1.工場における物流品質とは
工場の生産運営を物流が支えていることを考えれば、物流品質は常に高いレベルにあることが求められるのは当然と言えるでしょう。しかし実際はどうでしょうか。物流が自社のみならず得意先にも品質不良によって迷惑をかけていることはないでしょうか。今回の連載では物流品質を向上させるためにどのような取り組みを行っていったらよいかについて解説します。物流品質でお困りの工場管理者の方にはこれをお読みいただき、物流品質改善を進めていただければ幸いです。
図1をご覧下さい。工場における物流品質というと皆さんは何をイメージされるでしょうか。ミスのない物流が順調な生産活動を支えることになるのですが、実際には時々物流のミスが生産に影響を与えていることがあります。そこでモノの流れに沿って物流品質にはどのようなものがあるのかを整理してみます。最初はモノが工場に入ってくる調達物流について考えてみます。
図1.工場における物流品質
調達物流では必要なものが必要な時に必要な数量届くことが大前提です。これが物流における当たり前品質なのです。この調達物流における「未納」、「納入遅れ」、「誤品納入」、「誤数納入」、「製品損傷」は物流品質の典型的な不良です。これに加え、「梱包不良」、調達トラックの「ドライバーマナー」の不良も最近では物流品質として取り扱われるようになってきました。
次に調達品を生産ラインに供給する際の物流品質では「供給遅れ」、「誤品供給」、「誤場所供給」、「供給時の損傷」などが不良として挙げられます。さらに生産後の完成品を出荷する際の「誤出荷」、「未出荷」、「出荷遅れ」、そして得意先納入時の「未納」、「誤品」、「誤数」、「製品損傷」、「ドライバーマナー」の不良などが考えられます。
2.物流品質不良のデータを把握する
以上のような物流品質に関して皆さんはきちんとデータを把握されているでしょうか。筆者は時々物流管理者の方に次のような質問をさせていただくことがあります。「御社の出荷品質不良の比率はどれくらいですか」と。この問いに対して次のような回答があります。
①「出荷品質不良がどれくらいあるか把握していない」
②「出荷ミスの比率は1%程度である」
③「出荷ミスの比率は50ppm程度である」
この内①が5割程度で②のように、パーセントで回答されるのが4割程度、そして③のようにppmで回答されるのが1割程度です。意外とデータを把握していないケースが多いことに驚きますが、把握していてもパーセントレベルであることも、まだまだ物流品質に改善の余地が大きいことを物語っていると言えそうです。
皆さんにはぜひ調達、供給、出荷などの物流領域別に物流品質のデータを把握していただきたいと思います。そこでデータを把握するポイントを紹介します。物流品質不良には「工程内不良」と「流出不良」があります。出荷を例にとれば、出荷の荷揃え時に間違った場所に荷揃えし、トラック積み込み時にその不良が発見された場合はまだ社外に流出していない不良のため「工程内不良」とカウントします。ところがこれに気づかずに出荷し、得意先で発見された不良は「流出不良」とカウントする。流出不良をゼロにすることは当然ですが、そのためには、工程内不良を把握しその発生要因を分析することが重要になります。よく流出不良を防止するために出荷検査に人をかけて実施する一方で、工程内不良の要因分析に手を付けていない会社を見かけますが、これは仕事の仕方を再検討すべきだと考えられます。たしかに検査を行えば流出は防げるかもしれませんが、真の発生要因をつぶさなければ、出荷検査作業を無くすことができないからです。
図2のように、把握したデータは工場内の誰もが目にするような場所に掲示しましょう。「不良類型別データ」、「出荷先別不良データ」、「不良ゼロ累計日数データ」など自分たちの管理に見合ったデータをグラフ化し掲示するとよいでしょう。これによって社内の物流品質に対する意識が...
向上するとともに、物流品質改善のきっかけになるでしょう。
図2.物流品質データの掲示
それでは今回の改善のテーマです。ぜひ工場で実践して下さい。
◆自社の物流品質にはどのようなものがあるのかを洗い出してみよう
①調達物流品質にはどのようなものがあるか
②構内物流品質にはどのようなものがあるか
③出荷(販売)物流品質にはどのようなものがあるか
◆自社の物流品質データを把握してみよう
①調達物流の「未納」、「納入遅れ」、「誤品納入」、「誤数納入」、「製品損傷」の月間件数
②上記品質不良をサプライヤー別に分析してみよう
③出荷(販売)物流の「工程内不良件数」、「流出不良件数」
④把握した物流品質データを工場内の誰もが目にする場所に掲示しよう
この文書は、『日刊工業新聞社発行 月刊「工場管理」掲載』の記事を筆者により改変したものです。