クリーン化について(その133)人財育成(その34)多面的にものを見る

【目次】

    前回の記事の中に、“人は一面、または二面でもの捉える”と書きました。この面を増やす、つまり多面的に見たり考えたりすることができれば、クリーン化でも、画一的ではなく、柔軟に見たり考えたりすることができるでしょう。それらの多くは、体験、経験の多さ、そしてその時関わる人の多さも関係するでしょう。そうすると、柔軟な発想ができ、より多くの改善案が抽出できます。

     

    1. 多面的にものを見るについて

    前々回に記した“神話のような”とか、“思い込み”などに関係しますが、一面や二面で考えるのではなくはなく、そもそも何も考えない場合もあります。例えば、“昔からそう言われている”、“古くからの言い伝え”などもその一部だと考えています。これらは、恐らくそれだけを聞いて、聞き流してしまう、何も考えないまま自然に流れ過ぎて行ってしまうのだと思います。

     

    平凡なことであってもそれはなぜ、どうして、と考える習慣が欲しいですね。表面だけが一人歩きしないよう、その理由や原因、背景など深く広く考え、理解しておきたいものです。

     

    私は時計メーカーに就職しました。1971年のことです。この頃は高度経済成長の真っただ中、小売店も春のフレッシュマンセールや年末のボーナス、クリスマス商戦と言われる時期があり相当忙しかった。その時期、お店のお手伝いということで、当社でも初めて店頭支援が実施されました。その時私は、春、年末の各1ヶ月、大阪の大型小売店に派遣されました。21歳、まだ右も左もわからない頃です。そこでの経験です。

     

    仕事では、高級腕時計の組み立て、調整でしたが、お客様に買っていただく商品にはベルトがついます。3月と言えば大相撲の大阪場所です。でもこの時はそのことが頭にはなかった。ある日、お相撲さんがアーケード街にあるそのお店に来ました。ショーケースを見ながら、一つの商品を指差しました。これが欲しいと。それはベルトが金属のものでした。腕に合わせベルト調整をしようとしましたが、長さが足りないのです。一般の人よりも腕周りが太いのは当然のことです。でも頭にはなかったのです。

     

    それは想定外のことで、対応方法は考えていませんでした。さてどうするか。今から営業マンを呼ぶこともできないし、営業マンだって困るでしょう。また、明日までに用意しておくので来て下さいでは失礼だと考えました。時計が欲しい。そして行動を起こしたわけです。そしてこのお店を選んでくれたのです。それを明日までと、時間を延ばせば、もう来てくれないかも知れない。タイミングを損ねてはいけないと思いました。

     

    これは、自分がお客様だったとしたら、そう考えるだろうと言うことからです。逆に、そこが瞬時の商機だとも思いました。タイミング良く提供し、喜んでいただけるにはどうするかを考えました。仕事では、時計の組み立て、調整作業でしたが、その頃の合い言葉は、「お客様に喜ばれる製品を、心を込めて作ろう」でした。お客様の顔が見えないけれど、そのお客様の喜ぶ顔を想像し、品質の作り込みをするわけです。ところが、いざ販売の現場に来て、お客様と対面しているので、対応の仕方では喜ぶ顔を想像ではなく直接見られるわけです。そうなるかどうか。

     

    そこで、よく見ると同じ製品がショーケースに中にありました。その金属バンドを分解し、コマとコマの間に同じ大きさのコマを挟み、長さを確保することにしました。ピンセットなど時計用の工具はありましたので、ここからが腕の見せどころ、汗をかきましたが思い通りにできました。この時、お相撲さんも笑顔で喜んでくれました。

     

    他の小売店へ行っても、長さが合わないと言って断られるとか、断念したのかも知れない。そうならないようタイミング良く提供することの重要さをつくづく感じました。どんなに良い品質、良い精度の製品であっても、その欲しい製品がベルトの長さの問題で入手できないのでは落胆してしまっただろうことを思うと、良かったと言う瞬間でした。そして、お相撲さんの喜ぶ顔が見られたのです。この笑顔は、私に取って大きなご褒美でした。

     

    もう五十年も前の話ですが、今でも鮮明に蘇ります。

    会社の仕事では、良い品質を作り込むとか心を込めて・・・と言いますが、この時の行動はサービスなのか、製品に見えない付加価値をつけたのかわかりませんが、良い製品というのは、このようなこともあって実現するんだなあと思いました。何とか希望に添いたいという一心の思いが通じたのでしょう。犠牲になった片方のベルトは、営業マンを通じ補填してもらうことにしました。さて、時計店では、メガネ、宝石、貴金属を扱っているところが多いですね。また蓄音機から、レコード、そしてCDと言う風に発展の経緯を知ることができます。これは過去の歴史を遡ると、その理由がわかりますが、ここでは省きます。

     

    店頭支援中は、私もそのお店の店員という立場です。時には、ダイヤモンドの指輪についての質問もあるわけです。そこで少々ダイヤモンドについても学びました。ショーケースの中で、照明の当たったダイヤモンドを見ると、その輝きには魅力を感じました。私もあのように輝いてみたいものだと漠然とですが思っていました。そこから、ダイヤモンドであってもカット面が多いほど、輝いて見えると言うことに気づきました。長年考えていましたが、その先には多面的に、そして60面カットのダイヤモンド、そしてシリカゲル...

    へと辿り着きました。このことは徐々に説明します。

     

    2. クリーン化って掃除のことだとの先入感

     

    クリーン化のことを知らずして、ものづくりの現場で“旧態依然”のまま生産活動を続けてしまうのはもったいないです。私が訪問したところでは、“クリーン化無くして、品質なし!”とのキャッチフレーズで頑張っているところもありました。この大切さを伝えたいと思っています。しばらく、この部分は残しておきます。

     

     

    次回に続きます。

    【参考文献】 
    清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
        同    電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
        同   「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年

     

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