今回は、事務室のクリーン化と言うテーマで、過去、東南アジアのある工場をクリーン化診断・指導をした時の事例を紹介します。
これまで私がクリーン化担当として現場を診断・指導して来たなかで、事務室などクリーンルームではないエリアもどうクリーン化するのか、アドバイスを欲しいと言う依頼が幾つかありました。クリーン化とは、“ものづくりの現場で、ゴミを減らし、製品の歩留まりや品質を向上させ会社の利益追求に貢献して行くこと”ですが、今回の“事務室のクリーン化”は一般的な5Sの内容です。
ここには、単に綺麗にしたいとか、客先からクリーンルームだけでなく、工場全体の監査を受けるために必要だ。あるいは経営者や管理監督者の思いとして、事務室にいる人たちの“クリーン化は現場の人がやるものだ”と言う意識を払拭し、会社、工場全体の活動にしたいと言う思いなど様々な背景がありました。
日本でも同じことが沢山あると思いますが、これはたまたま東南アジアの工場で、クリーンルーム以外も合わせて指導の依頼を受けた時の例です。
その事務室は、経理、品質、技術、管理等の部門のメンバーの居室で、全員がデスクトップタイプのパソコンに向かい作業をしていました。ここで最も気になったのは、そのパソコンの本体です。机の下にあったその本体の上には、埃が分厚く積もっていました。2~3ミリと言うものもありました。手で掻き集めると、綿の塊のような量です。机の下であり盲点になっていますので、気がつかないとか、知らないでいると言うことです。
なぜそのように沢山埃が堆積するのかですが、床は繊維状のカーペットでした。人が歩く度に埃が舞い上がるのです。また、ビニールタイル等の床と違って掃除し難いことや、常に埃が出続けるのが原因です。このパソコン本体は、中の電子部品による熱の発散の意味もあり、上面に格子状の穴が幾つも空いていました。この穴から中に大量の綿埃が入り込むと、発煙とか発火ということも想像されます。 このパソコン本体の上に書類等を積んであるものもありました。格子状の穴を塞いでいて、その書類等が熱くなっているものもありました。
5Sと言う観点で、日頃から職制の方も意識しているはずですが、大抵の場合机上の状態を見ていると思います。こんなところにも着眼してもらいたいものです。品質問題ではなく、安全面への着眼です。
この時は、埃の凄さを認識してもらう意味で、現場診断時に使う懐中電灯で、斜光によりゴミを見てもらいました。皆に見てもらうことで、その凄さを知ってもらう。つまり視覚に訴えると言う方法です。上から見るのではなく、斜め、あるいは横から光を当てることで、堆積したゴミが良く見えて説得力があります。
こんなことも合わせてメンバーに説明すると、段々興味を持ってくれます。理論や理屈での説明では、中々上手く伝えられないことも、そのものを見せること、視覚に訴えることで、意識レベルを変えることが出来ます。それによって、協力者を得られやすくなり、全体活動に結び付けるのです。
今日は監査があるからという、その場凌ぎの清掃は中々上手く行きません。慌てて清掃してもゴミが出てしまいます。私も色々な現場を見て来ましたが、その場で見るゴミは、今日慌ててやったものなのか、日頃から清掃をしているが故に出て来たゴミなのかがある程度判別がつくものです。
事例を上手く使って、全体活動として定着させたいものですね。