【この連載の前回:クリーン化について(その92)ノンクリーンルーム化についてへのリンク】
日本列島はどこで地震が起きてもおかしくありません。今回は、クリーンルーム内の地震対策の一部を紹介します。
写真1.クリーンルームの地震対策1
これは、半導体の工場の中での地震対策の一つです。床は全面穴あきです。つまり層流方式のクリーンルームです。床の開口面積はいくつかの種類があります。それと、この写真のように1枚の床を4分割し、開口の向きは隣同士変えて設置しています。気流が平均して床下に落ちる工夫です。
この地震対策の例は、製品棚をワイヤーで床に固定しています。これでは大きな地震が来たときには破損してしまうかも知れません。でも、地震は頻繁にあるので、程度の低いものはこれでも対応できます。何もしないよりは良いでしょう。
この写真を見ると、床ごと持ち上がってしまうのではないか、と思われる方もいるかも知れません。床に固定していますが、床も建物本体にしっかり固定されています。
私が山形県の工場に赴任する前ですが、東北で大きな地震がありました。岩手県が最も大きな被害が出ました。半導体製造メーカーでも工場が大きな被害にあって、操業できないところも出ました。
山形県の工場の保全メンバーの一部も支援に行きました。その人たちの話を聞くと、何トンと言う重量の設備が動いてしまい、固定していた太いボルトも引きちぎれていたと言っていました。
私の赴任中は、中越地震があり、多くの自動車部品の工場も操業が止まりましたが、自動車メーカーからの応援で立ち直ったところもありました。そして、3.11にも遭遇しました。地震は忘れない頃にやってくるのです。日常的に少しでも対策していくことが重要です。
過去から学び、起きてしまったら対応するという後手ではなく、先手を打ちましょう。もうその経験は十分してきたはずですから。
写真2.クリーンルームの地震対策2
写真の左を見て下さい。左の設備の付属品を設備に固定した例です。地震が発生し、もしこの付属品が倒れたとします。この床には、テープが貼ってあります。これは安全通路です。ここを避難するのですが、地震発生時、停電になった場合、逃げる時にこの付属品につまづくかも知れません。また後続の人もその上に折り重なるかも知れません。必ず通路を確保しておく対策が必要です。安全通路は、労働安全衛生法でルールが決まっています。それに沿った考え方です。
室内が暗くなってしまうと、どちらへ逃げれば良いのかわからなくなってしまい、パニックになってしまいます。ここはイエロータイプのクリーンルームですが、床に貼ってあるテープも薄い黄色です。これは、蛍光テープです。天井灯が消えてしまっても、しばらくは光っているので、それを頼りに避難するわけです。暗くなってしまうと、どちらへ逃げれば良いのかわからなくなってしまい、パニックになってしまうのでそれも避けたいわけです。
次に、右の写真です。台車を固定してあります。台車の周囲がステンレスのため、周囲が映ってしまっていて見難いですが、その車輪の固定です。地震があると、クリーンルームの中のもの、特に車輪があるものは激しく動きます。ストッパーがあっても、余り効きません。それで床に固定してあるのです。
色々なものが動いてしまうと、避難の障害...
余談ですが、地震が発生すると、テレビ局内の揺れ状況が映ることが多いです。あの時、高いところに載せてあるものや、乱雑に積まれた書類などが目に付きます。また、大学の教授や専門家へのインタビューの画像を見ても、背後にうず高く積まれた書類を見かけます。あれらは落下しないのか、崩れないのかと心配になります。クリーンルームだけでなく、色々なところの問題に気づく人が増えればいいと思っています。
次回に続きます。