今回は、従業員30名前後の部品加工業を想定して、製造の基本としての5Sについて、5S活動で挫折しない進め方について解説します。
1. 躾・指導の観点
経営者の言い方によってはやらされ感、被害者意識もあるのかも知れません。自発的な活動にしましょう。
率先垂範は非常に大切だと思います。それも、一度や二度ではなく、少し習慣的に職制の方がやって見るのも良いと思います。つまり、背中で人を育てると言う感じです。そして誉めることです。
(山本五十六の言葉にありますように、「やって見せ、言って聞かせて、させて見せて、誉めてやらねば人は動かじ」だと思います。TOP、職制の方の継続的な努力、そこに熱意、情熱を感じると、手を出してくれる人も出て来ると思います。
ある会社では、6Sと言う掲示がありました。これは、何かと聞いたところ、5Sを定着させることは非常に難しいので、一つSを追加し、習慣化だと言っていました。
2. 仕組みの観点
あるスペースごとに区切り、責任者名と顔写真を掲示するのも良いと思います。
担当ごとに差が出ますから、責任感も出て、段々足並みがそろうと思います。時間はかかりますが、担当だけの活動ではなく、全員参加です。
乱れているところの担当者は誰?
自分のところが遅れている、乱れていると恥ずかしい等心理的にやるようになると思います。また、逆に、手がつけられない担当者は、できない、やらない、やれない理由があると思いますので、その原因を分析し、対策を取りたい。叱るのではなく。
3. 生産管理の観点で-理解してもらう
仕掛品や手直し品が多いと言うのは、ものがスムースに流れない、安定生産が出来ない。つまり、生産ロスです。それで忙しくなっていて、手が回らない部分もあるように思います。しかもそれに納期があるわけですから、5Sをやっている時間が無いのかもしれません。
一般的には、手直し、やり直しは、生産計画には含まれていないはずです。一回で流動する計画、納期になっていると思います。品質管理、生産管理方法にも着眼し、仕事を楽にさせてあげることも必要だと思います。
手直し、やり直しは、内容によっては、原材料を余計に使うこともあると思います。また、保管のための費用発生(容器の過剰な在庫、在庫金利等)。
工場内の在庫が多いと言うことは、在庫同士が干渉する、つまり足を引っ張り合うので、仕掛期間が長くなります。投入の割にアウトプットが少ない。現金回収が遅れると言うことで、内容によっては資金繰りにも影響します。これを回避するために、残業、休日出勤と言う対応、費用発生も出て来るかも知れません。
例が相応しいかどうかですが、洗濯機の中に、洗濯ものを過剰に入れた場合と、適度に入れた場合とでは、回転の速さが変わります。洗濯もの同士がお互いに足を引っ張り合うからです。溜まると言うことは、先入れ、先出しも気になります。また、経理的には良く分かりませんが、状況によっては、在庫金利が発生するかも知れません。作業の仕方、品質の作り込み、要求品質が厳しい等色々な観点で着目し、在庫を減らすことを考えたいです。
4. 安全の観点
通路に物が置かれると言うことは、安全面でも気になります。労働安全衛生法には、安全通路の確保と言う部分も有りますが、非常時、避難通路にはならないのでしょうか。労働災害の誘発。
5. 工具の持ち出しについて
工具がきちんと元に戻されないことについては、工具の形にくり抜いて、そこに工具を入れると言う方法があります。そこにないものは、持ち出されていると言うことが一目でわかります。ただ、ど...
こにあるかはわかりませんので、工具を持ち出したところに、持ち出し者の名前を掲示するところも有ります。必要な時、その人に聞けばいいと言う管理です。
6. 環境面
物がたくさん置かれると、清掃がし難くなり、ゴミ溜まりになります。清掃し難い、あるいは清掃しないと言うことにもなりかねません。
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以上のように5S活動を多面的に見て、在庫を減らす。手直しやり直しを減らすことで、余裕時間を作り、またその必要性を理解してもらい、実践してもらうことで、利益への貢献もできます。従って、5Sは製造現場の一部の人の活動ではなく、会社全体での活動とすることが5S活動で挫折しない進め方として重要だと思います。
単に3S、5Sだけを強調するのではなく、自分たちの仕事が楽になるとか、経営にも反映するなどメリットも知ってもらい、理解してもらいながらの活動が重要です。