◆現場に足を運ぶことの大切さ
良く、三現主義と言います。現場に行って、現物はどうか、現実はどうか、を確認することです。何か問題があると、現場に足を運び、その視点で見ると、案外不具合の原因などが見えてくることがあります。それに対し改善、対策を実施すると言うことです。でも、その時だけ現場に行っても、いつもと違うという判断、感触はないでしょう。
また、原因究明の場合、特性要因図(要因、原因と結果との関係を図にしたもの)を作成し、究明していくこともあると思います。これも優秀な人ほど、机上で済ませてしまう場合があります。この場合は、おそらくこうだろうと言う推測までできてしまうので、すっきりした図になるでしょう。
でも、現場で対象を見ながら特性要因図を作成すると、もっと複雑な、そしてちがうものが見えてくることがあります。現場とは、その場に現れると書くように、現場に行ってみないとわからないことがあります。そして、推測で作成した特性要因図で対策を取ってしまうと、間違った対策になったり効果、成果が得られないことがあります。
◆やろうと思っているけど できないことばかりの克服【連載記事紹介】
さて、経営者や管理、監督者の皆さんはどうでしょうか。
あまり現場に近づかないと、現場との間に距離が出ます。対応の仕方では、それが溝になるかも知れません。部下の報告だけで、一般作業者の評価がされ、頑張っていたとしてもきちんと評価されない場合があります。一方で、現場は生き物です。日々違う顔を見せます。変化しているのです。あまり入らないと、その変化が理解できないのかも知れません。
現場の人たちは、自分の働く姿を見て欲しいと思っているでしょう。それをしないで、たまに現場に入っても、煙たがられる存在になってしまうかも知れません。
頻繁に入る管理、監督者は現場の作業者にも気軽に話しかけられる関係になります。また、作業者も働く姿を見てもらうことや声を掛けてもらうことで、やり甲斐が出てきます。このようなことから、本音やいろいろな情報も出てきます。現場にアンテナが沢山できると言うことです。ところがこんなことがありました。
あるところから、現場診断、指導の依頼があり、その会社に行ったところ、実際に立ち会ってくれたのは、クリーン化担当だけで、他には誰もいませんでした。事前に、経営者、管理監督者のいずれかの方に立ち会ってもらいたいとお願いしてありましたが、その通りには行きませんでした。私の思いは、不具合を会社側のメンバーに見てもらいたかったのです。
最後にまとめ、報告の時間があり、その時だけ管理、監督者が顔を出すのです。そして「ウチの工場はどうでした?」と聞くので、不具合を幾つか示しました。すると、その管理職の方は「そんなはずはない!」と言うのです。「でもあったんですよ」と言うと、急に怒りだし、クリーン化担当に、君、本当かねと言うんです。言うというより、吊し上げるように感じました。
そのクリーン化担当にしてみると、今怒っているのは、自分の上司、その上の上司ですから、自分の立場が危うくなります。そこで「いえ、それほどでもないです」とことばを濁してしまうのです。するとその管理職の方は「そうだよな、ウチはいつも厳しく言っているものなあ」と言うんです。
この様子を見ると、管理、監督者の方は言っているだけで、現場に入っていないだろうということがわかります。また、クリーン化担当は評価されないのだろうと思います。そしてこの担当から逃げたいと思うでしょう。これでは、クリーン化担当や作業者も育たないでしょう。
経営者や管理、監督者も現場が汗水かいて得た利益が、他の部門や自分たちにも配賦されるのです。自分の会社なのに、実情、足下を見ていないのです。指示、命令をしただけで、成果が出るわけではありませ...
今は少子化の時代です。人は材料ではなく財産として育てる。つまり人材ではなく、人財として育て、将来にわたって永続する企業を目指したいものです。人を入れ替えると言う繰り返しでは、将来はその“人”もいないのです。社員も継続して貢献してもらえるようにしたいですね。
次回に続きます。