サプライチェーンは、生産工程での連鎖と連鎖の間にストックポイントがある業務連鎖といえます。ストックポイントを少なくさせるには業務が統合されていればよいことになります。ストックポイントをカウントすると、供給業務1・2・3と三つあれば1と2の間、2と3の間の2か所になります。原則的に9か所のストックポイントが業務の10連鎖にあります。下図1のように、4か所のストックポイントを1か所に削減しようとすれば5連鎖を2連鎖に統合すればよいのです。複数工程の統合です。
図1.サプライチェーンの統合とストックポイントの削減
自社に連鎖数とストックポイントがどのくらいあって、在庫として滞留している時間はどのくらいあるのかを、資材の調達から製品の顧客への出荷まで、販売という供給業務のオペレーションを含めて分析してみる必要があります。製品設計に携わっている技術者にも生産技術者にも、サプライチェーンのダイナミックスを研究してみる価値は充分あります(拙著参考図書)。
会計専門家だけの話ではなく、キャッシュフローは自分達が設計したモノの流速のことだと認識する必要があります。サプライチェーン全体の在庫水準に対してどれだけ影響があるのか、完成品メーカーは上流をたどって供給連鎖数とストックポイントについて分析してみる必要があります。
これで問題がなかったから、今までこうだったから、それで良いとは言えません。画期的なプラクティス(技)をサプライチェーンマネジメントの視点で開発する企業の餌食になるかもしれないからです。他に先駆けて新しいプラクティスを開発する努力によって、逆に市場シェアを一気に上げることができるかもしれません。
「販売工程」連鎖上の在庫のマネジメントは、完成品のセットメーカーにとって運転資金の制約に大きく効いてくることでしょう。在庫を減らしリードタイムを短縮するには、下流のデマンドに上流の生産工程も販売工程もサプライを同期化することです。連鎖数とストックポイントを減らすことを、販売にもインターネットを活用することで実現すれば競争力向上につながります。
意識するしないにかかわらずビジネスの成長を決めているものは、実はこの在庫が運転資金の制約となっていることが多いのです。設計・資材の手配と組立のプロジェクトマネジメントにおいて、工期の長いプラント・船舶・飛行機などの重工業などでは、工期の長さ=リードタイムは仕掛在庫の回転率に比例します。
キャッシュが減ると在庫が増えている。キャッシュが増えると在庫が減っている。在庫を金利コストとみる部分最適の発想と、特に日本の銀行による間接金融制度の発達(?)が、特に大企業で、この単純なことを見えなくしています。この点での意識改革は、大手総合製造業のカンパニー制度への再編が進んでいる企業で進んでいます。キャッシュの流れの可視性を上げ、開発・生産から販売までのサプライチェーンで在庫を削...
作る人と、売る人がもたれ合い、中間のグレーゾーンにある在庫の責任が曖昧になるような、生産も販売も多くの製品ミックスで収益貢献する仕掛けを作っていると、ストックポイントが限りなく増えていきます。この在庫の持つ意味合いを現場の技術者も設計技術者も理解するかどうかで、その企業の将来が左右されかねない時代になりました。
〔参考文献〕
「図解100語でわかるサプライチェーンマネジメント」(今岡善次郎著、工業調査会)
「サプライチェーンマネジメント」(今岡善次郎著、工業調査会)