・前回の クリーン化について(その151)クリーン化の基礎(その13)の続きです。
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ここのところ半導体製造の分野が盛り上がってきました。しかも、ナノメートルの世界を目指しています。しかしながら、その土台、基盤がしっかりしているのか、クリーン化の基礎をきちんと持ち合わせているかと言うことを心配しています。何事も基本、基礎がしっかりしていて、その上で高いレベルへの挑戦が可能だと考えています。行き詰まった時、基本に帰れと言いますが、その基本はどこなのかと言うことです。
高いレベルを目指すとき、開発、設計、技術がしっかりしていても、それを具現化する現場の力は追いついているでしょうか。良く、理論的には可能だが・・・と言う言葉も聞きます。ものが作れなければ、現場との乖離は大きく、理論、理屈の話で終わってしまいます。いずれの企業の成功をも願いながら、桁違いの投資額ですから、損益分岐点はどの当たりになるのだろうか。企業間の差は顕著に出るのかなど気になります。その危機感を感じているので、クリーン化の基礎の部分に立ち戻り説明していきます。
6. クリーン化のなぜを考える
クリーン化に限らず多くのことでなぜを考えることは重要です。私が山形県の工場に赴任していた時、会話の一つひとつに、えっ、それは何で、どうしてと繰り返し聞いてくる人がいました。大概の人は、聞き流すか、簡単な返答で、それ以上聞き返す人はいません。繰り返し質問されると、相手にわかりやすく説明するのに苦慮します。この時、自分の引き出しが多ければ、その人に合った事例を取り出すことができるのになあと考えたものでした。自分でも、なぜを問われた時など、どう反応すべきか色々考えるきっかけになりました。
(1)ルールのひとつ一つにある“なぜ”を知る
クリーンルームの中では様々なルールがありますが、その理由がきちんと説明されていないこともあるでしょう。「これはルールです。決まりですから守ってください」では単に指示、命令ですね。クリーンルームを保有している現場でも、残念ながら、クリーン化教育が実施されていないところも多いのが実態です。その理由のひとつに“クリーンルームにすれば歩留まり、品質が向上する”という神話を信じているところもあります。クリーンルームに...
教育を実施し、ルールや決まりを伝えているところは多いでしょうが、“なぜ?”の説明が欠けている、あるいは説明ができないところも多いでしょう。ルール、決まりはもちろんあった方が良いのですが、それだけに縛らず、教育の場を設け、なぜを知ってもらうことや、考える機会を設けたい。そのルールを理解し、遵守してもらうことに価値があるからです。「ルールや決まりを守りなさい」 だけでは、言われたとおりにするだけになってしまいます。考えると言う行為をしなくなってしまいます。
なぜを考えたり、知っていると、他のことに応用したり、行動に幅が出ます。ルール通りにしながらも、その意識や行動が生きたものになるはずです。また、一人ひとりがなぜを考えることで、人としても成長し、環境も向上するでしょう。
【事例① 子どものなぜ】
クリーン化から逸れますが、長男の幼稚園入園前の話です。一緒にお風呂に入った時「カエルはどうして跳ねるの?」 と聞かれ、大変困ったことがありました。また、幼稚園に入ってから「種無しスイカの種がどうして売っているの?」。これにも困りました。小さな子どもに対し、冗談でごまかすわけにもいかなかったのです。こんな経験をされた方も多いと思います。子どもはなぜの宝庫です。でもいつの間にか、そういうものだと思ったり、言葉一つひとつにこだわることは少なくなっていきます。
【事例② 大人のなぜ】
次は、私が昼食時に社員食堂で経験したことです。先輩が「清水さん、肉の定食ではなく魚の方がいいんじゃないの」 と言うので「そう思ったけど、遅く来たのでこれしか残っていなかったんです。でもどうして肉より魚の方がいいんですか?」 と聞くと「昔からそう言うでしょ」 との返答。そこで咄嗟に思いついたことを話してみた。
「私はこう思います。牛や豚など家畜に触ってみると温かいですね。つまり人間より家畜の方が体温は高いと言うことです。その体の中にある脂は、その体温でちょうど良く機能しているのではないですか。でも冷えると固まってしまいますね。会食などで話に夢中になり、後で見ると肉じゃがなどの料理が冷え、脂が浮いているのを見たことがあるでしょう。家畜より人の体温の方が低いので、これを食べると、体内で脂がきちんと分解されないのではないかと思います。逆に魚は水中にいるので体温が低いですよね。その体の中にある脂は低い温度で分解されるので当然魚より体温の高い人間の体内ではきちんと分解する。だから体に良いのではないかと思うのですが…」 というと、そこまで考えたことはなかったとの反応だった。これが正しいかどうか分からないが、自分なりに考えてみることは楽しいものです。
多くのことは、“昔からそう言われている、そういうものだ”で済まされてしまい、それで理解した気になってしまうと、そこで終わってしまいますね。つまり一面(表面)だけで理解するのです。今一度、なぜを考えてみるとよいでしょう。自分なりの答えが正しいのか否かは別として、考えてみることに価値はあると思います。そしてその裏付けになるような例に遭遇すると感動します。すると一面ではなく、色々なことをもっと多面的に見たり考えたりするようになるでしょう。
特にクリーンルームにおけるルールは、その一つひとつになぜがあり、そのなぜを知ることが大切です。なぜ?どうして?と聞かれたらいやな顔をするのではなく、きちんと説明ができることで、そこに関わる人たちも理解し、行動に繋げてくれると思う。説明できなければ一緒に考えることが大切ですね。テレビに出てくる林先生は、子供の頃疑問があれば、おばあちゃんに聞いたそうです。その時、すぐに回答できることであっても「一緒に考えてみようね」 と言って、考えるように仕向けていたと言います。
クリーン化でも「なぜ更衣室があるのか」「なぜ防塵衣を着るのか」「なぜ防塵衣に着用順序があるのか」「なぜエアシャワーを浴びるのか」「なぜワイパーや防塵紙は切ってはいけないのか」をはじめ、たくさんのなぜが出てきます。
このような基本をきちんと身につけていると、テレビで超スーパークリーンルームの画像が映ることがありますね。この時、良く観察すると、こんなにハイレベルのクリーンルームなのに、あのような防塵衣の着用方法は良いのかなど気になることがあります。あるいは心配になることもあります。
次回に続きます。
クリーン化のこと、活動の進め方、事例など個別に対応が必要でしたら、ものづくりドットコムを通じてご連絡ください。可能な限り対応致します。また、セミナー、講演会なども対応致します。
【参考文献】
清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
同 電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
同 「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年
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