前回の「設備の周囲を詳細に見ること」に続いて、今回は、「設備診断の手順—3、 設備内部の詳細診断」を解説します。
設備の中は製品を加工する、製品に最も近い場所です。つまり、品質影響が大きいことを認識し、良く観察することが大切です。“良く”ということは、多面的に観察するということです。
【観察のポイント】五感を総動員する。
①動作不良、異音、異臭、熱などの不具合があれば、設備からのSOSと捉え、原因を調べる。
これらは、品質、安全、設備停止など様々な問題に繋がる可能性がある。
②振動部、摺動部発塵
振動部、摺動部は発塵するので良く観察することが必要。また近辺に発塵粉が確認された場合は、発生源となっている部位が劣化していることが考えられる。
例えば、排気管、配管の擦れがあれば、穴あきが発生しているかも知れない。設備内部に気流があれば、飛散していることも考えられる。これらが製品品質に影響を与える可能性もあるので、詳細な観察により発生源を突き止めることと、その影響を推測し、そのものの対策、改善だけでなく、進行した場合の影響を考慮し予防措置をする。先を考えるということが大切です。
③メンテナンス面の着眼点
上記と同じ着眼点ですが、それに加え、設備内に部品や結束バンドなどが落ちていないかにも着眼しましょう。
ネジや座金、結束バンドなどの落下があれば、どのような作業をしたのか、その後片付けはどのようにしているのかを確認する。それらは、設備の故障に繋がるからです。折角修理したのに、片づけ方が悪く再び故障すると、修理時間、費用などが二重になる。製品に対しては、生産数やコストに影響するので価値ある作業に心がけましょう。
現場確認中にメンテナンス作業をしているのを見たら、その動作、行動や上記の不具合を確認する。生きた教材です。
不自然な行動などは、安全面からも着眼する。重量物を持ち上げる時は、手先だけでなく、腰を深く入れているかなど様々な観点で見ましょう。恐らく労働安全衛生法に準ずる内容を含め、自社の安全作業についての標準類があるはずです。労働災害が発生しないよう、未然防止努めたい。
【事例の紹介】
- 設備修理のため、電源コードを束ねている結束バンドを切ったが、除去しなかった。修理後、可動部が結束バンドの切れ端に乗り上げ、設備が停止した。
- 設備内にネジが落下、電装系に入り込みショートした。
- ネジや座金に可動部が乗り上げたとか、可動時に挟まり設備が停止、修理に長時間を要した。
- 設備をカバーで覆っていたが、その内面に真空、圧空などの配管、配線が固定されていた。
配線や配管の固定は、結束バンドと粘着物の組み合わせ(マウントベースと言われるもの)で、カバー内面に固定することもある。取付時は可動部に接触しないよう完璧な固定だったが、時間とともに粘着力が低下、剝れ、配線、配管類が垂れ下がり、可動部に擦れて発...
長年現場診断をしていると、このような発見ができるようになる。また推測もできるようになる。もちろん完璧ではないが、発見の確率が向上します。
現場は生き物です。毎日違うのです。毎日巡回、観察することで、予測する見方ができるようになる。偶然の発見ではなく、日々の積み重ねで着眼点が養成され、蓄積されていくのです。
次回に続きます。