行動の重要性 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その147)

更新日

投稿日

技術マネジメント

 

前回は「思考の頻度を高める2つの重要要素」をあげました。今回から、まず一つ目の「行動を増やすことで思考を促進する機会を拡大する」を解説していきたいと思います。行動が思考を促進する3つの要因の内の「行動を起こすことで、様々な情報や刺激を受け思考が促される」を取り上げます。

 

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その146)へのリンク】

 

1.行動を起こすことで得られるのは、情報や経験だけでなく、そのコンテキストや新たな感覚・感情や充実感

行動するともちろん新しい情報や経験が得られるのですが、それと同等もしくそれ以上の行動の価値は、その行動で直面した事物のコンテキスト(背景・前後関係)に関する情報の五感を通しての獲得、さらには、その行動が生み出す新な感覚や感情、さらに加えて、行動を起こすことでそれらを得ることができたという充実感ではないかと思います。

 

(1)コンテキストと関連情報

行動を起こすことで、対象の事物と直接対峙するわけで、それにより、得られた情報の背景にあるそれと関連する様々な情報が、五感を通じで同時に得られます。それら背景にあるそれと関連する様々な情報を構造化することで、隣接可能性に基づく連想が促進され、最終的にイノベーションを起こす可能性が高まります。

 

(2)新な感覚や感情-ネガティブな感情もおおいに活かす

行動の結果得られるのは、コンテキストに関する情報だけではありません。それらから、新な感覚や感情という反応を持つことができます。新な感覚や感情とは、共感、好意、いいな、面白い、きもちいい、嫌悪、憤慨、怒り、失望、疑問、やらねばという気持ち、などです。

 

もちろん共感や好意などポジティブな感覚や感情は、次の行動をおおいに促進するものですが、ネガティブな嫌悪、憤慨や失望も同様に、もしくはそれ以上に次の行動の大きなきっかけになります。「怒りにかられて」という言葉はあまり良いニュアンスはありませんが、次の行動のドライブフォースとして怒りがあるということは多いものです。

 

ネガティブなドライブフォースがポジティブな行動を生み出すのであれば、そのようなネガティブなドライブフォースは望ましいもので、ネガティブな感情に結び付く行動であっても、おおいに価値があると考えて良いと思います。つまり、ネガティブな感覚や感情も、大きな視点に立つと大歓迎ということです。

 

ここで一つだけ注意点があります。それは感情の中の「後悔」というネガティブな感情は、次の行動を阻害しますので、「後悔は絶対にしない」という姿勢は、必要です。

 

(3)行動を起こしたことでの充実感

このようにネガティブな感覚や感情を引き起こす行動でも、それを前向きにとらえられるようになると、行動の価値はおおいに高まります。また、行動を阻害するハードル(心理的、時間的、コスト的)を乗り越えて行動することで成果が得られると、行動を起こしたことでの充実感が高まります。また、行動を起こすことのハードルが高い程、行動を起こした充実感は拡大するものです。

 

2.次の行動をしたいという欲求が生まれる

そのため、高いハードルを越えて行動を起こしたことを、自分自身もそしてまわりもほめるという習慣を作り、そしてその結果をネガティブなものであっても肯定的に捉えることで、行動は強化されることになります。そこで、自分の行動やその結果を他の人たちに情報発信することで...

技術マネジメント

 

前回は「思考の頻度を高める2つの重要要素」をあげました。今回から、まず一つ目の「行動を増やすことで思考を促進する機会を拡大する」を解説していきたいと思います。行動が思考を促進する3つの要因の内の「行動を起こすことで、様々な情報や刺激を受け思考が促される」を取り上げます。

 

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その146)へのリンク】

 

1.行動を起こすことで得られるのは、情報や経験だけでなく、そのコンテキストや新たな感覚・感情や充実感

行動するともちろん新しい情報や経験が得られるのですが、それと同等もしくそれ以上の行動の価値は、その行動で直面した事物のコンテキスト(背景・前後関係)に関する情報の五感を通しての獲得、さらには、その行動が生み出す新な感覚や感情、さらに加えて、行動を起こすことでそれらを得ることができたという充実感ではないかと思います。

 

(1)コンテキストと関連情報

行動を起こすことで、対象の事物と直接対峙するわけで、それにより、得られた情報の背景にあるそれと関連する様々な情報が、五感を通じで同時に得られます。それら背景にあるそれと関連する様々な情報を構造化することで、隣接可能性に基づく連想が促進され、最終的にイノベーションを起こす可能性が高まります。

 

(2)新な感覚や感情-ネガティブな感情もおおいに活かす

行動の結果得られるのは、コンテキストに関する情報だけではありません。それらから、新な感覚や感情という反応を持つことができます。新な感覚や感情とは、共感、好意、いいな、面白い、きもちいい、嫌悪、憤慨、怒り、失望、疑問、やらねばという気持ち、などです。

 

もちろん共感や好意などポジティブな感覚や感情は、次の行動をおおいに促進するものですが、ネガティブな嫌悪、憤慨や失望も同様に、もしくはそれ以上に次の行動の大きなきっかけになります。「怒りにかられて」という言葉はあまり良いニュアンスはありませんが、次の行動のドライブフォースとして怒りがあるということは多いものです。

 

ネガティブなドライブフォースがポジティブな行動を生み出すのであれば、そのようなネガティブなドライブフォースは望ましいもので、ネガティブな感情に結び付く行動であっても、おおいに価値があると考えて良いと思います。つまり、ネガティブな感覚や感情も、大きな視点に立つと大歓迎ということです。

 

ここで一つだけ注意点があります。それは感情の中の「後悔」というネガティブな感情は、次の行動を阻害しますので、「後悔は絶対にしない」という姿勢は、必要です。

 

(3)行動を起こしたことでの充実感

このようにネガティブな感覚や感情を引き起こす行動でも、それを前向きにとらえられるようになると、行動の価値はおおいに高まります。また、行動を阻害するハードル(心理的、時間的、コスト的)を乗り越えて行動することで成果が得られると、行動を起こしたことでの充実感が高まります。また、行動を起こすことのハードルが高い程、行動を起こした充実感は拡大するものです。

 

2.次の行動をしたいという欲求が生まれる

そのため、高いハードルを越えて行動を起こしたことを、自分自身もそしてまわりもほめるという習慣を作り、そしてその結果をネガティブなものであっても肯定的に捉えることで、行動は強化されることになります。そこで、自分の行動やその結果を他の人たちに情報発信することで、他の人が知るところになり賞賛される機会を高め(もちろん批判される、または無視されることもありますが、他人は知らないとほめないという事実があります)、また自分自身がそのようなことを言葉で伝えることで、その行動の価値が反芻され、さらにその行動を強化するということがあるのではないかと思います。

 

世の中には行動的な人が少なからずいますが、彼らの言動から、彼らがこのような好循環を回していることが推察されます。

 

次回に続きます。

 

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
関係性の種類、協調とは 普通の組織をイノベーティブにする処方箋(その98)

   現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。前回は「対立」について考えました。「対立」があればその...

   現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。前回は「対立」について考えました。「対立」があればその...


技術はリスト化しておく 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その11)

        「技術戦略」および開発テーマを決定するための準備において、コア技術の決定が必要です。 &n...

        「技術戦略」および開発テーマを決定するための準備において、コア技術の決定が必要です。 &n...


企業においてオープン・イノベーションを実現するには  研究テーマの多様な情報源(その26)

1.『価値づくり』経営と表裏一体の関係にある「オープン・イノベーション」    前回のその25に続いて解説します。オープン・イノベーションは...

1.『価値づくり』経営と表裏一体の関係にある「オープン・イノベーション」    前回のその25に続いて解説します。オープン・イノベーションは...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
追求するのは擦り合わせ能力を活かすマネジメント(その3)

 前回のその2に続いて解説します。図15は製品開発(設計)における調整の仕組みを詳細化したものです。「可視化」「分析」「視点切り替え」3つの要素から成り立...

 前回のその2に続いて解説します。図15は製品開発(設計)における調整の仕組みを詳細化したものです。「可視化」「分析」「視点切り替え」3つの要素から成り立...


設計部門と組織政治の影響(その1)

 これまで数回にわたって、設計部門における仕組み構築の考え方や手順を解説してきました。仕組み構築のためのシステム化計画作成は、頂上を目指す登山ルートを設計...

 これまで数回にわたって、設計部門における仕組み構築の考え方や手順を解説してきました。仕組み構築のためのシステム化計画作成は、頂上を目指す登山ルートを設計...


プリウスの開発事例から学ぶ画期的挑戦

 トヨタ・プリウスが1997年に世界初の量産ハイブリッド車として市場に出た時は大きな衝撃を社会にもたらしました。2009年に20万8876台を売り上げ...

 トヨタ・プリウスが1997年に世界初の量産ハイブリッド車として市場に出た時は大きな衝撃を社会にもたらしました。2009年に20万8876台を売り上げ...