2021年10月のFacebook社のMeta社への改称を契機に、デジタル仮想空間であるメタバースが再注目されています。モバイルインターネットの次のプラットフォームとして注目を集めつつあるメタバース。今回は、メタバースの概要を解説します。
1.メタバースとは
小説の中で生まれたメタバースという言葉。メタバースとは、インターネット上の仮想空間のことを指しています。具体的には、インターネット上の仮想空間でアバターなどを使って、人と人が現実世界のようにコミュニケーションをとったりする世界を指しています。
(1)Facebookがメタバースに本格参入
メタとは、超越した、高次のという意味を有する単語です。メタバースという言葉は、meta:超越という意味、universe:宇宙という意味のそれぞれの単語から作られた合成語で、作家のニール・スティーヴンスンのSF小説(1992年出版)で述べた仮想世界を指す単語です。
オンライン空間を共有したVR(Virtual Reality)・AR (Augmented Reality)・MR (Mixed Reality)技術を用いた世界のことです。(VR/AR/MRなどの技術はxRと総称されます)
報道の通り2021年10月28日付にて、Facebookの社名は「Meta」に変更となりました。社名変更に合わせて、メタバース事業に1.1兆円規模を投入していくという発表もありました。では、現時点で実現可能なメタバースの特徴を列挙します。
【メタバースの特徴】
- どこでも・いつでも・誰でも参加可能
- 現実世界との同期
- 固有のアバターが自分自身として参加
- 永続性がある仮想空間
- 参加者が独自コンテンツを生み出せる仮想空間
メタバースの特徴は、没入感のある仮想空間にいつでも誰でも参加でき、コミュニケーションや商取引などを行うことができる点です。資産の持ち込みができたり、現実世界とリンクして同じ時間軸を刻んでいたりと、別世界に移動したかのように過ごすことができる仮想空間をメタバースと呼びます。
今後は、ブロックチェーン技術によるNFTの誕生やxR技術の発展などによって、メタバースのさらなる進化が期待出来ます。
(2)すでに身近になっているメタバース
上記のようにメタバースは未来のことではありませんが、まだ活用は限定的であると言えます。例えばすでにメタバースが活用されているゲームの世界ではゲームの要素と、アバターを利用したコミュニケーションが実装されており、仲間を集めたり、アイテムを売買したりする仮想空間が形成されています。ここではすでに一部で現実世界と同じことが実現されています。オンラインゲームの中での友達作り、仮想空間の中でも立派に社会が形成されています。
また、メタバースの草分けともいえる米国リンデンラボ(Linden Lab) 社が開発している Second Life (セカンドライフ)というメタバースは2003年から提供されており、2022年現在継続してサービス提供されている。ゲーム業界ではマイクロソフト Minecraft(マインクラフト)やNintendoあつまれどうぶつの森(あつ森)などがメタバースを取り入れている。
2.メタバースと日常世界
メタバースは、ゲームの延長上で語られる事が多いですが、今後はゲームだけではなくコミュニケーションツールの一つとして、日常世界と共存することが予想されます。具体的に言えば、2次元的コミュニケーションツールが発展して、3次元的コミュニケーションツール(メタバース)化します。メタバース上で雑談やビジネスを進めるといったことが日常的になるのです。
メタバースと3次元ツールを利用したシミュレーションの違いは、アバター( avatar:化身、具現などの意味を持つ英単語。IT分野では利用者のシステム内での分身として画面上に登場するキャラクターなど) の有無です。メタバースにおいては、個人のアバターが3次元仮想空間で、体験したり検証したりすることが出来ることが醍醐味です。メタバースはもはやシミュレーションではなくコミュニケーションツールなのです。
このような世界は医療分野でも利用されます。それはオンライン診療での活用で、アバター同士が仮想空間で交流すれば、患者側は自分の症状を的確に伝えられ、その処置に関してはアバターを使いながらその体で正確な手順が教えられます。メタバースが医療を変えていくことは間違いないでしょう。
3.メタバースの具体的な動き
前述のようにメタバースは、3次元仮想空間でユーザーが交流することの出来る世界ですが、仮想空間では、ビジネスの交流も盛んになり、仮想空間ならではの新しいサービスが誕生するのです。
Facebookはメタバースのバーチャル会議室のオープンデータ版を一般公開しており、これはフェイスブック傘下のOculusが提供するOculus Quest2を使用することで誰もが利用する事が可能です。自分のアバターと、他のアバター同士で仮想空間に集まり仕事をすることが出来るのです。そこでは、MR技術によって、キーボードを持ち込んで、入力することも可能です。メタバース上で資料を他のユーザーと共有することも出来ます。
リモートワークの中での一体感の欠如は、メタバース化によってクリア出来るかもしれません。メタバース上で部屋に集まり、アイデアを共有し、ライブ感を持ちながらアイデアを膨らませることが当たり前になるのです。
4.メタバースの可能性
メタバースは、個人個人に大きなチャンスをもたらす可能性があります。田舎に家を持って働きたい人や過疎地域に住んでいる人々にも平等な機会やビジネスチャンスをメタバースは与える可能性があります。インターネットを通じて他...
リアルな事業を、仮想空間で新規事業として展開する事例も見られます。バーチャルイベント・バーチャル展示会・バーチャル観光などです。リアルではできない仮想空間ならではの体験提供がポイントです。既に、ある自動車会社は、車両の試乗が仮想空間内できるサービスを展開しています。高単価商品は、顧客の体験が成約率に直結します。
メタバースは各自が同じ仮想空間にいるという感覚が持てるのが特徴です。各自が空間的な感覚を体感することができ、あなたが話すとき、聞き手は話し手のいる方向から声が聞こえます。さまざまにテレポートして他人と一緒にいることができる、超具体化された感覚です。
そして社会実装が進んでいるNFT(NonFungible Token)をメタバースで活用することで、唯一無二のデジタルアイテムの保証が可能となることから、今後の活用が予想されています。NFTにより、仮想空間内で利用するデジタルアイテムの売買、コンテンツの利用、流通が可能となることで、今後はメタバースがより活性化していくことでしょう。