ポリカーボネートとは?強度や加工性・難燃性は?アクリルとの違いも解説

 

 

ポリカーボネートは透明性が高く丈夫なプラスチック材料で、日用品をはじめ各種工業製品に幅広く使われており、私たちの生活にも身近なプラスチックのひとつです。
ポリカーボネートのメリット・デメリットなどの特徴やさまざまな用途、同じく透明樹脂として広く使われているアクリルとの比較などについて解説します。

1. ポリカーボネートとは

ポリカーボネート(polycarbonate)は熱可塑性プラスチックの一種で、5大汎用エンジニアリングプラスチック(エンプラ)の一角を占める樹脂材料です。省略してポリカまたはPCとも呼ばれます。
高い透明性や耐衝撃性をはじめ多くの特徴を持っており、アクリルと並んで「有機ガラス」と呼ばれることもあります。それらの優れた特性を生かして、私たちの身の回りの製品に広く利用されています。

ポリカーボネートの歴史・由来

ポリカーボネートは1898年にドイツのミュンヘン大学で発見された物質です。モノマー単位同士の接合部がすべてカーボネート基で構成される化学構造を持っており、このことからポリカーボネートの名が付けられました。
商品化は1958年に西ドイツ(当時)のバイエル社によって行われたのが最初で、最初はフィルムとして、翌年には成形材料として市販されました。日本でも1960年頃から生産が開始されて、現在では国内で年間30万トン近くが生産されています。

2. ポリカーボネートとアクリルの違い

ポリカーボネートと同様に透明性が高く、幅広い用途に使われているプラスチック材料としてアクリルがあります。透明度はアクリルのほうがやや優れていますが、ここではそれ以外の特性を比較します。

加工性の違い

どちらも加工性が高い素材ですが、特にアクリルは切削やカット、穴あけ、曲げといった加工がしやすく接着も容易な素材であるため、削り出し加工品や、板材を加工してケースなどによく使われます。ポリカーボネートはアクリルと比べると、このような細かな加工や接着には向きません。ただしポリカーボネートは弾力性があるため、加工時にも割れにくいという利点があります。

衝撃耐性の違い

ポリカーボネートは耐衝撃性がアクリルの約50倍ともいわれ、数あるプラスチックの中でも非常に割れにくい材料です。そのため防弾ガラスや保護帽、航空機の窓のように強い衝撃に耐える必要がある用途に多く使われます。また、かつて「象が踏んでも壊れない」という宣伝で人気となった筆入れも、ポリカーボネートの耐衝撃性や機械的強度の高さを活かした製品でした。

難燃性・耐熱性の違い

ポリカーボネートは燃えにくく、また着火しても燃え広がらず火元が離れれば自然に消火する自己消火性を備えています。一方アクリルは可燃性です。連続耐熱温度もポリカーボネートのほうが高いので、特に火災に対する安全性が重視される建材としてはポリカーボネートのほうがより適しています。

コストの違い

ポリカーボネートはよく使われる汎用プラスチックの中では比較的高価な材料で、アクリルのほうが低いコストで調達できます。そのため上に記したようなポリカーボネートの長所を必要としない製品には、アクリルを使うほうがよい場合もあります。

3. ポリカーボネートのメリット

耐衝撃性が高い

既に述べたように、衝撃に強いことはポリカーボネートの最大の特徴です。アクリルの約50倍、一般的なガラスの200倍以上と、プラスチックの中でも最も高い耐衝撃性を持っており、衝突や落下...

、飛来物などによる破損に強い材料です。

透明性が高い

可視光線透過率80~90%と、アクリルには劣るもののガラスに近い透明性があり、光学用途や視認性が求められる用途にも広く用いられています。

難燃性・自己消火性がある

これも既に述べたように燃えにくく、また着火しても燃え広がらず火元が離れれば自然に消火する自己消火性を備えています。

成形加工性が高い

切削加工に向いているのに加え、射出成形、押出成形、真空成形、ブロー成形など各種のプラスチック成形方法で加工できます。近年では3Dプリンター出力にも対応しています。また成形収縮率や吸水率が低いので、寸法精度や寸法安定性にも優れています。

耐候性が高い

耐候性が優れており、他のプラスチックと比べて紫外線や湿度によって劣化しにくい材料です。またプラスチックとしては比較的使用可能温度が広く、-40℃の低温から125℃の高温までの幅広い温度に耐えることができます。屋外での使用にも適した材料ということができます。

重さが軽い

ポリカーボネートはプラスチックの中でも非常に軽量で、水に浮くほどの軽さを備えています。

4. ポリカーボネートのデメリット

耐薬品性が低い

薬品に弱いというデメリットを持っています。特に応力がかかった状態で有機溶剤や界面活性剤などの薬品に触れたままにすると割れや変形を起こす応力腐食性があります。アルカリ性の洗剤やガラスコーティング材などは要注意です。また割れや変形には至らなくても、汚れや雨水などが付いたまま長時間放置すると跡が取れなくなるので、特に屋外の用途ではこまめに清掃する必要があります。

傷が付きやすい

表面の硬度が低く鉛筆の硬度でHB程度なので、ウエスやブラシによる清掃・洗浄などで容易に傷が付き、透明性が低下します。取扱いには注意が必要です。

そのほか、高温高湿度環境下では加水分解する、引張強度を超える力により白化して透明度が低下するなどのデメリットがあります。

5. ポリカーボネートの主な用途

  •  透明性と寸法精度の高さから、カメラやメガネレンズをはじめとする光学部品に多く使われます。
  •  透明性と耐衝撃性の高さから、車のヘッドランプなど灯火類やDVD・CDなど光学ディスク、航空機や新幹線などの窓、防弾ガラス、水槽、スポーツ用のゴーグルに、光を通しながら割れにくい材料として使われます。
  •  耐衝撃性の高さと軽さから、カメラ・スマホ・電気製品などの筐体、保護帽や警備用の盾などの防具に使われます。
  •  耐候性の高さから、ベランダやカーポートの屋根、広告看板など屋外の用途で使われます。
  •  難燃性・自己消火性の高さから、建築物や輸送機器のパーテーションなど内装材料として使われます。
  •  機械的強度が優れていることから、プラスチックネジに使われます。

6. まとめ

ポリカーボネート(polycarbonate)は熱可塑性プラスチックの一種で、ポリカまたはPCとも呼ばれ、5大汎用エンジニアリングプラスチックの一角を占めています。
高い透明性や耐衝撃性をはじめ多くの優れた特徴を持っており、それらを活かして、カメラやメガネレンズなど光学部品をはじめ、車のヘッドランプ、DVD・CDなど光学ディスク、カメラ・スマホ・電気製品の筐体から、建材、防具、そして航空機や新幹線に至るまで、私たちの身の回りの製品に広く利用されています。

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