今回は、安全関係の事例を前回に続けて紹介します。
この写真は、あるところの現場診断を実施した時のものです。設備前面にあるチューブをカバー内壁に固定しています。この場合、結束バンドの尻尾は奥の方に向いていますが、もし手前側に向いていたとしたら、目を突くかも知れません。
また、固定した部分が剝れると、向きが変わるかも知れません。たったこれだけのことと思うかも知れませんが、剝れた場合は、安全の問題の他、作業がやり難いと言うことも起きるでしょう。作業内容や製造している製品にもよりますが、剝れたチューブに引っ掛かり、製品を落下させてしまうかも知れません。
まず、現場を良き巡回し、異常に気付く力を養うことです。そして、このような不具合を発見したら、このままにしておいたらどうなるか、先を考え、対応しておきましょう。
ところで、結束バンドにも耐用年数があります。あるメーカーの方の話では、室内で最大5年、屋外では最大3年だそうです。自然に劣化するので、一度取り付けたら、そのままで良いのではないです。
結束バンドも劣化するものだと認識し、現場のパトロールでもチェック項目に含めておきましょう。
カバー内部の上の方にチューブが固定してあり、それが自然劣化で切れて、垂れ下がった。そしてその下の可動部に接触し、設備が停止したという例もあります。こうなると、発見が遅れれば、設備の損傷、生産停止など様々なトラブルに繋がります。
もう一つの例です。
この写真は、元々クリーンルームではなかったところを、クリーンルームにした例です。天井には、以前使用していた配管類が残っていたので、それを活用し、色々なものを結束バンドで固定してある例です。結束バンドの尻尾はきちんと切り取ってあるので、そのことは意識されています。
この工場ではないのですが、このように天井に固定していたものが結束バンドが劣化して切れてしまい、事故が起きた例を紹介します。
- 結束バンドが切れ、固定物が落下、設備のカバーが破損した。
- 小型のものが作業者の肩に落下して、けがをした。
- 清掃する予定があり、洗剤をバケツに入れて準備しておいた。そのバケツ内に固定物が落下し、防塵衣に洗剤が跳ね返った。
作業者は足元を気にしながら通行するので、天井に異常があっても気が付くことはほとんどないと思った方が良いでしょう。
結束バンドは、高いところへの重量物の固定に使用しないこと(本来の目的以外に使用しない)ことを指導して下さい。そして定期的なパトロールのチェック項目の中に含めておきましょう。
このように、身の回りにはヒヤリ、ハットや微小災害の元がたくさんあります。あらゆる見方をして、ひとつずつ、確実に...
何もしないで、問題が起きたら、「そこまで気が付かなかった、考えなかった。想定外です。」と言って済ましてしまうのか、それとも、現場を良く見て、事前に事故、災害の芽を摘んでいくという予防ができるのかで、現場の力に差は出ます。ものづくりの基盤強化と言っても、このような地道な活動の積み重ねで強化される部分もあります。
次回に続きます。