普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その165) 体感での思考とアナロジーとの関係

 

これまで五感を一つ一つとりあげ、それぞれの感覚のイノベーション創出における意義と、そこに向けての強化の方法について解説してきましたが、前回から体感での思考とアナロジーとの関係を考えています。今回も前回に引き続き、体感での思考とアナロジーとの関係を、蜘蛛の巣を漁網ととりもちのアナロジーの例に基づき、考えていきます。

【目次】

    【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その164)へのリンク】

    1. アナロジーとは

    アナロジーとは説明しにくい物や事を説明する場合に、すでに知っている他のもっとわかり易い物や事になぞらえて説明することです。たとえば蜘蛛の巣を説明する場合に(蜘蛛の巣を見たことの無い人を対象にと仮定して)、蜘蛛の巣は魚の網にとりもちがくっついているようなものなどと、その人がすでに知っていると思われるものを例に説明することです。

     

    2. アナロジーの発想法への利用

    しかし、アナロジーは説明しにくいものの説明以外に、発想法としても活用できます。蜘蛛の巣の例で言うと、バイオミメティクス(生体模倣科学)という概念がありますが、これは植物や動物の構造を利用して有用な材料やものを創出しようというものです。たとえば、蜘蛛の巣の特徴から何か有用なものができないかを考える場合、蜘蛛の巣ととりもちのついた漁網をアナロジーとしてとらえてみると、そこから面白い発想をすることができます。

     

    3. 蜘蛛の巣の例

    具体的には、アナロジーを利用してアナロジーの対象と比較して以下のように「類似点/異なる点」×「優れる点/劣る点/どちらでもない点」などマトリクスで考えてみることで、イノベーションを誘発するような、さまざまな蜘蛛の巣の特徴を明確に理解することができます。

     

    4. アナロジーと体感での思考の関係性

    蜘蛛の巣を漁網ととりもちのアナロジーで考えると、漁網ととりもちについてすでにもっている知識や体験に基づき、また加えてそれ以外のこのプロセスの中から連想される過去の体験をも含めて活用することで、蜘蛛の巣というものについて広く思考することができます。

     

    ここで、自分の関連する体験や知識を総動員し、まさに体感で思考するのに有効な方法が、自分が対象物になったと考えてみることです。それにより、自分で体験したことを、最大限に活用して考えることができます。それを蜘蛛の巣を漁網・とりもちのアナロジーの例に適用すると以下のようになります。

     

    (1)自分が蜘蛛になったと仮定して

     

    (2)自分が網にひっかかった獲物と仮定して

     

    (3)自分が漁師になったと考える

     

    (4)自分が網になったと考える

    が網という物になったと考えてみる。空中で手足を広げて、それぞれどこかに固定している自分を想定してみる。手足をきちんと固定することは、大変難しい。
  • さらに、こんな状態で、上に誰かに載られたら大変。
  • でも、体が細くて、手足が長ければなんとかいけるかもしれない。
  •  

    5. アナロジーは新しい思考空間へのドア/体感は新しい思考空間で発想を多いに広げるツール

    このように、蜘蛛の巣について、漁網ととりもちのアナロジーで考える中で、漁網ととりもちのアナロジーは新しい思考空間へのドアとなります。新しい思考空間で、関連する自身の体感での経験を活用することにより、蜘蛛の巣のことを広く、そしてありありと想定することにより、発想を大いに広げることができます。

     

    次回に続きます。

     

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