今まで、何処でも誰でも使えるTRIZツールづくりを試行してきました。その過程で、抽象化思考の苦手な人が、意外に多いようです。現場では、課題だけでなく、発明原理の活用にも抽象化思考が求められます。この最新版は、各々の感性に合せ、無意識的に拡大(抽象化)/縮小(具体化)できるよう工夫しました。つまり、原理名、言い換えた分かり易い文言、サマリー、サブ原理の図解、異分野適用例の5段階の視点でアイデア出しします。
1. 分割原理の概要
「5. 組合せ原理」の反対の原理です。物体やシステムを細かい単位に分割して処理をスムーズにしようとする考え方です。分割のレベルは、原始、分子レベルまで考えます。例えば、化粧品の粉体粒子を、細分化すれば肌への浸透速度や割合を高められます。
図1. 01 分割原理のイメージ図
2. サブ原理の種類と図解事例
a.物体やシステムをその部分あるいは区分に分割する考え方
バックアップ容量の肥大化を防ぐため、PC等のHDDやSDDを、OSやアプリケーションとドキュメントデータに分割して使います。
図2. PC等のドライブの分割
b.組立と分解が容易なようなシステムを作る考え方
廃棄時に分別が容易にできるはさみ。廃棄時は、ハンドル部分の隙間にマイナスドライバーの先端を押し当てることで、ハンドル部から刃部を容易に取り外し可能となります。
図3. 組立、分解しやすいハサミ(参考文献:長谷川刃物HP)
c.分割の度合いを増加させる考え方
毛穴やシワの奥へ入り込み、皮脂や汚れを吸着させるために、シャワーからマイクロナノメートルに分割した超微細な気泡を発生させます。
図4. マイクロナノバブルシャワーヘッド(参考文献:(株) 田中金属製作所HP)
3. HW、SW及びビジネス等分野での適用例
・自動車エンジンの複数のピストン
・パケット通信方式
・機能別、事業部制等の組織の分割
4. 40の発明原理の主な活用法
a.慣習的に使われている方法
問題が発生したときは、パニックになったりして精神的な余裕がないようです。矛盾問題として捉え、課題を抽象化してから矛盾表から発明原理を検索するには、かなりの訓練が必要です。推薦したいのは,40の発明原理に日ごろから親しんでおくこと。あるいは、発明原理を全部スキャンして発想すること。TRIZそのものを理解していなくても、藁にもすがりたい人には、強力なヒントとなります。
b.矛盾Matrixから発明原理を抽出する方法
矛盾 Matrix表の縦横の軸には、39×39の特性(パラメータ)が配置されています。縦軸から「改善する特性」、横軸から「悪化する特性」を選ぶと、両者の交点に「発明原理(principle)」が提示されます。 この発明原理をヒントに解決策を発想します。例えば,改善する特性で「移動物体の体積」,悪化する特性で「移動物体の面積」を選ぶと,矛盾 Matrix表の交点に、「01分割原理」「04非対称原理」「07入れ子原理」「17他次元移行原理」を確認できます。
参考文献
1. Darrell Mann 他:TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新(創造開発イニシアチブ...
)
2. 粕谷茂:図解これで使えるTRIZ/USIT(日本能率協会)
3. 粕谷茂:SEのスピード発想術(技術評論社)
◆関連解説『TRIZとは』