クリーン化について(その119)人財育成(その20)の続きです。
私が実施してきたクリーン化教育やクリーン化セミナーを紹介します。最初は、私がゴミと関わってきた流れを紹介します。前回のこの場で、半導体業界が盛り返してきたと書きました。その数日後、また次の報道が出てきました。国内には既存の大手企業もあるわけです。それらの企業も当然自社内の各種人財の流出を抑え、加えて新規採用や中途採用、社内人財の育成で体質を強化していると思います。今後さらに少子化は進むと推測されます。従って、本当に人財は確保できるのだろうか。そもそも人はいるのだろうかと心配になります。
私は人材ではなく、人財と言う字を意識して使っています。人は材料扱いしているうちは育たない。財産として大切に育てることで、やがて自社の成長に貢献してくれるでしょう。材料扱いし、次々交代しても同じことの繰り返しで、人も企業も成長できません。いつまで経っても、スタートラインかも知れません。
良くあるケースは、即戦力と言いながらきちんと教育もせず、各業務に配置してしまうことです。これでは最初から足並みが乱れるということになってしまいます。人を基本からきちんと育て、総合力を高めて行くことが大切ですね。専門的に高い人たちを引き抜いても、人数は限られるでしょう。また、その人たちはそれぞれの分野では優秀であっても、ベクトルが合うでしょうか。そこに企業のスタート時のロスが発生するとも考えられます。
これだけ沢山の企業、工場ができるので、当然競争力も強化しなくてはなりません。人を最初から育てるのは遠回りのようですが、きちんと育てれば成果は出せると考えます。
前置きが長くなりました。
私は、腕時計の製造会社に入社し、高級腕時計(ゼンマイ式)の組み立て作業だけで無く、社内の技術技能研修所で、時計学全般を学びました。ここでは組み立てだけで無く、小型工作機械を使い、細かな部品の製造も経験しました。当時、時計の止まり、遅れの原因は、3大ゴミと言われる金属粉、繊維、皮膚でした。これらの発生源はわかっているのですが、それをどう無くしていくかは常に意識していました。この頃のゴミの大きさは、キズミ(拡大鏡)や顕微鏡で確認できるレベルです。これが“私に取ってのクリーン化の始まり”だったように思います。
その後、水晶腕時計の製造に携わりました。これは電池で動くのですが、ゼンマイ式よりも回転トルクが低いので、より細かなゴミでも影響が出ます。従って、慎重な作業が必要です。この頃“作り込み品質”の重要さ学びました。現場で品質は作り込まれる、その品質は私たちが作り込むと言う当事者意識です。
その後札幌に赴任し、小売店などへの水晶腕時計の修理技能講座を開講しました。受講者は600名超。そのほか店頭で対応する方向けにも実施。こちらは約200名。この時はゴミへの意識を高めてもらうよう、5日間の講習中は実際に防塵衣を着用してもらいました。理論的な話だけでなく、常に意識し、小売店での修理の時に思い出してもらいたいのです。修理したらまた止まってしまったでは、そのお店の信頼も損ねてしまうでしょう。
札幌から帰任後、超極薄の水晶腕時計の製造に関わりました。ムーブメント(駆動体)の厚みは電池を含め0.95ミリでした。部品ひとつ一つの精度と技能レベルが高くなければ実現できません。こうなるとゴミという範疇ではなく、もっと小さなパーティクル(微粒子)レベルでも問題になるので、細やかな配慮が必要になります。
その後、半導体部門に異動。まずは現場を理解することから始めました。この頃やっとクリーン化ということが重要だと認識されてきました。その頃の私は、現場の作業の理解、習得に加え、ゴミ退治にも力を入れていました。品質や歩留まり向上など、企業の利益体質を左右するのは微粒子だからです。
“クリーンルームの中での最大の発生源、汚染源は人である”と言うことがしきりに言われるようになりました。この、人をどう管理コントロールするかが、皆さんご存じの“クリーン化 4原則”です。
クリーン化担当になって現場を管理し、その後クリーン化推進部門に異動してから、教育の重要性に気づきました。足並みを揃えるベー...
次回は、実際に教育を始めたときの失敗事例を紹介します。
【参考文献】
清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
同 電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
同 「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年