AIや新たな撮像技術がリリースされても、まだまだ簡単には行かないのが外観検査の悩みです。
- 「検査機の導入を検討しているが、効果が得られるのか不安・・・。」
- 「改善はしたいが、検査機に大きな投資は出来ない。」
- 「画像検査の有効性を長期的に検証し、導入のリスクを抑えたい。」
今回は、これらのお悩みを解決するローコストで効果が絶大なカメラ活用方法を解説します。それは「まずはカメラを設置し、全ワークを撮影する」こと。いきなり自動化せず、画像保存するだけです。この提案を実施することで、ローコストに品質改善しながら効率的に画像検査機の導入を進めることが可能です。目視検査と外観検査機の中間案として、品質管理のジレンマを抱える方々に注目され始めています。
1. 活用方法とメリット
画像検査は、画像処理機と周辺機器だけでも1セットで100〜300万円かかり、設備化すればゆうに数千万円のコストがかかります。(画像センサは100万円を切るものもありますが、ここではより難易度の高い外観検査を対象として記述します。)コストと能力のバランスで、なかなか導入に踏み切れないユーザーは少なくありません。そのようなユーザーの中には、目視検査だけ続けていても将来は成り立たないと考え、画像検査機の導入を検討しているものの、コストの高さに躊躇している方もいます。
このようなユーザーの悩みを解決するのが、今回の「全ワークの画像保存」です。「画像保存だけして、何の役に立つのか?」「リアルタイムでNG排出が出来ないと意味ないのでは?」という疑問もあるかもしれません。実は保存された画像には以下の3つの活用方法があります。
【工程改善】
蓄積された画像をオフラインで解析し、欠陥の発生状況を把握。結果を工程へフィードバックし、工程改善へつなげます。
【エビデンス化】
画像は品質管理の記録として活用できます。顧客からの問合せに対しても迅速に対処することができます。
【自動化判断】
製品や欠陥のバラつきが大きいケースなどにおいて、中・長期的に評価することでリスクを下げ、合理的に自動化を検討することができます。この活用方法は「ローコストで目視検査に頼る現状を変える」ことです。
1.1 前提:画像処理はリアルタイムでなくてもいい
通常、画像検査機では画像処理をリアルタイムに行いNG排出することが必要です。そのため、画像検査機に必要なハードウェアやソフトウェアのコストが高くなる傾向でした。しかし、今回の解説は「オフラインで画像処理を行う」と割り切った考え方が前提となります。オフラインで画像処理を行うことで、以下のメリットがあります。
このコンセプトにはメカや大がかりな制御はなく、カメラを設置するだけ。そもそもイニシャルコストが安い。画像処理に必要なハードウェアやソフトウェアのコストが低減できる。例えば、PCも一般的なスペックで十分に処理が可能。AIなど比較的処理時間がかかるプログラムも適応可能。その結果、分類機能も追加しやすい。これが「ローコストで効率的」であることの根拠です。
話を活用方法とメリットに戻しましょう。
1.2 活用方法①:工程改善
オフラインだとしても、画像処理によって欠陥の種類や発生率などの解析は可能です。発生した欠陥の様子やその数値データを得られれば、各工程へフィードバックをかけ、欠陥そのものを減らす活動にスムーズにつなげることができます。つまり、NG排出によって流出を防ぐのではなく、画像を起点として工程全体を最適化・改善させるという考え方です。NG排出はあくまでも手段の1つに過ぎません。
大きなコストをかけずに着手できる、まさに自動化と目視検査の中間的な手法と言えます。
1.3 活用方法②:エビデンス化
全てのワークを撮像することで、残された画像は品質保証やトラブル対応などに活用することが出来ます。
例えば、納入先のお客様から品質の問合せがあったとします。納入した製品に傷がついていたと言われた貴社は「ウチで付いた傷ではないのではないか?」と思うこともあるでしょう。ただし、それを証明するのは容易ではありません。自社・取引先の双方で膨大な時間をかけて調査を進めることになります。ただし、画像が残っていれば取引先にも明示でき、お互いが時間の短縮になるため双方にメリットがあります。
確認する際には下記の条件を満たす必要があります。
- 欠陥が画像で認識できるレベルであること。
- 画像データを一定期間保存しておけること。
1.4 活用方法③:自動化判断
画像検査機の検討の際、品質保証担当にとって最も重要なのは「検査能力の高さと安定性」です。数千万円をかけて発注した検査装置が失敗することは必ず避けなければなりません。そのようなリスクを下げるために、中・長期的に評価することは有効な手段です。通常、画像処理メーカーに依頼すればデモ機は貸してもらえますが、それは2週間程度です。中・長期的に評価するには十分な時間ではありません。そこで、カメラ・照明など必要最低限の機材を購入する必要はありますが、実ラインで中・長期的に評価できれば、リスクを下げられるメリットがあります。これらの初期費用は通常の画像処理機と比べれば圧倒的に安価です。
数カ月において評価・解析を進めていく中で、検査能力や課題も見えてくるはずです。その結果を踏まえて、検査機の仕様やコストを検討することは非常に合理的と言えるでしょう。この段階でメーカーへデモ機を借りるのは良い選択肢です。自動化に向け、より具体的な処理時間や検出能力を確認することができます。
2. 導入と運用
ここまでが活用方法とそれらのメリットです。ただし、疑問や不安を感じた方がいるかもしれません。
- 「光学条件の作り方がわからない」
- 「1日に数万枚ある画像の中から、目的の画像を見つけることは難しいのでは…」
- 「自社で解析することはできない…」
これらの運用面の課題とサポートプラン※について興味を持たれた方は、筆...
※この解説記事は、筆者のホームページ、サポートプラン等をPRするものではありません。
3. どのような現場が導入しやすいのか
カメラを取付け、画像を保存するだけでもメリットがありそうなことはわかってきたと思います。ただし「うちの現場に取付できるのか・・?」と疑問を持つ方も多いでしょう。カメラを取付け易い環境は以下が考えられます。
【ボトルの製造ライン】
コンベア上でワークが搬送されている。
搬送されているワークの上・または横から撮像することは比較的容易です。
【組立】
マニュアルでの組立ライン
スイッチやセンサを追加し、組立中の各工程を撮像することが可能です。
【組立機の中のカメラ】
加工機・組立機に組み込み
既に稼働中の設備の中にカメラをインストールします。既にPLCが組み込まれており、制御面ではトリガ信号を入力するだけです。
もちろん、他の環境・工程でもカメラは取付は可能です。コストをかけずに着手できる、自動化と目視検査の中間的な手法と言えます。