サプライチェーン構築における計測と配置の重要性

1.連続したモニタリング 

 車の運転やスポーツをしている時は、常にリアルタイムかつ連続して状況判断・計画・実行が行われています。生産・販売の計画・実行を月1回のペースで行う月次計画は、たとえば目を開けることを1分間に1回の瞬間に限って車を運転するようなものです。1分前の車間距離と速度にもとづいて速度を1分間固定して運転していると、その間に車間距離と前方の車の速度は変わっていて危険な状態になっているかもしれません。 

 サプライチェーンマネジメントは、リアルタイムで位置や速度・加速度を計器盤でモニターしながら制御する車の運転や飛行機の操縦に似ています。月次計画は週次計画に、週次計画は日次計画に、日次計画は時間毎・分毎のリアルタイムで管理することにより、追突防止(在庫切れの機会損失防止)や、車の流れを減速させる長い車間距離を短縮させる運転を可能にします。 

 SCMでリアルタイム経営が可能になったのはIT(情報技術)が計器盤になってのことですが、その本質を知らないと計器盤の技術論で終わってしまいかねません。

 

2.視点と仮想 

 製鉄会社は鉄鉱石や石炭から自動車部品となる鉄板を作ります。自動車部品会社は部品を作って自動車会社に納入します。自動車会社は販売会社を経て最終ユーザーに納車します。サプライチェーンは産業の枠を超え、企業の組織を越え、会社組織などの人工の組織を横切りつながっています。 

 組織の固有名詞に惑わされずに、モノの流れとして連鎖業務を見れば、改善ポイントが浮かび上がってきます。企業間で、業務間に介在する在庫情報や加工生産速度を共有すること、すなわちお互いの可視性を上げる為には、企業の壁を取り払った仮想企業のモデル設計が必要です。組織の視点は提供者側のみではなく、最終需要を発生させる顧客の視点でサプライチェーンをみることが重要です。 

 惑星の運行を地球の上からみるだけではなく、太陽の上に立って見るというパラダイムシフト<視点移動>が必要なのです。

 

3.仕組みづくりの効果

 ベネトン(イタリアのアパレルメーカー)は、何色が流行るかという需要の変動と、事前に準備する染色業務との時間差を短縮するために、「染色→機織」という連鎖業務の順番を、「機織→染色...

」に逆転させて成功しました。需給の同期化が一挙に進んだのです。 

 遠くにある標的を打ち落とすために、射撃訓練や発射速度の速い大砲で精度をあげることもよいでしょう。しかし、選択肢から、標的の近くまで行って撃つ方ことを排除してはなりません。暗黙のうちに制約としての検証がされない常識(ルール)として、標的と射撃地点の距離を理解されている場合が多いのです。

◆関連解説『サプライチェーンマネジメントとは』

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