電効率を追求するのではありませんが、これでも環境負荷を低減出来ます。
3.振動発電の用途
MEMS振動発電は、MEMS可変容量素子とエレクトレット層を同一素子内に組み込み、エレクトレットに空気を介して対向する電極に生じる誘導電荷を利用しています。このため、エレクトレットとMEMSの設計において互いが干渉し、材料選択・設計・作製方法などに多くの制約がありました。
そこで個別に作製したMEMS可変容量素子とエレクトレット成膜基板を接続するだけで発電する新たな振動発電の原理が提案されて、実際の発電に成功しています。
MEMS可変容量素子は外部振動による慣性力で可動電極が動く構造となっています。その為、振動に応じてMEMS部の静電容量とエレクトレット層下部の静電容量のバランスが変化しますが、各静電容量に蓄積される電荷量が変化することから誘導電荷が生じ、その電荷を外部の負荷に誘導することで、発電が可能となります。この原理を利用することで、任意のMEMS構造に任意のエレクトレット材料を組み合わせることができます。
4.振動発電の未来...
前述のように小型の振動発電素子は、MEMS技術を利用しています。特にエレクトレット型MEMS振動発電素子は、低周波数で出力密度が大きいため、他の方式より環境振動を利用した発電に有利です。電池フリーで発電可能であるため、IoT端末向けの次世代電源を目指した研究が活発に行われています。
今後、エレクトレット型MEMS振動発電素子を無線IoT端末などの電源に利用するためには、さらなる発電性能の向上が必要ですが、MEMSとエレクトレットを物理的に切り離す新原理が考案され、振動発電の未来が実証実験されています。